表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第六章 中等科二年春学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

547/761

パーシバルと慰め合う

 嵐のようなゲイツ様が帰ってから、私とパーシバルは疲れてしまった。


「お嬢様、お茶をどうぞ」

 本当は、昼食の後に応接室に移動した時、お茶を飲みながら話すのだけど、そんな感じじゃなかったからね。


 ワイヤットに出してもらったお茶を二人で黙って飲む。

「やはり、ゲイツ様の罠に嵌ってしまったわ」

 パーシバルも、自分の未熟さを突かれたので、落ち込んでいる。


「こうなったら、魔法でどんどん領地の改革ができる。それに、領民や冒険者達を領兵として雇いましたから、その訓練ができると考えて頑張るしかないですね」


 それに、使用人の訓練はありがたい。領地の若い子を下女や下男に雇ったけど、王都の孤児院の子より教育が大変そうなんだ。


「ええ、こうなったら利用できる事は、利用させて頂きましょう!」

 落ち込んでいても仕方ないので、二人で領地に必要な物を考える。


「夏休みに滞在する人数が多くなりそうですから、屋敷に残っている冷凍した魔物の肉を運びますわ」

 パントリーからはみ出そうだった魔物の肉も、これで食べ尽すかも。


「それと、前から考えていたのですが、領地に養鶏場と牧場が必要ですね」

 そうなんだよね。今は、ノースコートから卵や牛乳は買っている状態なのだ。今年の夏は、彼方もお客様も多いし、ホテルでの食事もあるから、融通して貰いにくくなるかも。


「領民達は、卵や牛乳は食べないのかしら?」

 王都では、高価ではあるけど、卵や牛乳も手に入る。私は、田舎の暮らしは知らないのだ。


「モラン領では、牧畜もしていますが、領民は牛ではなく山羊を飼う方が多いです。あれなら、庭でも飼えますからね」


 つまり、卵や牛乳は貴族か、それに仕える人しか食べないのだ。まぁ、前のグレンジャー家でも食べられなかったけどさ。


「モラン領では、森が近いから魔物の肉を食べるのが多いです。それと、湖の魚とか……でも、やはり海がある方が良いですね」


 ハープシャーもグレンジャーに近いから、魚を食べるのかも? 

「いえ、普通は山羊か魔物の肉、若しくは川魚でしょう」

 流通が発達していないし、今は一つの領地になっているけど、前は違っていたから、交流も少なかったのかも?


「魔物……やはり討伐しないといけないのでしょうね」

 パーシバルが笑う。

「冬の魔物討伐のような大物は少ないと思います。アミラージや鼠やモグラの魔物は、領民も狩りをするし、冒険者ギルドでも常に依頼が出ているでしょう」


 ふぅ、それは安心だよ。でも、パーシバルに注意された。

「そのような小物は問題ありませんが、偶に大物も移動してきますから、常に領兵にパトロールさせなくてはいけません。それに、領地の街道を常に安全に保つのも領主の仕事です」


