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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第六章 中等科二年春学期

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藪をつついて蛇が出ちゃったかも!

 パーシバルを見送って、嫌だけどゲイツ様に手紙を書く。

「魔法合宿だなんて、そんなことをしている暇はないのよ!」


 領地でするべきことが山積みだし、ベネッセ侯爵夫人が母方の親戚との顔合わせを手配してくれているから、そちらも会わないといけない。

  

 それに関連して、メアリーの結婚式と新婚旅行を計画しているんだよね。ケープコットは、国の東で王都からは十日以上かかるみたい。

 貴族は自分の馬車で行くけど、辻馬車とかだと大きな町で次の馬車まで待たないといけなかったり、色々と不便なんだって。


 でも、この機会を逃したら、メアリーは両親や家族に会えないと私は思うのだけど、ここの世界の人は一旦外に働きに出たら、そのままってのも多いみたい。クールなのかな?

 

 私は、パーシバルと結婚しても弟達と繋がっていたい。でも、二人が結婚して、その相手が嫌がったら……その時は、そっと陰から見守るだけにしよう。


 などと、未来について夢想しては、悲しんだりしていたけど、朝からメアリーにゲイツ様に手紙とチョコレートを一箱持って行って貰った。

 流石にテスト勉強とレポートを書かないと、領地に行くどころではないから、ナシウスとヘンリーと一緒に勉強して過ごす。


 ヘンリーはカミュ先生と相性が良いみたい。厳し過ぎない厳しさのある先生だと思うけど、拗らせていたサミュエルは、厳しくて嫌だと感じたのかな?

 ナシウスは、もう中等科に飛び級できそう。一年に一学年だから、秋学期は初等科二年生のままだろうけど、学年末には中等科へと進めると思う。


 私は、今回はパーシバルと一緒の組じゃないから、少しだけテンションが低い。

 婚約者を別の組にするだなんて、外交学の先生は酷いよね。ラッセルとアルーシュ王子も素晴らしい論客だから、その資料を纏める。


「やはり、パーシー様の為に資料を集める方がテンションが上がるわ!」

 なんて愚痴っても仕方ない。それに、今回は初めてローレンス王国側だから、頑張ろう!


 何とか外交学の資料を纏め、経済学と経営学のレポートの下書きをしようとしていたら、メアリーが戻ってきた。

 あっ、メアリーが留守の間に家政婦のミッチャム夫人と結婚式の計画について話しておけば良かった! 失敗したな! 弟達と一緒に勉強するのに夢中だったよ。


「お嬢様、ゲイツ様からお手紙を渡して欲しいと預かりました」

 ゲッ! 嫌な予感がする。藪をつついて蛇を出したんじゃないかな? それに、すごく分厚い手紙なんだけど、内容は知りたくないな。


「メアリー……」

 受け取りたくないけど、仕方ないから受け取る。何処かで落として来てくれたら……なんて、真面目なメアリーに言えないよね。


「お返事が欲しいと言っておられました」

 うっ、封を切るのが嫌になるけど、ペーパーナイフで開ける。何枚もの便箋が溢れ出る。


「えええ……そんなの無理だわ!」

 ここのところ、ゲイツ様が忙しそうだったのが何故だかわかったよ。

 それに、魔法授業どころじゃなかった理由もね。


「どうされたのですか?」

 メアリーは、私が困っているのを見て心配している。

「夏休みの魔法合宿について質問したら、竜退治に誘われたの」


 メアリーも『竜退治!』と口が開いたまま閉じない。

 勉強していたヘンリーもナシウスも『竜退治!』の言葉にペンを止める。


「ああ、今すぐではないみたい」

 読み進めてみると、やはり南の大陸では竜の繁殖期になっているみたいだ。それをゲイツ様は、調べていたから忙しかったんだね。

 メアリーは、ホッとして口を閉じ、弟達も勉強に戻る。


 ふむ、ふむ、と読んでいたけど、今回はこの何百年間よりも長い繁殖期になりそうだとか……それで、増えた若い馬鹿な竜が北の大陸まで飛んで来る可能性もあるとか……滅茶、嫌なんですけど……。


