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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第六章 中等科二年春学期

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パプリカは甘い!

 教授会の為に着替えたけど、メアリーはもう夜のモラン伯爵家のディナーに着ていく服で頭が一杯だ。

「新品のあのドレスは、ケープコット伯爵との顔合わせに着ていく予定だし、彼方のは夜には軽いですわね」


 ぶつぶつと悩んでいるメアリーは放置しておく。ドレスを選ぶのが大好きな彼女に任せておけば、大丈夫だろう。

 私は、お昼を食べているナシウスとヘンリーがいる子供部屋に行こう!


 カミュ先生も、今日は子ども部屋で昼食だ。

「食事中に申し訳ありません」

 一言、断ってから、テーブルにつく。

 わぁ、ヘンリーの食べっぷり、凄く早い。ナシウスも早いけど、学園の上級食堂(サロン)で他の貴族の子弟達と食べているからか、優雅に見える。


「私も一緒にここで食べたいわ」

 つい愚痴っちゃう! でも、今回は色々と質問したいから、仕方ないね。

「ペイシェンス様は、ロマノ大学の教授会を仕切られるなんて、もう何処に嫁がれても心配いりませんわ」

 カミュ先生に褒めて貰えた。


 ここに来たのは、ナシウスの成績と修了証書を褒める為と、夏休みの事でカミュ先生に頼む事があるからだ。


「ナシウスは、春学期に国語と数学と歴史と古典と魔法学の修了証書を貰いましたの。でも、中等科に飛び級したら、勉強も厳しくなりますわ。夏休みの間に、ダンス、音楽、美術、体育を頑張らせて欲しいのです」

 カミュ先生は、立派な成績だと驚いている。


「やはり、グレンジャー家は学問の家系なのですね。ダンス、音楽、美術は、ヘンリー様と一緒に勉強しましょう」

 体育は、騎士合宿で一緒に鍛えて貰おう!


「あと、サミュエルもナシウスと一緒に中等科に飛び級したいと思っているみたいですが、今年はノースコートにはお客様が多いので、一緒に勉強をみてあげて下さい」

 

 サミュエルも頑張っているけど、数学と古典と歴史は修了証書を貰っていないんだ。その代わり、音楽、ダンス、体育は貰っている。二人は対照的だね。だから仲が良いのかも。

 サミュエルの件を伝えると、カミュ先生はにっこりと笑って引き受けてくれた。


「ナシウス様、美術は、油絵具の使い方を練習すれば大丈夫ですわ。ダンスは、練習あるのみです!」

 音楽も問題はなさそうだから、ナシウスは大丈夫だと思う。

 それと、歴史の暗記カードをカミュ先生に渡しておく。サミュエルには必要だと思うからね。


「まぁ、これはよく考えてありますわ! ヘンリー様も一緒に楽しく学べそうです」


 夏休みだから、弟達の勉強を見てあげたいけど、領地の管理で忙しそう。カミュ先生に任せた方が良い。


「お姉様、夏休みも勉強ばかりなのですか?」

 ヘンリーが悲しそうな目で見ている。

「いいえ、勉強は涼しい午前中で終わりですよ。昼からは、乗馬をしたり、海で泳ぎましょう!」

 私は、乗馬は……パスはできないね。馬の王(メアラス)も田舎の方が自由に走れるだろうし。


「お父様と一緒に泳ぎたいです!」

 ええっと、父親が泳げるか知らないけど、少しは外の空気を吸った方が健康的だよね。

「ええ、ヘンリー! お誘いすれば良いわ」

 フロートで浮いたまま読書していそうだけどさ。


 さて、弟達との親睦の時間は終わり! 教授達を出迎える準備だ。

 父親も、大学から帰って着替えも済ませている。応接室は、もうドレス関係の物はない。


 一時になると、次々と教授が夫人を連れてやってきた。今回は、伯母様の応援がないから、夫人方の相手をしなくてはいけない。


 なんて思っていたけど、夫人方は夫人方で話が盛り上がっている。あれっ? 旦那様が留守の間、王都で会う計画みたい。

『亭主、元気で留守が良い!』なんて、この世界でもあるのかな?


 料理は、予めエバとミッチャム夫人が考えてくれた献立を、私が確認して了承した形だ。

 蟹のテリーヌ、本当に美味しいし、見た目も綺麗。


「これは、グレンジャー領のマッドクラブですね!」

 建築学のライトマン教授が、美味しそうに食べている。彼方でも何度か食べたとは思うけど、鍋とか焼き蟹が多かったかもね。


「マッドクラブがグレンジャーでは取れるのですか?」

 おっ、この人は初顔合わせの海洋生物学のベッカム教授だ。

「ええ、遠浅の海岸ですから、マッドクラブが繁殖しています」

 目がキラリとしている。隣の綺麗な夫人は、やれやれと呆れ顔。


「学長から、ペイシェンス様は魚や海老の養殖をしたいと考えておられると聞きました」

 えっ、父親がそんな事を話していたの? 私は、父親とそんな話をした事がないと思うけど?


