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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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ハープシャー館の庭で

 午前中、弟達と魔法クラブ、騎士クラブ、そしてクラリッサは、カミュ先生の元で勉強をした。


 その間、私とパーシバルは、館内を視察する。視察って大袈裟に思うかもしれないけど、田舎の領主館、マジに広いんだ。

 メアリーがずっと付き添っているから、キスもできない。


 馬の王(メアラス)は、建て直された馬房が気に入ったみたい。

「バフン! バフン!」『走りたい』と騒いでいる。


「ちょっと待ってね! 午前中は館の運動場で我慢して。昼からはグレンジャー館まで行くし、マッドクラブ狩りをするから」


「ブヒヒン!」『仕方ない!』って感じかもね。


 サンダーとジニーが運動場に馬の王(メアラス)を連れて行く。


「どこから視察しますか?」


 パーシバルに聞かれて、少し悩む。


「養鶏場がちゃんと浄化されているか気になりますわ」


 パーシバルも同意して、養鶏場に向かう。


「臭くないし、見た目も清潔なようですね」


 グレンジャーのライト司祭、モラン伯爵に調べて貰ったら、少し異端めいた論文を発表して、田舎に左遷されたそうだ。

 異端? 何だか危険人物の気がして、論文を取り寄せて貰った。

 異端判断された論文本体は破棄されていたけど、写しが残っていたんだ。


『エステナ神は、民に魔法を授ける方法を広めたが、魔法自体は太古から存在した。それは、天にある太陽から魔素が降り注いでいるからだ。エステナ神の偉業は評価するべきだし、尊いが、魔法の進化の為には、太陽光から魔素を取り込む方法を広めるべきだ』


 もっと婉曲な表現だし、エステナ神に遠慮していたが、これで殺されなかっただなんて、エステナ教会も懐が深いのかも? それか、聖皇国からしたら、辺境のローレンス王国の司祭など、歯牙にもかけなかったのか? 面倒を避ける為に、上に報告されなかったのかもね!


「ライト司祭は、有能ですね。できればグレンジャーとハープシャーの司祭を交代したいぐらいです」


 まぁね! でも、あの老司祭夫婦は、ここでの生活に馴染んでいる。


「それぞれの司祭は、在任期間が長いから、住民も馴染んでいるでしょう。ライト司祭には、馬か馬車を用意させましょう」


 パーシバルは、聖職者に馬は似合わないと笑う。


「ロバの方が良いでしょう。ロバなら、孤児院脇の畑も耕せます」


「それなら、ハープシャーのヨハンセン司祭にもロバをあげなくてはね」


 お爺ちゃん司祭、ロバに乗れるかな? 私も、できればロバの方が良い。だって、馬より体高が低いんだもん。


 持ち歩いているメモ帳に「司祭達にロバを支給すること」と書いておく。気がついた時に書かないと、忘れちゃうからね。


 えっ、魔法記憶力はどうしたのか? あれはまた違うんだよ! 日常の様々な事は、メモをした方が良いの!


 庭に出たついでに、牛の放牧場も見に行く。


「ここも良さそうだわね。草は、これで良いのかしら?」


 畜産については何も知らない。これも勉強しなくてはね!


 牛達は、満足そうに草を食べているから、今はこれで良いのだろう。


「次は、温室ですね!」


 パーシバルもメロンが大好きだから、心なしかいそいそしている。


「先ずは、魔法で少し成長を促した温室を見てみましょう」


 温室まで、パーシバルがエスコートしてくれる。腕を組むだけでも、心が浮き浮きする。


 本当に、メアリーがいなければ、いちゃいちゃできるのに!


「ああ、かなり実が大きくなっていますね」


 うん、前に来た時に成長を促していたからね。


「そうだわ! ルーシー様は土の魔法も使えるのよ。アイラ様は火の魔法だけだけど、生活魔法も覚えて貰おうと考えているの。この温室で練習したら良いわ」


「私もペイシェンスから生活魔法を習いたいです」


「ええ、勿論! ナシウスはかなり使えるようになりました。ヘンリーと一緒に教えますわ」


 ふふふ、生活魔法の練習だろうと、パーシバルと一緒なのは嬉しい。


 もう一方の魔法を使わずに栽培している温室でも、メロンの実ができていた。まだ小さくて固そう!


「ふうん、これなら夏にはメロンを収穫できそうね!」


 パーシバルと喜ぶ!


「特産品は良いですよね!」


 そうなんだよ! まだハープシャーのワインは、上等とは言えない。スミスさんが十年かかると言っていたもんね。


「ワインが特産品になるまで、夏はメロン、冬場は味噌と醤油を販売したいです」


 味噌と醤油は、熟成するまで時間が掛かる。特に、醤油はね!


「生活魔法で時短しないのですか?」


 パーシバルが揶揄う。


「自宅で使う分や、ソース作りに使う物は少し後押ししますが、領民だけで作れるようにしなくてはいけないと思っています」


 だって、調味料をカルディア街で買っていたら、ソースを売っても儲けが少ないんだ。

 もっと高くしたら良い? それは、ちょっとね。適正価格ってあるじゃん。


 第一騎士団、魔物討伐に頑張っているのに、そこで荒稼ぎはし難い。

 だから、調味料を領地で作りたいんだ。


 葡萄畑は、管理人のスミスさんに任せる。


 館の庭を一回りしただけで、午前中は終わった。やはりペイシェンスの歩く速度が遅いからだよ。


 パーシバルといちゃついている時間は、ほとんどなかったのだからね。

 メアリーがよそ見をしている隙に、キスを一度だけ。




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― 新着の感想 ―
[良い点] ペイシェンスが教える生活魔法は超一流! きっと後世の歴史に残るね! (*´∀`*) [一言] 楽しい夏休みの始まり! ワクワクします。 (*´ω`*)
[一言] エステナ教の教えを、覆したらしたで、身分制度が崩壊しそうなんだよな というか、願望魔法というものの存在が、怖すぎる 誰かの願望で作られた世界とか? 元ペイシェンスの願望か理想が、現ペイシェ…
[良い点] 更新お疲れ様です。 ふむ…人となりはまだ不明なので判断は保留ですが、少なくとも頭が固い人間では無さそう=ペイシェンスが繰り出す(?)新しい事案にもある程度柔軟に対応出来そうな感じはします…
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