「それと魔法合宿を私の領地でするのと、どんな関係が?」

 竜が万が一にも飛来する危険があるなら、王宮魔法師のゲイツ様や上級王宮魔法使い達が、激しい訓練をして備える必要があるのは理解できる。


 それを夏休みに私の領地でする必要は無いよね? まして、王立学園の女学生とアルーシュ王子との合宿? 意味不明だよ。


 ぶつぶつ文句を言いながら、長い手紙を読む。

 二枚目からは、エクセルシウス・ファブリカのことが書かれていた。金儲けには興味がないゲイツ様にしては、珍しいと思いながら読む。


 卵の浄化器、クズ魔石を纏めて中魔石を作る件。ここまでは、私も関係しているから、何故わざわざ書いたのか首を捻る。


「えっ! 夏休みにカザリア帝国の太陽蓄魔器を作ろうですって!」

 これは、エクセルシウス・ファブリカ案件どころではなく、国の機密案件だと思うよ。


 どうやら、あのクズ魔石を纏める巨大ナメクジのネバネバをグース教授達に採取させた見返りに、少しヒントを出したけど、全然前に進んでいないみたい。

 ゲイツ様の嘲笑う顔が浮かぶ文を読むと、少しグース教授に同情しちゃうけど、ゲイツ様もまだ作ってはいない感じ。

 

 忙しかったのかな? 竜の谷の調査もあるしね! 

 ゲイツ様は一緒に作ろうと書いているけど、私は、前世は理系じゃなかったし、太陽光発電ならぬ太陽光蓄魔器の作り方なんてわからないよ。


 三枚目は、魔法合宿についてだ。

「そう言えば、ルーシー様は三年生なのよね? 魔法クラブの新部長と言っても、半年で卒業じゃない! だから、アイラ様を鍛える必要があると言われても……魔法省で……ああ、まだ下級魔法使いの資格も取れていないから駄目なのか……」


 面倒くさいアンドリューを新部長にさせない為に、三年生のルーシーを短期部長にしたんだ。そう言えば、冬の討伐の時、ルーシーは二年生、アイラが一年生だったよね。


 ルーシーが卒業したら、アイラに新部長をしてもらいたいみたいだけど、実力不足なのか……。ルーシーも卒業後、王宮魔法使いになるには、少し足りないとなると、修業が必要なのはわかるけど……何故、私の領地で??


 長い手紙を読んで、あれこれしなくてはいけないのは、国家機密から女学生の進路まで理解はできたけど、私の領地で夏休みにしなきゃいけないことじゃないよね!


 ゲイツ様に丸め込まれないように、パーシー様を呼んで、一緒に反論して貰おう! だって、昼食に来るって最後に書いてあったんだもの。


 これ、招待もしていないのに勝手に来るのってマナー違反だけど、ゲイツ様に言っても無駄だから、パーシバルを昼食に招待して、こちらは二人体制で反論しよう!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎回面白く拝読しています。現代知識と魔法の組合せ具合が良いですね。美味しい料理も楽しみです。 [気になる点] ペイシェンスがいい加減魔法訓練の重要性に気付いて ゲイツの弟子として頑張ってほ…
[一言] 色々目的があるようですが、つまるところゲイツ氏は、お友達のペイシェンスとこの夏を楽しく過ごしたいと。 でも、飯ウマ生活への強い期待をヒシヒシと感じます! しかし、こんな感じでペイシェンスはパ…
[良い点] 更新お疲れ様です。 完全にお邪魔虫扱いなゲイツさんwwww とはいえ手紙の内容自体は見過ごせないですよね…ぶっちゃけペイシェンスが参加しないと成功し無さそうというか。竜は…溜まった課題が…
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