「息子から聞いたので、それが実現可能なのか、不思議に思ったのだ」

 ああ、ヘンリーやナシウスには話したかもしれないね。

 ヘンリーは、ケイレブ海老が好きだから、いっぱい食べられると喜んでいたっけ!


「ベッカム教授には、あとで相談に乗っていただきたいですわ」

 今は、食事中だから、色々と質問するのは良くないだろう。


 スープは、カレースープ! スパイシーだけど、トマト多めだから辛すぎない。

 これは、ご夫人方にも大好評だった。


 魚介のメインは、蟹のパイ包み。蟹の身をベシャメルソースに絡めて、パイで包んである。

 サクサクのパイ生地とトロトロのベシャメルソース! 文句なく美味しい!


 レモンシャーベットの後は、肉のメイン。教授会は、ロマノ大学を形取ったゲームパイが多いけど、夏だからさっぱりと食べられる火食い鳥(カセウェアリー)の蒸し物。


 一口食べたら、頬っぺたが落ちそう! 蒸す前に、塩麹につけていたから、とても柔らかくてジューシー。


「これは、美味しいな!」

 父親は、火食い鳥(カセウェアリー)が大好物だからね。

 それに、付け合わせのパプリカがとても甘い。

 白身の火食い鳥(カセウェアリー)の蒸し物に、赤と黄色のパプリカ! お皿の上に芸術的に盛られている。


「この野菜は、何でしょう?」

 ライトマン教授の夫人が代表して質問する。他の夫人方も、何かわからないのかな?

「これはパプリカですわ」


「えっ!」と夫人方が驚く。パプリカって使うよね?

「パプリカは、こんなに甘くないと思っていましたが……」

 植物学のリンネル教授が首を捻る。

 

 あっ、そういえば夏の離宮やノースコート領で食べたパプリカは、少し苦味が残っていた。キース王子がコソッと退けていて、叱られていたんだ!


「このパプリカは、じっくりと皮が黒くなるまで焼いています。そして、黒くなった皮を剥ぎ取れば、まるで果物のような甘さになるのです」


 この食べ方、前世で母親が好きで、よく作ってくれていたんだ。

 

「まぁ! 家でやってみますわ」


 リンネル教授は、とても気に入ったみたいで、口に入れては目を瞑って味わっていた。やはり、植物学だから、野菜好きなのかな?


「これは、夏休みが楽しみです!」

 うん? 学生が稲作のフィールドワークに来るのは知っていたけど、教授もなの? まぁ、甜菜だけじゃなく、もっと相談に乗って欲しい作物があるから、大歓迎だけど。


 デザートは、メロンアイス! 前は、メロンをくり抜いて生クリームを詰めたけど、今日はアイスクリームを詰めた。勿論、丸くくり抜いたメロンを散りばめてある。


「このメロンは、輸入したものではないのですね!」

 リンネル教授が切り分けられる前のメロンをじっくりと見ている。手紙でメロンの収穫時期について質問したから、作っていると思ったのだろう。

「ええ、家の温室で栽培しましたの」

 すぐにでも温室に飛んで行きそうなリンネル教授を夫人が止めている。


「あとで案内させますわ」

 私は、食事の後も応接室でホステス役をしないといけないからね。ワイヤットかジョージに案内して貰おう。


「まぁ、丸いメロンが可愛いですわ」

 うん、やはり夫人達は、目のつけどころが良いね。パーシバルさえ、この可愛さに気づかなかったんだよ。


 ザッカーマン教授は、この教授会に招待されたメンバーが私の領地開発に関係するのに気づいて、少しにまにましている。教授にも質問があるんだよ!

 

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ペイシェンスの生活魔法最強ですね♪ (*´ω`*) [一言] メロン狩りイイなぁ (*´﹃`*)ジュルリ…
[気になる点] 小切手は、どうやって換金するんだろ? 魔法紙とかだったりするのかな? それとも、銀行で換金?
[気になる点] ペイシェンスの父親という呼び方が気になります。それだけのことをされたからだと思いますが、いつかわだかまりがなくなるときがくるのでしょうか。誰にでもなんだかんだ優しいペイシェンスが唯一ず…
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