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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第一章 王立学園初等科
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夏の離宮 晩餐にて

 メアリーに急がされて部屋に向かう。

「あっ、部屋からも海が見えるのね!」

 開けはなされた窓から海を眺めていたら、メアリーにお風呂に入らされる。

「晩餐までに着替えなくてはいけません。お急ぎ下さい」

 そっか、グレンジャー家でも夕食には着替えるのだ。夏の離宮でも着替えるのは当然だね。生活魔法があるから、髪を乾かすのも一瞬だ。

 「乾け!」の一言だよ。

「こちらを着て下さい」

 メアリーが差し出したドレスに見覚えは無かった。王妃様が用意して下さったドレスだ。

「なんか、高級そうなドレスね。でも、国王陛下がいらっしゃる日に着た方が良いのでは?」

 メアリーは、その日も着れば良いと急がせる。

「頂いたのに着ないのは失礼です」

 ピンクは前世ではあまり着たことがない。どちらかと言うとモノトーンが多く、差し色に青ぐらいだった。

「お似合いですわ」

 メアリーは欲目が凄い。けど、ペイシェンスには似合っていると思う。冬よりは少しだけガリガリでなくなったからね。なかなか可愛いんじゃないかな?

 贅肉は付けたくないけど、もう少し筋肉は付けたいな。水泳、頑張ってみよう。マーガレット王女、乗馬は忘れてくれないかな?

 メアリーに急がされて、食堂の前の部屋へ入ったけど、誰もいない。

『もう、早すぎるよ!』

 離宮のお風呂をもっとのんびり楽しみたかったよ。なんて内心で愚痴っていたら、キース王子とリチャード王子が来たよ。へぇ、なんか格好いいね。流石、王子様だ!

 何でキース王子はそんなに照れてるの?

「ペイシェンス、お前もそんな格好をしたらまぁまぁ見られるな」

 折角、格好良いと思ったけど、中身はお子様だね。まぁ、私はショタコンなので、そんなお子様も微笑ましく思うけどね。

「キース、失礼だぞ」

 ほら、リチャード王子の注意が入ったよ。

「いえ、キース王子が褒めて下さったのは分かっています」

 晩餐前にリチャード王子の気分が悪くなるのは避けたいからね。ちゃんとフォローしたのにキース王子はブツブツ言っている。もう、それをやめないから、大好きな兄上を怒らせるんだよ。

 おお、良いタイミングでマーガレット王女が部屋に入って来られた。リチャード王子とキース王子も立ち上がって出迎える。

 ほら、キース王子も礼儀正しくできるんだよ。それをリチャード王子の前でキープすれば、怒らせる事が少なくなるよ。

「マーガレット様、とてもお綺麗ですわ」

 巻き髪が気に入ったマーガレット王女は、メイドに綺麗に髪を整えて貰っていた。目と同じグリーンに似合うドレス、それも裾が長い。そうか、もう13歳になられるのだ。昼は膝下の丈だけど、夜のドレスアップした姿はもうすっかりレディだね。

「ありがとう、ペイシェンスも似合っているわ」

 マーガレット王女も女社会のルールに従う。褒められたら、褒め返すのがルールだよ。

「王妃様に頂いたドレスです。嬉しいですわ」

 まぁ、ドレスは嬉しいよ。でも、家で弟達と過ごせる方が幸せだけどね。それは口に出してはいけないのだ。

 王妃様が来られた。リチャード王子とキース王子も立ち上がるし、マーガレット王女も私もね。

「さぁ、食べましょう」

 今夜は陛下はいないので、リチャード王子がエスコートする。マーガレット王女はキース王子が、私は1人で大丈夫だよ。

 晩餐って緊張するね。リチャード王子やマーガレット王女やキース王子とは上級食堂サロンで毎日食べているのに。やはり着飾っているのと、ビクトリア王妃様の存在が大きい。

「ペイシェンスは魚が好きだとマーガレットから聞きましたわ」

「はい、ロマノではあまり魚は食べる機会がありませんから、夏の離宮に誘って頂き嬉しいです」

 あっ、キース王子が魚なんか嫌いだと言いそうだ。うん、近頃、キース王子の失言センサーが働くようになったんだよ。

「王妃様、このドレス、ありがとうございます」

 お願いだから、口を閉じておいてね。リチャード王子の機嫌ぐらいなんとかなるけど、王妃様を怒らせないで。少なくとも私の前では。

「ペイシェンス、よく似合っていますよ」

 これで晩餐中の私の会話は終了。後は食べるのに集中しよう。

 前菜は、な、なんと海老と雲丹っぽいののゼリー寄せだった。美味しいよぉ。これ、雲丹だよね。ペイシェンスの記憶をググっても名前は出てこない。食べたこと無いんだね。

「本当にペイシェンスは美味しそうに食べますね」

 王妃様に褒められたんだよね。呆れられたんじゃ無いよね。

「ええ、初めて食べましたが、こんなに美味しい物があるとは知りませんでした」

 キース王子が嬉しそうに名前を教えてくれる。偉そうにするの大好きだもんね。お子様だもの。

「このピンク色のはケイレブ海老だ。オレンジ色のもやもやしたのは馬糞雲丹だ。名前も酷いが……」

 流石にキース王子もビクトリア王妃様の厳しい視線に気づいて口を閉じた。馬糞雲丹、前世と同じ名前なのか、異世界言語で翻訳されているだけなのか、そんなこと考えて無いよ。海老も雲丹も大好物だったんだもん。キース王子の残した雲丹も食べたいぐらいだよ。

 魚介類のスープも魚のポアレも美味しかった。冬には何度か上級食堂サロンのメニューにのったけど、暖かくなるにつれて見なくなった。ロマノは内陸だもんね。キース王子はスープも魚も残していた。やれやれ。

 美味しい晩餐だったけど、やはりデザートはイマイチだ。でも、果物もあるからそっちを食べるよ。

「本来なら紳士方をここに置いて、私達だけがサロンに移るのですが、一緒に行きましょう」

 あっ、サロンにはハノンがあったよね。嫌な予感しかしないよ。





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― 新着の感想 ―
[一言] キースは現代日本ならカレーライス食べる時にう○こネタ出して叩かれるタイプだな
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