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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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騎士達と昼食

 雑談の方が本音がわかるかなと思いつつ、お茶を飲む。


 アダムがふと思いついたように質問する。


「ところで、グレンジャー館とハープシャー館の距離はどのくらいなのでしょう」


 アダム・ナイトリーとメーガン・ナイトリー、二人とも乗馬ができるだろうか? 王立学園を卒業しているなら、アダムは最低限の乗馬はできるだろう。


「馬なら三十分ぐらいですが、馬車だと一時間掛かります。それと、今は王立学園の歴史研究クラブの合宿と、ロマノ大学の教授と助手達が滞在しています」


 アダムは乗馬ができるようだが、メーガンが困った顔になる。


「妹は、あまり乗馬ができません」


 そうだよね。王立学園でも女学生は乗馬が苦手な人も多い。私だけじゃないよ!


「馬車を用意させますが、本採用になったら、グレンジャー館ではない方が便利ですね」


 やはり、騎士の家や管理人助手の家も必要だ。


「エルビス卿は、どこに住む予定なのだ?」


 ジェラルディン卿が、顔見知りのエルビス卿に質問する。


「私は、独立資金を貯めたら、結婚したいと考えているのです。だから、兵舎の二階に住もうと考えています」


 ジェラルディン卿も仮採用期間が終わったら、そこに住みたいと言い出した。


「モンテス氏は、何処に住まれているのですか?」


 アダムだけなら、管理人の家に同居でも良いのかも? でも、メーガンが一緒だからね。


「仮採用期間が終わるまでに、騎士の住む家と管理人助手の住む家を用意致しますわ」


 それまでには、ラドリー様もいらっしゃるだろう。


「いえ、私は少しでも倹約したいので、兵舎の二階で良いです!」


 エルビス卿? 家賃の心配をしているのかな? 騎士も社員みたいなものだから、家賃なんて取る気はなかったけど、モンテス氏に任せよう。


「エルビス卿、騎士の家でも安く設定しますが……結婚されたら、住むことにしますか?」


 ぶるん、ぶるんと首を横に振るエルビス卿に押されて、兵舎になった。


「ミリアムに、少しでも早く結婚したいと言われているのです。倹約して、資金を貯めないと見捨てられます」


 あらら、結婚前から尻に敷かれているね。でも、高圧的な男の人よりは、好感が持てるな。


「そろそろ、昼食の時間ですわ。私の家族とお友達に紹介します」


 今日は、一緒に食べる。モンテス氏もだよ。


 父親、ヘンリー、サミュエル、そして騎士クラブのジェニーとリンダ、魔法クラブのルーシーとアイラ、そしてカミュ先生とクラリッサ。


 やはり、食堂は広い方が良かったね。ハープシャー館は、元々広かったけど、サリエス卿が購入された屋敷の食堂では、狭かったかも。


「グレンジャーには海がありますから、魚介類が多いのですが、苦手なら肉と変更もできます」


 前のキース王子とか、魚が嫌いだったからね。一応、言っておく。全員が、魚介類がたべられるなんて! っと喜んでいるから、大丈夫そうだね。


 今日は、他所からの騎士が来られるからと、エバが張り切っている。メニューでわかるんだ。


 いつも手抜きはしないエバだけど、やはり材料とか違うね。きっと、若い領主だからと舐められないように応援してくれるのだろう。


 前菜から、パワー全開。マッドクラブと雲丹のゼリー寄せだ。


「これは、美味しいですね!」


 メーガンが一口食べて、ゼリーの柚子の味に、うっとりとしている。


 今日は、ジェニーとリンダがとても大人しい。騎士が三人も同席しているからかも。

 いつもなら「美味しいです!」と騒いでいるのにね。


 スープは、冷たいヴィシソワーズ。じゃがいもを丁寧に裏漉ししてあるから、とても口当たりが良いし、少し特別なアレンジがしてある。


「ペイシェンス、これはアイスクリームなのか?」


 サミュエルの質問に、ヘンリーが「でも、ジャガイモの味がします」と首を捻る。


「ヘンリー! よくわかったわね。これは、ジャガイモのアイスクリームなのよ。砂糖はほんの少ししか入れていないけど、作り方はアイスクリームと同じなの」


 他の人も、ヴィシソワーズの真ん中に浮かんでいるアイスクリームをスプーンで砕きながら、一緒に口にして「うううん」と唸っている。


「ペイシェンス、これは美味しすぎますよ! 母上がレシピを欲しがります」とパーシバルが笑う。


「ペイシェンス、私の母上も絶対に欲しがると思う」

 サミュエルも食べたいんじゃないかな?


