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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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少し、錬金術で作ろう!

 お茶の後、生活魔法教室をしたけど、クラリッサは不参加だった。

 彼女には、冒険者ギルドに材料を調達しに行って貰ったからだ。


「ああ、良かったわ! 巨大毒蜘蛛の糸がいっぱいあるわ」


「これは、元々、漁師達が使うから、集めていたようですわ」


 キャリーと護衛達が大きな木箱に入った巨大毒蜘蛛の糸を、錬金術工房に運んでいる。


「ペイシェンス様、これで何を作るのですか?」


 クラリッサの目がキラキラしている。


「一つは、網ですのよ」


 ちょっとガッカリしたみたい。漁師も使っているからね。


「ふふふ、でも使い方は違うし、魔物に襲われないようにしたいのよ。でも、先ずは網を作りましょう」


 海老の養殖をするのに、浅瀬を仕切って生簀を作りたい。


「土魔法で仕切っても良いけど、水を循環させるより、網の方が良いと思うの。でも、マッドクラブの餌場にはしたくないから、網に電撃作用を付けたいのよ」


 ゲイツ様から、魔法陣の本を暗記させられたから、電撃の魔法陣もわかっている。


「網に触ると、ビリビリするのですか!」


 クラリッサも単なる網ではないと分かって、やる気満々だ。


「箱から、糸を出して……あらら、くちゃくちゃのも混ざっているのね」


 クラリッサも驚いている。


「まぁ、不良品も混ざっていたのですね!」


「いえ、これが普通なのでしょう。それに、簡単に真っ直ぐにできますよ」


 クラリッサにも生活魔法を教えよう。


「真っ直ぐになれ!」


 くちゃくちゃだった巨大毒蜘蛛の糸が真っ直ぐになった。


「ペイシェンス様! これは、錬金術ではありませんわ。生活魔法ですか?」


 ううん、私の錬金術は、他の人と少し違うみたいだから、よくわからない。


「多分、生活魔法と錬金術のミックスだと思うの。でも、できるようになったら便利だと思うわ」


 クラリッサは、まだ私よりちょこっとだけ背が低い。後ろから抱き込むのも楽だね。


「真っ直ぐになれ!」


 クラリッサは、錬金術の腕が良い。それに魔法の勘も良いから、何回か一緒に唱えたら、コツを覚えた。


「これは、私がやりますわ」


 真っ直ぐにするのは、クラリッサに任せて、私は網を作る。


 一応は、設計図を描いてある。明日、ベッカム教授と話し合うのに使おうと用意してあったのだ。


「最初は小さな範囲でやりたいわ」


 実験してから、養殖をしたいからね。


「クラリッサ、網の作り方も見ていてね」


 真っ直ぐになった巨大毒蜘蛛の糸で網を作る。


「大きな網なのですね!」


「いえ、これは実験用ですから、小さいのですよ」


 網ができたら、電撃の魔法陣を描いて、それを網に付ける。


「本当に、ビリビリするのでしょうか?」


「今は、魔石を設置していませんが、ビリビリする魔法陣ですからね」


 その魔石もクズ魔石を纏めた物を活用したい。これは、ナメクジの粘液はまだ集まっていなかったから、王都で作った物を利用する。


「後は、これを浮かせる必要があるわね」


 浮きは、珪砂とスライム粉を混ぜて作る。


「錬金釜に入れるのを手伝って!」


 メアリーとキャリーとクラリッサとで、錬金釜に材料を入れていく。


「クラリッサ、混ぜてみて!」


 スライム粉がぶつぶつになっているのを、錬金術で滑らかにしないといけないのだ。


「ええっと、スライム粉よ、珪砂に混ざれ!」


 少しは滑らかになったけど、ぶつぶつが少し残っている。


「クラリッサ、このままでは質が悪くなるの。もっと滑らかにしないといけないわ」


 何回か錬金術を掛け直させて、やっと滑らかになった。


「後は、この設計図通りの浮きを作るのよ」


 クラリッサは、魔力切れみたいだから、私が作ろう!


