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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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グレンジャー館にて

 今日は、一日中グレンジャー館で過ごすかも。

「メアリー、キャリーは侍女としてどうかしら?」


 メアリーは、少し考えて返事をする。

「かなりしっかりして来ましたが、まだ王宮には行かせられません」


 そうか、でも上級貴族は大丈夫なのかな。


「今日は、私とパーシー様とクラリッサは、グレンジャー館で過ごす事になりそうなの。侍女としてキャリーを連れて行こうと考えているのよ。メアリーは、ゆっくりとグレアムと過ごしたらどうかしら?」


 新婚なのに、ずっと働き詰めだから、親切に提案したのだけど、きっぱり断られた。


「あちらにはロマノ大学の学生さん達もいらっしゃいますし、パーシバル様も一緒なのに、お嬢様のお側を離れる事はできません。それに、グレアムも護衛を兼ねて同行いたします」


 ああ、やはりメアリーは私とパーシバルを二人にはさせない気だ。

 まぁ、今日は色気めいた話ではなく、真面目な話ばかりなんだけどさ。


「ヘンリー、今日はグレンジャー館で教授達と話し合いなの。昼からは、生活魔法を四人の女学生達に教えてあげてね」


 昨日は、綺麗になれ! を教えたから、今日は浄水が良いかも?


「分かりました! メロンを大きくしても良いですか?」


「ええ、それでも良いですわ。でも、片方の温室は、魔法なしで育てているから駄目ですよ」


 ヘンリーはメロンが大好きだからね。早く食べたいのかも?


「えっ、植物を育成するのも生活魔法なのですか?」

 ルーシーが驚いている。


「ええ、農家の生活には欠かせないでしょう。それと、馬を大人しくさせるのも生活魔法なのですよ。馬の王(メアラス)に言うことを聞かせられるのも、スレイプニルも馬の一種だからです」


 ジェニーとリンダが首を捻っている。


「馬は、元々大人しいから分かりますが、馬の王(メアラス)は別物ではないでしょうか?」


馬の王(メアラス)をテイムされたのだと、ユージーヌ卿からお聞きしましたが?」


テイムねぇ? そうなのかな?


「遊牧民とかの生活には、動物をテイムするのも含まれるのかもしれませんわ」


 パーシバルもこの件には、疑問を持っている。


「フェンリルをテイムされたのは、生活魔法では無いのでは?」


 銀ちゃんかぁ、どうしているかな?


「犬も番犬とかに必要だから、生活魔法の一種なのですよ」


 パーシバルが、パッと顔を輝かせる。


「ペイシェンスなら、龍に乗れるかもしれませんね。ほら、あの伝説のテムジン山脈の龍部隊ですよ!」


「あれは、卵から孵した時に親と摺り込むのではないでしょうか? それに、龍の卵なんてローレンス王国にはありませんわ」


 この話を、ヘンリーがワクワクした目で聴いている。


「お兄様に教えて貰った『龍飼いの少年』を読んだのです」


 パーシバルは、その本は読んだことがないみたい。


「私も読んでみたいです! 家の『最強の龍部隊長、シーザス』を貸しますよ」


 二人は、龍部隊について夢を語っているけど、南の大陸の竜の脅威があるんだよね。


 父親も、パーシバルが持っている本は読んだ事がないと口を挟む。


「少年向きの娯楽本ですから、グレンジャー子爵様はお読みになっておられないのかも。お貸ししますから、読んでみて下さい」


「それは、楽しみだ。ゲイツ様から新刊本を譲って頂いているが、娯楽本は含まれていないのだ」


 普通の大人は、少年向きの娯楽本なんか買わないからね。グレンジャー家は、本の虫ばかりかも。


 今日は、馬車でグレンジャー館に向かう。パーシバルは、護衛達と馬の王(メアラス)だ。


「クラリッサ、今日お会いする教授達と手紙のやり取りや、実験の進捗状況を報告して貰う事になるわ。キャリーと護衛をお供にしてね」


 クラリッサも、侍女や護衛など要らないのにって顔をしたけど、バリー氏に『ちゃんとお預かりします』と言ったからね。


「エドが一緒なら、侍女はいらなかったのかしら?」


「いえ、侍女は必要だと思いますわ」


 メアリーとキャリーが満足そうに頷いている。面倒だと思う事もあるけど、今回、他所の令嬢を預かって、必要性に気づいたんだ。


 侍女が常に付き添っている! は、ちゃんとした令嬢だという証にもなるんだ。

 前世の自由気ままな行動を考えると、窮屈だし、面倒臭いけど、この世界では貴族の令嬢の評判を保つのは、とても大切なのだ。


 ハープシャー館からグレンジャー館まで、馬車で一時間だ。馬なら三十分ぐらいかな?


