昼からは、剣術指南?
エバの美味しい昼食の後は、騎士達、ベリンダ、騎士コースの二人は、剣術の稽古をする事になった。
アダムとメーガンは、モンテス氏と話し合いだ。クラリッサとカミュ先生は、味噌と醤油の蔵に行って、進捗状況を調べてもらう。
味噌は、もう樽に何個か詰めたから、熟成期間だけど、醤油は醤油麹を作っている状態なんだ。
これができたら、塩水と混ぜて醤油諸味にして、三ケ月撹拌して醸造する。
私は、バーンズ公爵の推薦状を信じているから、テストは必要ないと言ったけど、やはり腕前を披露するものみたい。
パーシバルも勿論参加だけど、ヘンリーとサミュエルも加わりたくてうずうずしている。
「お姉様、私も参加したいです!」
サミュエルは、少し遠慮していたけど、ヘンリーが言うと「私も!」と言い出した。
「パーシー様、どうしましょう?」
パーシバルは、笑って許可する。
「私やジェニーやリンダが相手をしますから、参加させても良いですよ」
まだよく知らない騎士に、弟やサミュエルの相手をさせないパーシバルの慎重さが好きだ。ジェニーやリンダは、何回もヘンリーに稽古をつけてくれているからね。
「ついでだから、ルーシー様とアイラ様も魔法の練習をしましょう」
騎士クラブが魔法クラブに稽古に付き合わせて、問題になったけど、実際は協力して魔物を討伐したりするからね。
あれは、騎士クラブが上位にいて、魔法クラブをこき使ったのが悪かったのだ。
「やります!」
ルーシーとアイラは、数学以外は、なんでも積極的だ。
領兵達の訓練所に行き、練習を開始だ。
「ルーシー様は、風の魔法は十分ですから、土の魔法で的に当てて下さい。アイラ様は、風の魔法の特訓です!」
ゲーって顔をする二人だけど、魔法を飛ばすのは大好きだ。的に向かって、ヒャッハー状態だから、私はヘンリーを見ているよ。
「ヘンリー、前よりも身体強化が上手くなっている!」
パーシバルに褒められて、ヘンリーが嬉しそうだ。
「でも、まだ力が足りないのです。お姉様の盾に剣が弾かれてしまいました」
あちゃー! ヘンリーも「しまった!」と口に手を当てている。
パーシバルが私をじっと見ているよ。バレたみたい。
「ヘンリー、大丈夫ですよ。パーシバル様には、誕生日前にプレゼントするつもりでしたから。さぁ、リンダ様と剣術の稽古をしていらっしゃい」
パーシバルに「後でお話ししますわ」と約束する。
「何だか、背中がゾワゾワしますが、今はやめておきましょう」
まだ仕えてくれるかわからない騎士の前だからね。それに、騎士達は、それぞれが剣術稽古をしていたので、ヘンリーの言葉は聞いていない。
「ローラン卿は、力強い剣ですね。エルビス卿では、歯がたちません」
寒さが苦手だとか、馬の王に一目会いたいとか、ベリンダが私の護衛になりたいと言ったからとか、ちょっと軽い感じを受けたローラン卿だけど、剣の腕は見事だ。
「サリエス卿と同じぐらい強く感じますわ」
パーシバルの目がキラキラだよ! 手合わせしたいのだろう。
「あちらのジェラルディン卿とベリンダ様は、スピードが凄いですね」
魔力を目に込めないと、残像しか分からない。
「ジェラルディン卿は、剣に魔法が乗っています。あら、ベリンダ様は、魔法使いなのかしら?」
ジェラルディン卿の剣からは、氷の刃が飛ぶ。それを、ベリンダが炎で焼き尽くす。
「これ以上は、危険だ!」
パーシバルが声を掛ける前に、二人はパンと後ろに飛び退いて、距離を置き、剣を納めた。
バーンズ公爵領でも、何回も手合わせしたのだろう。
「私も手合わせして下さい」
パーシバルとローラン卿、そしてジェラルディン卿とエルビス卿の稽古になった。
ベリンダと私は、皆の稽古を見ている。
「ベリンダ様は、剣術も魔法も使えるのですね」
ベリンダが照れくさそうな顔をする。
「魔法は、火しか使えないのです。それに、剣術も自己流ですから、騎士には負けてしまいますが、一つだけ優れている面もあります」
ふうん? 何だろう?
「騎士の綺麗な戦い方ではなく、生き残る戦い方を知っているのです。子爵様は、魔法はお強いですが、剣術はなさらないと聞きました」
「ええ、ユージーヌ卿に剣の持ち方は習いましたが、あまりの才能の無さに、それ以上は習っていません」
ベリンダと攻撃を受けた時の護身術について話す。
「拘束の魔法は習ったのですが、人に向かって放てるか、少し不安なのです」
ベリンダが驚いている。
「あの一番大きなビッグボアを討伐されたし、ビッグバード、雪狼を多数討伐し、フェンリルを追い返したのに? それに馬の王を手懐けた子爵様が?」
憧れを壊す様で悪いけど、ほとんどはゲイツ様のお陰なのだ。
「あれは、王宮魔法師のゲイツ様と副官のサリンジャー様がお側にいて下さったからですの。ビッグボアを討伐した後、気分が悪くなってしまったのです」
目を見開いて驚くベリンダ。がっかりして、護衛はやめるかも。そうなったら、ローラン卿もバーンズ公爵領に帰るのかな? こんなに腕の良い騎士なら、引く手数多だろう。
「プッ! 失礼致しました。子爵様は、自己評価が低いとバーンズ公爵様が言われていたのを思い出したのです。でも、傲慢な方よりお仕えしやすいです」
えっ、がっかりしたんじゃないの?
「魔法の能力は抜群ですが、どうやら運動は苦手なご様子。魔法で拘束するのを戸惑ってはいけません。明日から、私と練習しましょう!」
ローラン卿に負けたパーシバルが、和かに握手してから、こちらにやってくる。
「ベリンダ様、それはありがたいです。常に私が側にいるとは限りませんから」
えええ、ゲイツ様が来られるまでは、領地の改革、弟達と遊んだり、パーシバルとデートするつもりだったのに!
ジェラルディン卿とエルビス卿は、ジェラルディン卿の勝ちだった。
「私ももっと修業します!」
一番若いエルビス卿が奮起している。パーシバルも同調しているよ。
「ええ、私もペイシェンスに負けない様に頑張ります!」
「パーシー様、私はそんなに強くないですわ」
慌てて否定するけど、ルーシーとアイラが笑っている。
「ゲイツ様のお弟子のペイシェンス様ですもの!」
「ローレンス王国で二番目にお強いのは、ペイシェンス様ですから!」
いや、それ、本当にやめて!




