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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第六章 中等科二年春学期

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バーンズ公爵家にゾロゾロ

 良い雰囲気でナシウスの誕生日パーティを開いていたのに、招待もしていないのにゲイツ様がやってきて台無しだよ。


「ペイシェンス様! 申し訳ありません!」

 後ろから、サリンジャーさんが飛び込んで来た。逃げ足が早いから、サリンジャーさんは、大変だね!


 こんな時、貴族のマナーが憎い!

「お二人ともお食事はお済みですか?」

 ペイシェンスのマナー! 寝る時も、いまだにお姫様寝なんだよ。


「いえ、すぐに王宮に戻らなくてはいけませんから」

 サリンジャーさんが連れて戻ろうとするけど、ゲイツ様は無視してワイヤットが用意した椅子に座る。


「サリンジャー様もどうぞ」

 どうせ王宮でも食べなくてはいけないのだから、ここで食べていけば良い。それに、サリンジャーさん、凄く疲れている様子なんだもの。


「そう、君も食べなさい!」

 貴方に言われると腹が立つが、父親も「どうぞご一緒に」と勧めている。

 うちの父親、貴族の一般常識はないのに、マナーだけは仕込まれたみたいね。


「ワイヤット、お二人に料理をお出しして」

 昔のグレンジャー家だったら、こんな事を言ったら、使用人の食べる物が無くなるし、きっと数日は薄いスープだけになっていたね。


 でも、今は余分に作っている。だって、ナシウス、ヘンリー、サミュエルがお代わりするかもしれないんだもの! 成長期の男の子の食欲、凄すぎる。 

 今年も冬の魔物討伐に行かなきゃいけないかもね!


 ゲイツ様と少し遠慮がちなサリンジャーさんが前菜から食べている間に、こちらはケーキを食べる。


「ううう、美味しい! このところ夕食は、王宮の味気ないサンドイッチばかりでしたから、ペイシェンス様の料理を食べると生きている気がします!」

 大袈裟なゲイツ様は無視するけど、サリンジャーさんも食べる勢いが凄い。


 もしかして、本当に竜が飛来してくるから、魔法省は大変なのかな?


 ビッグバードの蒸し物をゲイツ様はお代わりしていたけど、凄いスピードで食事を終えた。


「このバースデーケーキ、美味しすぎます!」

 ああ、そんなに厚く切ったら、使用人にケーキが行き届かなくなるんじゃないかな? 女の子達は、楽しみにしているのに!


「ゲイツ様? 突然、来られたのは何故でしょう?」


 ナシウスの誕生日パーティだと察知したのかな? 怖いんですけど。


「昨日は教授会でしたし、明後日は母とのお茶会です。ナシウス君の誕生日パーティは、今日の昼しか考えられません。なのに、サリンジャーが煩いから、遅刻してしまいました」


 いや、招待していないからね!


「これは、ナシウス君に誕生日プレゼントですよ」


 長細い箱をナシウスに手渡す。


「開けてみても良いですか?」


 ナシウスが許可を得て、箱を開けると、綺麗なペーパーナイフが入っていた。


「ありがとうございます!」


 ゲイツ様にしては、常識の範囲内のプレゼントだね。それに実用性もあるし!


「このペーパーナイフ、もし部屋に賊が押し入ったら、投げると良いですよ。どんなに下手に投げても、命中するようにできています。そこの丸い的に投げてみなさい」


 その丸い的は、私がナシウスの誕生日パーティの為に作ったバルーンゲートなんだけど!


 パーシバルの目がキラキラだよ。それに、ヘンリーとサミュエルも見てみたいと目が語っている。


「お姉様、宜しいのですか?」


 バルーンなんて、どうせすぐに片付けるのだから、平気だよ! 何故だろう? ゲイツ様に言われた時は、ムカッとしたのに、ナシウスだとイイヨ、イイヨと思う。


「ええ、試してみたら良いわ」


 ナシウスがバルーンに向かってペーパーナイフを投げると、パン! と割れた。


「後ろを向いて投げても当たりますよ!」


 えっ、それは危険だよ!


「人を遠ざけた方が良いでしょう」

 パーシバルが使用人達を遠ざける。


「どの的を狙うのかだけ決めてから投げなさい」


 カラフルな風船擬、ナシウスは見て「青の的にします」と言ってから、後ろを向く。


 後ろ向きでナイフを肩越しに投げる。パン! と青色の風船擬に当たった。


「凄いですね! このペーパーナイフは、魔導具なのですか?」


 ああ、パーシバルが夢中だよ。それにヘンリーやサミュエルも投げてみたそう。

 

 もう、バルーンゲートは諦めた。


「皆で的当てをしたら良いわ」


 危ないから、外にバルーンゲートを運ばせて、ペーパーナイフを投げて遊ばせる。


 さて、そろそろ誕生日パーティもお開きにして、バーンズ公爵家に行く準備をしなくては! 


 お土産にチョコレート一箱とメロンを渡す。ゲイツ様とサリンジャーさんにもね! これで帰ってくれるでしょう!


 パーシバルは、少し残って欲しいな。庭を散歩しても良いし……なんて考えていたら、ゲイツ様が居座っている。


「あのう、忙しいのではないのですか?」

 これ、帰れ! って意味だよ。サリンジャーさんは、ゲイツ様を帰らそうと一生懸命だ。


「そうですよ! 書類の山が机から雪崩れ落ちています」


 相変わらず書類仕事をサボっているんだね。あれっ? 夜遅くまで王宮で働いているのに、変だよね?


「私が忙しい理由の一つは、ペイシェンス様にあります。それと、バーンズ公爵家にこれから訪問されるのなら、一緒に行った方が用件が片付きますね」


 えっ、私の心を読んだの? 精神防衛魔法をかなり鍛えているつもりなんだけど。


 サリンジャーさんが横で大きな溜息をついている。バーンズ公爵家に行くのを止めないのだ。

 つまり、いずれは訪問する予定だったって事なのかな?


「パーシバルも一緒に行きませんか? 貴方は、ペイシェンス様の婚約者なのだから、少しは知っておいた方が良いでしょう。どのくらい貴重な才能の持ち主か、そして狙われる可能性について知るべきです」


 えっ、パーシバルを挑発しないでよ!


「それは知っておきたいです」


 あれれ、パーシバルも喧嘩を買っている? これって、私が思っていたバーンズ公爵家訪問とは違う感じになりそう。古着の販売どころじゃないかも。


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― 新着の感想 ―
[一言] 先程、ゲイツ氏め〜!  という感想を書かせて頂いた者です。 感情のままに書いたので大事な事を書き忘れてしまいました。 こちらのお話も大好きです。 登場人物に心揺さぶられるのも、物語に入り込ん…
[一言] あぁぁぁ。 ホントに、ゲイツ氏、なんとかならないかなぁ。 領地経営や家族、友人、物作りなんかでワクワク 楽しい気分に毎回、冷水をぶっかけられる。 『このような事が続く様なら、ゲイツ様を嫌いに…
[一言] 囲い込みするなら、ナウシスとヘンリーにも、爵位と領地を下さいよ?子爵以上で 庶民の衣服は、自家製で、それぞれ動きやすい服を着るのが好ましいかと思う。(裕福な人は、裏地あり、とか) とはいえ…
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