「ペイシェンス! 教授達がお待ちかねだよ」


 パーシバルが馬車から降りるのをエスコートしてくれる。


 クラリッサには、グレアムが馬車から降りる時に手を貸している。メアリーとキャリーにもね。


「リンネル教授、ベッカム教授、ようこそいらっしゃいました」


 応接室には、二人の教授が待っていた。


「いや、このグレンジャー館は、とても快適です。ここで、夏休みのフィールドワークができるなんて、学生達も喜んでいますよ」


 リンネル教授の言葉に、ベッカム教授も頷く。


「それに、夏休みに海の近くに滞在できるのは有り難いです。海洋生物を観察し放題ですからね」


 どちらの教授から話し合おうかと悩んでいたけど、二人とも一緒に話を聞きたいそうだ。


「お互いに協力できる事があるかもしれませんし、何をしているのか知っておきたいです」


 リンネル教授もベッカム教授も仲が良いのかもね。グース教授とヴォルフガング教授みたいにいがみ合うよりは嬉しい。

 二人にパーシバルとクラリッサを紹介して、話し合いを開始だ。


「先ず、リンネル教授には、短粒種の米の栽培をお願いします。それと、海風に強い作物を海岸近くに植えたいのです」


 リンネル教授も、水田栽培について調査してくれていた。


「種を直播きでも良いみたいだが、時期が遅いから、苗を育てて植えた方が成功しやすいと思う」


 直播きって、東南アジアとか暑い地方だった気がする。


「どちらもやってみたら、良いのでは?」


 ベッカム教授のアドバイスに、リンネル教授も頷く。


「そうだな! フィールドワークなら、色々なパターンを試してみても良さそうだ。ついでに長粒種の畑植えもやってみたい」


 空き地はあるから、やってみて欲しい。


「今からでも、米は実るでしょうか?」


 前世では五月頃に田植えをしていたような? 都会育ちだから、詳しくないんだよ。


「実験だから、出来るだけ魔法は使いたくないが、今年は仕方ないだろう」


 リンネル教授は、植物育成の魔法を使えるみたい。


「海風に強い植物も、調べて来たが……オリーブとかはどうでしょうか?」


「それは、良いですね!」


 オリーブオイルは、料理にも使えるし、石鹸を作っても良い。


「今でも、少し生えていますが、管理されてはいませんね。それと、塩害を防ぐ防風林を考えても良いと思います」


 前世の海辺に松林があったけど、あれって防風林の役目もあったんだ。


「特に、松や椿などは、海風に強いですよ」


 これも任せたい。それと聞きたい事があったんだ。


「スイカを温室で育てていますが、砂地でも育てられるでしょうか?」


 これは、リンネル教授も考え込んだ。


「スイカは、コルドバ王国の南部で作られているそうですが……一度、温室を見てみたいです」


 砂地でスイカを栽培している映像を見た事があるけど、海辺だったかは不明だ。


「ペイシェンス様は、色々なアイデアが豊富ですな。海洋生物の方も養殖とか興味があります」


 今度は、ベッカム教授との話し合いだね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 松は害虫や病気に注意しないといけないのです。 近年、国道202号虹の松原で枝落下による死亡事故が起きていますし。
[一言] 屋敷の敷地に、庭園ないのかな? ペイシェンスなら、果樹園や菜園等、実用性を重視したものになるだろうけど
[一言] 社交デビューがあるというけど、シャペロン(介添人)は、どうするんだろ? 50~60代くらいが、平均寿命なら、20代には、子をなすべきだと思うよ、メアリー
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