海水浴といえばこれでしょう!
サミュエルもナシウスとの海水浴が楽しみだったみたい。お昼前に着いた。
「一緒にお昼を食べましょう!」
早昼を食べたと遠慮するサミュエルだけど、海水浴前だから軽いランチだよとナシウスが誘うと、嬉しそうに食べていた。
海水浴なら、カレーだよね! 海の幸カレー、凄く美味しい。
本当は、焼きそばでも良いのかも? なんて、内心で考えていたのは内緒だ。
女学生達も水着に着替えて、海岸へと向かう。私は、こちらの馬車だけど、賑やかでキャピキャピした感じが青春っぽいなと感じていた。
「ああ、海水浴だなんて何十年振りだろう」
ヘンリーの「お父様と一緒に海水浴に行きたい!」とのおねだりに負けて、父親も参加だ。
少しは太陽を浴びても良いと思う。
泳げるのかな? と不安だったが、最低限は大丈夫そう。
でも、基本は私と一緒だね。天馬のフロートに乗って、海の上にプカプカ浮いている。
「ペイシェンス様が泳げるだなんて!」
「なんか不思議です。泳げそうにないタイプなのに?」
こんな失礼な事を言っているルーシーとアイラは泳げない。
ビート板を持って、クラリッサと三人は騎士クラブの二人に泳ぎの指導を受けている。
パーシバルは、サミュエルやナシウスやヘンリーとボディボードに夢中だ。
もっと、サーフィンっぽいのを作っても良いかもね。なんて、思いながら、スワンのフロートでプカプカプカしている。
青い空、青い海、それに弟達の歓声! 幸せ!
でも、やはり海水浴は暑いんだよね。
それに、メアリーが呼んでいる。
「お嬢様、あまり日焼けをなさらないように!」
秋の社交界デビューの時に、日焼けしすぎるといけないみたい。
フロートから降りて、海岸の日焼け防止テントの下に行く。
うん、父親はここでもブレずに読書している。ジョージが冷たいジュースを渡しているけど、読書に夢中だね。
「そろそろ、皆も休憩しても良い頃だわ」
それに、海水浴にはスイカ割りがないとね!
本当は砂の上でスイカを割るのだろうけど、砂混じりのスイカは嫌だから、シートの上にスイカを置く。
「皆! スイカ割りをするわよ!」
ボディボードで遊んでいた男子組、泳ぎを習っていた女子組が走って集合だ。
「お姉様、スイカ割りって何ですか?」
シートの上に鎮座しているスイカをキラキラとした目で見ながら、ヘンリーが質問する。
「目隠しして、スイカを叩いて割るゲームなのよ」
先ずは、一番幼いヘンリーからだよ。
棒を持たせて、目隠しをして、ヘンリーをぐるぐると回す。
「ほら、スイカを叩いて割るのよ!」
ヘンリーったら、スイカの方へと歩いて行く。目は見えていないよね?
「もう少し先よ!」
「右だわ!」
「もっと左だ!」
わいわいと皆でアドバイスする。
「そこだ!」パーシバルの声で、棒をヘンリーが打ち下ろす。
パン! とスイカが見事に割れた。
「ヘンリー! 凄いわ!」
こんなゲームだったかな? 何人か砂を叩いてから、スイカを割るんじゃなかったっけ? でも、可愛い弟が見事にスイカを割ったのは、嬉しい!
「スイカを食べましょう!」
一番大きなスイカをヘンリーに渡す。
「このまま齧り付いても良いのですか?」
あっ、この子も貴族のお坊ちゃまなんだね。
「ええ、海水浴だから、良いのよ!」
メアリーが令嬢らしくないと睨んでいる気がするけど、私は小さなスイカを持ってパクッと食べる。
皆もそれぞれ好きな大きさのスイカをパクパク。
父親も、ジョージが食べやすそうな三角形になったスイカを渡して、食べている。
「私もやってみたかった」
サミュエルがこぼす。だよね!
「二回目のスイカ割りをしましょう!」
二個目は、サミュエルが、三個目はナシウスが割ったよ。
「皆、一発で割るのね」
私の横でスイカを食べていたパーシバルが変な顔をする。
「そういうゲームなのでしょう?」
「ええ、でも……失敗するのかと思っていたのです」
パーシバルは、動かないスイカを叩くのを失敗するだなんて理解できなかったみたい。
「目隠しして、クルクル回されたら、方向が分からなくなるでしょう? それに、皆が本当のスイカの位置を真面目に教えるから……」
普通は、嘘を言ったりするんじゃないの?
「でも、ペイシェンスも本当の位置をヘンリーに教えていたから、そういうゲームだと思ったのですが?」
それは、ヘンリーが可愛いから、失敗させたくなかったんだもん!
私の微妙な顔を見て、パーシバルが噴き出す。
「ああ、そういうゲームだったのですね。でも、ペイシェンスの弟愛が間違ったゲームにしてしまったのか!」
ケタケタ笑いながら、パーシバルは豪快にスイカを食べた。
お供しているメアリーやジョージやキャシー達も、スイカを食べている。
暑い砂浜で冷えたスイカ! これこそ夏だよね。
「クラリッサ、ルーシー様、アイラ様、魔法を使えば、すぐに泳げるようになりますわ」
アイラは風の魔法は下手だけど、魔法的泳ぎ方を教える。
「えっ、そんな方法で?」
騎士クラブの二人は、驚いているけど、身体能力だけより、こちらの方が簡単に覚えられるみたい。
「風の魔法で身体を浮かせるのね!」
ルーシーは、風の魔法が得意だから、一番に泳げるようになった。
それをじっくりと観察していたクラリッサが二番目。
「風は苦手なの! 火の魔法は……使えないわね!」
苦労しながらもアイラもなんとか浮かべるようにはなった。
「アイラ様、あとは泳ぐ方法を覚えなくては!」
騎士クラブの二人に任せよう。
私は、パーシバルと一緒にフロートでプカプカ浮きながら、お喋りしよう!




