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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第六章 中等科二年春学期

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ナシウス十一歳の誕生日パーティ

 今日は、ナシウスの誕生日パーティ! 浮き浮きと起きるけど、何だか嫌な予感もする。


「駄目よ!」と頭に浮かんだ映像を消そうと、腕を振っていたら、メアリーが怪訝な顔をする。


「今日も忙しいわよ!」

 さっさと起きて、色々と準備しなくちゃね!


 今日の予定は、ナシウス十一歳の誕生日パーティ! その後も、一緒に遊びたいけど、バーンズ公爵家でお茶、それからちょこっとで良いからとラシーヌに相談を持ちかけられている。


 マリーとモリーに、アンジェラの夏服を何枚か仮縫いまでして貰っているから、サティスフォード子爵家にどちらかを連れて行きたい。


「お茶の後、ラシーヌ様を訪問するのだけど……マリーとモリーのどちらかを連れて行きたいの」


 メアリーなら、マリーを押すだろうなと思いつつ尋ねた。


「そうですね……ラシーヌ様なら少しぐらいの失敗も大目に見て下さるでしょうから、モリーに経験を積ませたいです」


 おお、珍しい! でも、モリーはこれからメアリーの注意を厳しく受けそう。


 バースデーケーキ、今年はメロンを使うよ。

 スポンジの間にも薄く切って生クリームと一緒に挟むけど、上には丸くくり抜いたメロンをびっしりと飾って貰う。


 後は、ナシウスの好物! ナシウスは魚も好きだけど、やはり肉が好きなんだ。

 だから、メインは魚代わりの白身のビッグバードの蒸し煮。

 少し、バンバンジーソースに似たスパイシーなソースを用意してある。

 こちらでは高級野菜の胡瓜を千切りにして、一緒に食べると美味しいんだ。


 肉のメインは、大きなビッグボアのステーキ! 私は、小さ目にして貰うけど、ナシウスとヘンリーは大きなステーキにして貰う。


 ああ、転生した当時は、ナシウスの誕生日にステーキとエバに言ったら、首を横に振られたんだ。

 何もかも薄かったよね。なんて、感慨に耽っている場合じゃない。


 誕生日プレゼント、あの冷え冷えマフラーだけじゃあんまりだから、パーシバルと相談して、剣の練習中に着る服を新調することにしたんだ。

 これは、パーシバルに任せて、買って来てもらう。だって、騎士関係は全くわからないからね。

 今のは、サリエス卿が幼い頃に着ていた物だけど、もう小さくなっているんだ。


 サリエス卿の大きいサイズのは、ダメージが大きくて、アマリア伯母様はこちらに持って来なかったんだよね。生活魔法で、新品にできるのを話していなかったから仕方ないよ。


 それに、偶には新品も良いと思う。ナシウスのディナージャケットも新調させたよ。もちろん、ヘンリーの余所行きもね!


 服について考えていると、古着の事をついつい考えこんじゃう。

 ザッカーマン教授も、田舎の農民は王都の古着を買う経済的な余裕はないのではと否定的だった。

 それと、私が主婦に仕事場を提供するのも、よく考えた方が良いと言っていた。


 グレンジャー家は、王都にあるし、今まで領地なんか持っていなかったから、父親もワイヤットも田舎の生活に詳しくない。

 

「これは、レベルは違うけどバーンズ公爵に相談した方が良いのかも」

 長年治めている公爵領と、放置されていた子爵領では、領民の生活も違うだろう。それに、彼方はバーンズ商会を開いて、経済を回している。


 朝食の後は、お着替えだ。誕生日パーティは、お昼だけど、その前に来てくれるように招待状を書いている。

 だって、お昼を食べたら、バーンズ公爵家に行くから、午前中に遊びたいんだもん! ナシウスは、もう子どもっぽいと思うかもしれないけど、誕生日パーティにゲームは必要だ。


 ふふふ、それにスライム粉と珪砂と巨大毒蛙のネバネバとを混ぜて、風船擬を作ったんだ。

 誕生日といえば、バルーンアートでしょう!

 応接室に、バルーンの飾りをいっぱい設置している。

 ナシウスには内緒だよ! バレないように、気をつけなきゃね。


「着替えた後は、子ども部屋で少し勉強しましょう!」と少し強引に子ども部屋に移動させたのは、応接室に行かせたくなかったからだ。

 

 ヘンリーは、誕生日なのに? と少し悲しそうな顔だ。

 でも、ナシウスは「飛び級する為に頑張ります」と張り切っている。ナシウスに勉強は必要なさそうだけどさ。

 本当にサミュエルの反対なんだ。やはり、お金が必要な分野、音楽、ダンス、美術、剣や乗馬など、グレンジャー家は馬や絵の具や指導者も足りなかったからね。

 

 幸い、ヘンリーは王立学園に入学するまでカミュ先生に、勉強だけでなく芸術面も指導してもらえる。それに、サリエス卿やパーシバルが剣術指南をしてくれているし、馬も二頭も持っている。

 

 本当に、ナシウスには可哀想な事をしたよ! ペイシェンスは、ダンスは苦労したけど、美術は細密画の内職で鍛えていたからね。

 貴族の子息、教育にお金が掛かるんだよね。馬が一番のネックだったなぁ。


 この面で、協力してくれたラシーヌ! アンジェラを側仕えにしたかったからもあるけど、乗馬教師を派遣してくれたのには、本当に感謝しかないよ。

 だから、領地に行く前で忙しくても、ラシーヌの相談にはのるよ!


