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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第六章 中等科二年春学期

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パーシバルと夜の馬車

 夕方になり、パーシバルが夕食のために迎えに来てくれた。

「ペイシェンス、少し大人びて綺麗だよ」

 父親に外出の許可を得て、モラン伯爵家の馬車に乗る。

 エスコートもスマートだし、これで付き添いのメアリーがいなければ、夜のデートなんだけどね。


 モラン伯爵家までも近い。馬車の中で、今日の教授会の話をパーシバルにする。


「ペイシェンス、本当に大人数になりましたね」


 パーシバルは、くすくすと笑っている。やはり、大学生達はグレンジャーに滞在で良かったよ。


「ローレンス王国やコルドバ王国でも米は栽培されていますが、長粒種で畑栽培なのです。短粒種の米は、明明様にお聞きしたら、やはり水田で栽培するみたいなの。リンネル教授も興味を持たれたから、学生達と一緒に滞在して実験して下さるそうよ」


 パーシバルも教授まで来られると聞いて、少し驚いている。


「そう言えば、ラドリー様はハープシャーに滞在されるのですよね?」


 ラドリー様は、エバの料理目当てだから、きっとハープシャーだと思う。


「ええ、ラドリー様が領地に来られるから、ライトマン教授も来られると言われましたが、彼は学生達とグレンジャーに滞在されるそうです」


 あのボロボロのハープシャー館に滞在しようかと言われたぐらいだからね。


 海洋生物学のベッカム教授の件も伝えたし、一番大事な話をしたい。


「リリアナ伯母様の手紙で、独立したがっている騎士を紹介すると言われたのです」


 やはり、パーシバルは騎士関係の萌ポイントが高い。真剣な顔になる。


「それは、良いですね! モラン伯爵領でも騎士を引き続き探しておきます」


 私は、領地の管理について、何も知らない。


「何人ぐらいの騎士が必要なのでしょう」


「最低でも二人は必要です。領内をパトロールするのは領兵だけでも良いのですが、今はその領兵もレベルが低い。騎士が率いるしかありません」


 パトロール中に何か問題があった時の為に、ハープシャーに滞在している騎士も必要で、最低二名。


「本来なら、子爵家だと四名は必要ですが、一気に信頼できる騎士を集めるのは難しいですね」


 ハープシャー、グレンジャー、どちらも放置されて寂れているけど、元々子爵領だったから、二つ合わせると伯爵領並みの広さになる。


「他の方にも声を掛けてはいるのですが、騎士も家政婦も必要なのです」


 私が嫁ぐまでに、グレンジャー家の家政婦を育てておかないといけないのだ。


 折角の、夜のお出かけなのに、全く色気のない話をしている間にモラン伯爵家に着いた。


 モラン伯爵夫妻は、温かく出迎えてくれ、応接室で少し話をしてから食事になった。


 メアリーは、もちろん同席していない。それなら付き添う意味が無さそうだけど、パーシバルと二人っきりにはなれないみたい。


「とても、美味しかったです」

 モラン伯爵家は、外交官を集めてパーティが多いみたいで、どの料理も洗練されていた。


「ペイシェンス様の料理人には敵いませんが、古典的なローレンス王国の料理を少し現代風にアレンジさせています」


 今夜の料理、アンが作ったのは、前菜だと分かったよ。エバは、これまで魚料理はあまり作った事がなかった。

 王都では、生きの良い魚は手に入り難いし、高いからね。それに、肉は、やはり晩餐のメインだから料理長が作ったのだろう。


 普通は、紳士方は食卓に残って、強いお酒や葉巻などを楽しむのだけど、今夜は全員で応接室に移動する。


「ハープシャー館にモラン伯爵領の使用人を派遣して下さり、ありがとうございます」

 到着した時は、時候の挨拶程度だったから、これを言わなきゃね!