「浮きになれ!」


 十何個かの浮きを作り、それを網に取り付けて、今日の作業はお終いだ。


「クラリッサも魔力量をもっと多くした方が良いわね。オルゴール体操で魔素の取り込みを頑張りましょう」


 夕食の為のお着替えの時間だ。メアリーが少しイライラしてきているからね。


「クラリッサも着替えなさい」

 こちらは、キャリーが待ちくたびれている。それに、キャリーは未だメアリーみたいに、手早く髪を整えられないから、気が急くみたい。


 クラリッサの父親は、昔気質だから、ロマノ大学の進学資金は出さないけど、ドレスは持たせている。


 でも、それは昔ながらの子供服で、フワッとスカートが膨らんでいるんだよね。


 私が用意させたのは、もう少し今風のだよ。それと、秘書服も用意させた。


 メイドは黒の木綿ドレスだけど、濃紺の絹のドレスだ。それと、白のレースの襟。清楚だけど、使用人とは違う感じが出てて、良いと思う。


 王宮の女官程はかっちりとしていない。それに、クラリッサは未だ若いから、膝下ぐらいの長さだしね。


 今夜は、パーシバルと少し夜の散歩をしたいから、おめかしするよ。

 髪の毛にバラの蕾を飾ってもらう。ドレスはカルディナ帝国の薄いピンクの生地で、細かなプリーツが上から下まで入っている。


「お嬢様、とてもお綺麗ですわ」


 メアリーは身贔屓が凄いけど、鏡の中の私は、かなり可愛い。

 後は、メアリーをなんとか撒いて、パーシバルと夜の庭を散策したい。ううん、難問だよ!


 夕食は、パトロールで狩ったアルミラージがメインだ。

 今夜は、壷焼きにして貰った。こうすると、柔らかいし、野菜の旨みが肉に染み込んで美味しいんだ。


「まぁ、これは可愛い料理ですね」


 壷焼き自体は、王都でも食べられているけど、壺が大きいんだ。これは、小さな可愛い壺に一人ずつ。ルーシーは、喜んでいる。


「ペイシェンス様、これでは足りません!」


「お代わりをすれば良いのですよ」


 騎士クラブの二人、パーシバルは、お代わりしたけど、私にはこれで十分。


 だって、今夜のデザートはメロンケーキなんだもの。大好物なんだよね!


「もしかして、デザートは?」


 パーシバルは気がついたみたい。


「ええ、メロンがいっぱい実りましたから」


 お代わりした組も、メロンケーキは美味しそうに食べている。デザートは別腹だよね。


 さて、これから普段は居間に移動して、話をしたり、音楽を楽しむのだけど……今夜は二人になりたいのだ。


「パーシー様、馬の王(メアラス)の様子を見に行こうと考えています」


 パーシバルは、ピンときたみたい。


「そうですね! ペイシェンスは馬の王(メアラス)に今日は乗っていませんから」


 サッとエスコートしてくれる。ああ、でもメアリーも付いてくるよ。仕方ない。


「今日は満月ですわね」


「ええ、月が綺麗です」


 馬の王(メアラス)に会いに行く途中、パーシバルと話をする。このところ、ゆっくりと話していないからね。


「明日は、グレンジャー館に行きますが、パーシー様はモラン領に行かれるのですか?」


 モラン伯爵が王都を離れられないから、その分、パーシバルが領地の管理をしないといけない。


「いえ、明日はグレンジャー館に一緒に行きますよ。私も米の栽培や海老の養殖が可能か興味がありますから」


 あれっ? もしかして、グレンジャー館にフィリップスが滞在しているから、嫉妬しているのかな?


「フィリップスは、ペイシェンスのことが好きですから、私は目を離さないつもりです」


 あらら! なんだか、凄く良いムード。

 バラのアーケードを素早く回って、キスする。


馬の王(メアラス)が待っていますね」


 メアリーも足早についてくるから、キスは一瞬だ。でも、ドキドキが止まらない。


「ええ、馬の王(メアラス)に角砂糖を持って来ていますのよ」


 二人で笑いながら、馬小屋まで走る。


「ブヒヒン?」『何だ?』と馬の王(メアラス)に不審がられたけど、角砂糖を手のひらに乗せてあげると喜んだ。


「ブヒヒヒヒヒン!」『美味しい!』


「明日は、グレンジャー館にまで一緒に行きましょう!」


「ブヒヒン!」『わかった!』


 久しぶりに、パーシバルと一緒にブラッシングしてやる。メアリーは、薄い絹のドレスを心配しているけど、生活魔法があるから大丈夫だよ。


 




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― 新着の感想 ―
[一言] アルミラージ=角うさぎ アルミニウム製のうさぎがいたら笑うかも。
[一言] 順調にペイシェンス式謎魔法が伝播しているねww
[一言] グレンジャーに泊まってたらいいんじゃないか、と言うくらい、グレンジャーにいってますな そのうち、クラリッサ視点、みてたいな (エド視点も気になるかも?) フィリップス視点…うん、最悪な初対面…
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