「勿論、レシピは差し上げますわ。アンなら作れると思います」


 アンは、ヴィシソワーズもアイスクリームも作っていたからね。ただ、今回はそれをアレンジした料理なんだ。


 魚のメインは、勿論、マッドクラブだ。

 綺麗に焼いたマッドクラブを並べて、その上にベシャメルソースを掛けたグラタンだ。

 チーズのカリカリ、ベシャメルソースには隠し味に白味噌が少し。


「これは、マッドクラブですか? グレンジャー海岸では、これが狩れるのですね!」


 ローラン卿の目がキラリと光る。マッドクラブは、魔物だから討伐しても良いとは聞いているけど、絶滅させないでね。


 美味しいものを食べていると、皆、無口で、幸せになるよね。


 口直しのシャーベットの後は、肉料理だ。今日は、エバが気合を入れて、ゲームパイを焼いた。


「わぁ! これはハープシャー館ですね!」


 ヘンリーが喜んでいる。この型は、私が作ったんだ。


「見事だな」と父親も褒めている。


 さて、ワイヤットは綺麗にゲームパイを切り分けたけど、ハーパーはどうかな? 少し心配して見ていたけど、堂々と切り分けた。


「まぁ! 綺麗だわ!」

「白は、火食い鳥(カセウェアリー)でしょうけど、赤は?」

 ルーシーとアイラが賞賛の声をあげる。


 本当は、肉と魚を混ぜるのは良くないのもしれないけど、グレンジャー海老の赤、それを使いたかったんだ。


火食い鳥(カセウェアリー)とグレンジャー海老のゲームパイです。ソースは、お好みでオランデーズソース、トマトソース、さっぱりソースから選べます」


 ハーパーの説明だけでは、皆は選べないみたい。父親からサーブされたけど、迷っている。


「お父様、オランデーズソースは、マヨネーズにレモン汁を混ぜたものです。トマトソースは、トマトをハーブと煮詰めていますわ。さっぱりソースは、カルディナ帝国の調味料の醤油とレモンを混ぜた物です。どのソースでも美味しく召し上がれますわ」


 父親は、かなりお腹がいっぱいみたいで、さっぱりソースを選んだ。


「お姉様、どれが良いのでしょう?」

 ヘンリーとサミュエルは迷っている。

「グレンジャー海老には、オランデーズソースが合うと思いますわ。ただ、コッテリしてしまうから、トマトソースとあっさりソースも選べるようにしたのです」


 その説明で、各自が自分のお腹の満腹度に合わせて、ソースを選んだ。


「私は、オランデーズソースにします」


 ハーパーもエバに言われているから、私のパイは一番小さく切り分けている。これなら、一番合うソースを掛けよう。


 ヘンリー、サミュエル、パーシバル、ジェニー、リンダは私の真似をする。


「アイラ、半分こにしない?」

 あらら、ルーシーはちょっとマナー違反をしそうだ。


「ハーパー、ルーシー様に小さなパイを二皿、ご用意してあげて」


 全員の目が私に集中する。

「ペイシェンス、それができるなら先に言って下さい」

 パーシバルに文句を言われるのって、珍しい。


「食べてお代わりされても良いのですよ」


 騎士達やパーシバルやヘンリーやサミュエル、騎士クラブの二人、ベリンダとアダムは、お代わりしたよ。


「うん、トマトソースもさっぱりして美味しいです!」

 ヘンリーは二皿目は、トマトソースを選んだ。


「このさっぱりソース、冬の魔物討伐の時に、第一騎士団に譲ってもらったのに似た味です」


 ベリンダは、よく覚えているね。

「ええ、第一騎士団には、ソースを販売していますから」


「本当に、ペイシェンスのソースがあったから、冬の魔物討伐も耐えられたのです」

 パーシバル、それは言い過ぎだよ。


 デザートはメロン! 今回は他のが手が込んでいるし、お腹いっぱいになりそうだから、果物にしたんだ。


「メロン! こんな高級品が!」

 アダムは、バーンズ商会で(メロン)の値段を知っているみたい。


「これは、ハープシャーで作っていますの。さぁ、召し上がって下さい」


 これは、まだ魔法で育てたメロンだけど、片方の魔法無しのメロンも実が少しずつ大きくなっている。


「これを王都に運べば……」

 アダムは、ぶつぶつ言いながら食べている。


 他の人は、黙って完食だ。

「ペイシェンス、また餌付けしましたね」

 パーシバルに耳元で囁かれたけど、エバが張り切りすぎたんだよ。

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] エルビス卿の思考やいかに? [一言] 識字率低いからか、公示人、代書人、葬式通報人といった職業もあったそうな… 航海技術って、手漕ぎかな? 帆船できて、海賊、侵略が盛んになったんだよ…
[一言] >ペイシェンスのソースがあったから パーシバルは全然言い過ぎじゃないと思う。 他の参加者は例年の冬の討伐の様子を知っているから半分以上諦めの気持ちで耐えただろうけど、他でもないペイシェンス…
[一言] 本来は、幼少期に子馬と触れ合うべきだから、グレンジャー家が乗馬下手なのは仕方ないとか?…だから、学問の家なのか? 御者+本人+侍女+護衛で、4人以上のる箱馬車を借りる、と考えると、通勤だけ…
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