「良いのですよ。私達は、この夏は領地に行きませんから」

 マーガレット王女、キース王子、ジェーン王女の縁談があるから、外務省は大忙しみたい。


「少しでもお慰めになるかと、チョコレートとメロンとスイカをお持ちしました」


 伯爵夫人は、チョコレートに微笑んだ。伯爵は、メロンとスイカに興味を持つ。


「ペイシェンス様、それは輸入した物ではないのですね!」


 パーシバルが、私の横でくすくすと笑っている。


「ペイシェンスが屋敷の温室で栽培したのです。領地のハープシャーでも、二つの温室でメロンとスイカを栽培していますよ」


「それは良い! メロンは、南の大陸からの輸入品で、高価な上に時々中が腐っている物もあったのだ!」


 ああ、南の大陸から船便で送る途中で、傷んでしまうのも多かったのだろう。


「まだメロンは何個か熟していないのがあります。熟し次第、こちらに届けるように言っておきますわ」

 留守中のメロンは、売ろうと思っていたけど、使用人を借りるからね。それに将来の舅姑には、良い子だと思われたい。


 それからは、社交界デビューの注意点などをモラン伯爵夫人から聞いた。


「婚約者が決まっているので、不必要なパーティには参加しなくても良いでしょう」

 これは、ありがたい。卒業に必要な単位は足りると思うけど、秋学期が最後の王立学園の日々になるなら、クラブ活動をもっとしたいんだ。

 あっ、音楽クラブはちょこっとで良いかな?


 錬金術クラブと料理クラブ、特に料理クラブのメンバーは可愛い性格の女の子が多いから、もう少し親密になっておきたい。

 ロマノ大学に進学する子はいなさそうだから、ここで仲良くならないと縁が切れそうなんだ。


 パーシバルが私の代わりに伯爵夫人に質問してくれた。


「何回ぐらいになるのでしょう?」


 伯爵と顔を見合わせて、アイコンタクトを取ってから話し始める。


「先ず、王宮のパーティは欠かせません。ここで国王夫妻に挨拶して、正式な社交界デビューになるのですからね」


 それは、伯母様方からも聞いている。


「各国大使館も、社交界シーズンにはパーティを開く。普通は、デビュタントに招待状など送らないが、ペイシェンス様はマーガレット王女の側仕えだから、いっぱい舞い込むだろう」


 えっ、ロマノに大使館って何軒あるのかな? 小さな国のもあるよね?


「招待されたからと言って、全て出る必要はないのですよ。でも、ソニア王国、コルドバ王国、デーン王国は、留学生として王子や王女がいらしていますから、出席しないといけませんわ」


 それと、モラン伯爵家でもパーティを開くから、これも参加決定だ。


「パーシバルの同級生で、今年、社交界デビューする家もパーティを開くでしょう。これも、無視したら失礼になります」


 パーシバルが肩を竦める。

「ロマノ大学に入学してから社交界デビューする人も多いです。でも、カエサル様、アルバート様、アーサー様などは、今年みたいですね」

 

 うっ、知り合いが多いよ! それに、エリザベス、アビゲイルもマーガレット王女と一緒に社交界デビューする。


「騎士コースのメンバーは?」

 元々、パーシバルは騎士コース選択なのだ。伯爵が首を傾げる。


「父上、騎士コースのメンバーは、ロマノ大学の試験の準備か、騎士団の入団試験で忙しいですよ。社交界デビューは、ロマノ大学に入学してからか、騎士に叙勲されてからでしょう」


 あっ、少しパーシバルの声に羨望が感じられる。王立学園を卒業して、見習い騎士になるか、ロマノ大学を卒業して騎士団に入るかしたかったのだろう。


「騎士にならないと、社交界デビューしても意味はないからな」


 貴族で何個も称号を持っているなら、それを譲り受けたら貴族だ。カエサルやベンジャミンとかは、生まれた時から嫡子として、称号を貰ったと言っていた。


 そうでない場合は、親は貴族だけど、子どもは庶民になってしまう。自分で騎士になるか、官僚になって称号を獲得しないといけないのだ。


 ナシウスは、いずれはグレンジャー子爵になる。でも、ヘンリーは自分で騎士爵を確保しないといけない。私の準男爵位を譲ってあげたいな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 嫡男は、10代半ばにもなれば、父親に付いてあちこちのパーティーや会合や狩りに顔を出して「うちの後継ぎです」と父の知人とあいさつをして、自然のデビュー(人脈作り)しているのかと思ったが ヘン…
[一言] 次男って、医師や弁護士を、目指す人いないのかな? ペイシェンスは、伯爵でも足りない功績を挙げたのに、これ以上叙爵しないのかな? この夏は、現地人を、人足として、大量雇いしてもいいかもね
[良い点] 更新ありがとうございます! 毎日更新に戻って楽しんでいます(*^^*) [気になる点] ペイシェンスは子爵に階爵したのではなく、叙爵していたんですね(笑) 今読み直してやっと気づきました!…
2024/01/28 16:39 退会済み
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