 ふぅ、溜息が出ちゃう。冬の魔物討伐の時も雪狼(ニックスルプス)を一匹たりとも逃してはいけないと、騎士団達は真剣に考えていた。

 普通の領兵では、討伐できないから、領民達に甚大な被害がでると恐れていたのだ。


「養鶏場は、ハープシャーの司祭では浄化できそうにありませんわ」

 本拠地は、ハープシャーになりそうなのだけど、あの年老いた気の良さそうな司祭は、あまり能力は高くない。


「グレンジャーの司祭はできそうなのですよね? なら、そちらに作るか、週一でハープシャーまで浄化に来て貰うかです」

 卵も高価だから、養鶏場も館の敷地内に作った方が良い。浄化が不十分だと臭いし、衛生的に良くないよ。


「ただ、未だ信頼できるかわからなくて……」

 ハープシャーの老司祭は、多分、大丈夫だと思う。グレンジャーの司祭は、少し年配だけど、独身だし、何故、あんな寂れた教会に派遣されたのか謎なんだよね。


「父も、教会関係は詳しくありませんが、調べて貰っています。ゲイツ様に頼んだ方が確かかもしれません」


 ああ、そのゲイツ様に踊らされているんだ! 二人で肩を落とす。


「ペイシェンス、今年の夏休みは大変になりそうですね。領地からの収入が未だないのに、負担が多いのでは?」


 パーシバルが心配してくれる。とてもありがたい。


「使用人を鍛えられるのは大きいですわ。それに、食料品は魔物の肉と領地の生産物で賄えます」


 やはり、海があるのは良いよね! マッドクラブの乱獲になるのではと、心配していたけど、魔物なのですぐに増える。


「海のある領地は羨ましいです」

 ふふふ、パーシバルもカニや海老が好きだからね。それに鮑のステーキも!


「今度の教授会、お父様にお願いして、海洋生物に詳しい教授を招待して貰っているのです」

 パーシバルが目を輝かす。

「もしかして、養殖ですか?」


 前にチラッと話していたのを覚えていてくれたのだ。


「ええ、グレンジャーの遠浅の海は、港には直ぐにはできそうにありませんが、養殖するには向いていると思うのです」


 ケイレブ海老とか魚とかの養殖、できたら良いよね!


「それと、雲丹漁についても考えています」


 パーシバル、笑って肩を抱いてくれる。


「あの瓶詰めの雲丹、とても良い商品になりそうです」

 お酒のアテにもなるし、雲丹スパゲッティも絶品だよ。パーシバルも大好物なんだ。


「ただ、海の魔物は大きいし、厄介ですわ」

 養殖の網なんか、マッドクラブがハサミで一瞬で切ってしまいそう。

「ふむ、それを防ぐ手段がないと、魔物の餌場になってしまいそうですね」


 だから、それを海洋生物学の教授に相談したいんだ。


「ああ、でもペイシェンス……ナシウスの歴史研究クラブの合宿、それにラドリー様の助手に立候補するだろうライトマン教授の学生達、その上に海洋生物学の教授と助手達も合宿になりそうですが……大丈夫ですか?」


 ふぅ、溜息しか出ない。ここは、やはりハープシャーとグレンジャーに分かれて滞在するしかないかも。


「ナシウスと離れ離れは辛いわ」

 寮生活でも、あまり接触はないのだ。錬金術クラブでも、ナシウスは初等科のメンバーと頑張っているから、少し離れて見ているだけなんだよ!


「歴史研究クラブも夏休み中ずっとは合宿しないでしょう。合宿が終わったら、ナシウスもハープシャーで一緒に夏休みを楽しめば良いのです」

 パーシバルに慰めて貰うけど、あの人達の遺跡愛を知らないからだと思う。

「そうだと良いのですが……」

 フィリップスも普段は良識派なんだけど、歴史や遺跡となるとね。


 それに、今年は無理だと思って諦めていた稲作! 姪の明明に親切にしたお礼にと、王さんから短粒種の種籾と梅の苗木を貰ったんだ。


 梅の苗木は、グレンジャーの屋敷と新居の屋敷に植えたよ。継枝もして、領地にも増やしたい。梅の実があれば、色々と料理の幅が広がるからね。


 問題の種籾、ローレンス王国やコルドバ王国では、長粒種は畑で栽培していると聞いたけど、カルディナ帝国では水田なんだよね。

 ふぅ、リンネル教授に要相談かも?


「ペイシェンス? 他にも何か?」

 パーシバルにこれ以上手を出す事について説明しにくいけど、相談すると約束したからね。


「一気には無理ですよ!」と言われても、種籾は長く置かない方が良いと思う。


「何とかなりますわ!」きっとね!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ゲイツとか言う傍若無人が過ぎるキャラが酷すぎる。挫折を知らないからか、自分の欲望を貫き通しすぎ。毎回主人公側が折れるストーリー構成はいつまで続くのか。 恋人でも家族でもないのにプライベ…
[良い点] お米と梅干し(๑•̀ㅂ•́)و✧ [気になる点] ペイシェンス大忙しですね♪ (*´∀`*) [一言] 頑張れペイシェンス!
[一言] ペイシェンスと、パーシバルに、ロマンチックな時間、作ってもいいよね 天才ナウシスのサプライズで、3日くらい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