 十時になって、パーシバルが剣術の稽古着を買ってやってきた。

「これは、私とペイシェンスからの誕生日プレゼントです」

 えっ、半分出してくれたの? こういう優しさが嬉しい。


 サミュエルは「これは、いっぱいあっても困らないだろう」とファイルに挟む紙を大きな袋二つ!

「ありがとう!」

 今年の夏休み、本当に勉強を頑張らないといけないのは、サミュエルの方だけどね。


「遺跡調査の時に使ってね!」

 私の冷え冷えマフラー、見た目は格好良いとは言えないけど、ナシウスは首に掛けて「冷たいです!」と喜んでいる。


 応接室に、ナシウスと皆で入る。

「わぁ! 凄い!」

 主役じゃないけど、ヘンリーが一番喜んでいる。

「お姉様、これを作って下さったのですか? ありがとうございます!」

 おお、ナシウスにも好評だ。本当は、バルーンでできた王冠をナシウスの頭に被せたかったけど、ここでは王冠は王様の物だからね。


 父親も応接室に顔を出して、バルーンアートに驚いている。

「これは、空気で膨らんでいるのか?」

 バルーン、ヘリウムガスがあれば浮かぶのだけど、ないから土台を作って、それに飾ってある。


 応接室の入り口にゲート! そして、暖炉の上に色とりどりの風船擬をバラと電飾と一緒に飾ってある。


「これは楽しい雰囲気になりますね!」

 本当は浮かべたい! 


「ああっ! 浮遊の魔法陣を使えば……」

 パーシバルの呆れた顔を見て、今日はナシウスの誕生日パーティなのだと思い出す。これは、夏休みに考えよう!


 父親は、食事までは書斎にお籠もりするみたい。

 でも、それでも良い。私達は人生ゲームやリバーシやブロックで遊ぶからね!


「これは、良いですね!」

 パーシバルは、まだカザリア帝国の遺跡のブロックは見てなかったかな? ノースコート伯爵に渡す時、見たんじゃないかな?

 まぁ、あの時は作ったわけじゃないからね。

「ええ、ノースコート伯爵も喜んでおられましたわ」

 遺跡のブロックなのに、パーシバルとナシウスとサミュエルは、大きな砦を作っている。攻城戦でも始めそう。


 ヘンリーは、まだ細かいブロックは組み立て難いみたいだから、私とリバーシだ。


 わいわい楽しい誕生日パーティ! 食事は、もちろんエバの傑作で大好評だった。


「このバースデーケーキ! 凄いです!」


 メロンの丸くくり抜いたのが一面に飾ってある。その上に、細い十一本の蝋燭と、ナシウスの名前のチョコレート!


「さぁ、ナシウス! 願いを込めて、蝋燭の火を消すのよ」

 ナシウス、何を願うのかな? 中等科に飛び級できるようにと願うのかしら?


 ナシウスが真剣な顔で、少し願い、蝋燭の火を吹き消した。


「誕生日、おめでとう!」

 皆で、拍手してナシウスの誕生日をお祝いする。


 さぁ、ケーキを切って食べようとした時、私の悪い予感が当たった。


「酷いです! ナシウス君の誕生日パーティに私を呼ばないだなんて!」

 いや、ゲイツ様を呼ぶ意味がわからないよ!


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― 新着の感想 ―
[一言] ゲイツ氏、お久しぶりですねw ウザイけどなんだかんだとペイシェンスたちには有益な存在だと思うので、あとはペイシェンスたちがゲイツ氏の押しの強さに負けない交渉力をつけれるようになるしかない!
[一言] 「ただでさえ忙しいのに何故、弟の誕生日にゲイツ様をお招きしなければならないのでしょうか?」と、ペイシェンスに問いただしてほしいです。 いや、本当に忙しいのはゲイツ様の所為ですし。 ここは大事…
[一言] 嫌な予感!!それは……、呼んでもいないゲイツ氏の突撃訪問だった〜(ノ*0*)ノ プレゼントは持ってきてるのよね!?(´Д`)ハァ… これでプレゼントもなかったらペイシェンスが(●`ε´●)…
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