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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第六章 中等科二年春学期

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夏休みの計画を立てる前に

 応接室でパーシバルと二人で夏休みの計画を立てる! まぁ、メアリーが隅の椅子に座って縫い物をしながら観察しているんだけどさ。


「今年は、夏の離宮にリュミエラ王女やパリス王子、オーディン王子が招待されていると聞きました。カレン王女はどうなのかしら?」


 パーシバルも聞いているのか、笑顔で答えてくれた。

「カレン王女もパリス王子と共に招待されていますよ。それに、何故かアルーシュ王子も」


 他の王族は、ローレンス王国との縁談があるから理解できるけど、アルーシュ王子は関係ないよね?


「王立学園に留学している王族を夏の離宮に招待するのに、一方だけ除け者にするのは如何かと思われたのか、南の大陸からの魔石が欲しいからか? それとも竜の谷の情報が欲しいのかもしれませんね」


 ああ、そう言えばブロッサム公爵は、その件をとても気に病んでいたようだ。私も思い出すと不安になる。


 パーシバルがそっと肩を抱き寄せてくれる。暖かさにホッとするよ。

「竜がこちらの大陸まで飛んでくるかどうかは、わかりません。それに、私がペイシェンスを護ります」

 

 そう言いながら、クッと苦笑する。

「今のままでは、ペイシェンスの方が強いですから、修業が必要ですけどね」

 ええっ、青葉祭の優勝者に制服のまま勝ったパーシバルの方が絶対に強いよ。


「パーシー様の方が剣も扱えるから、頼りにしていますわ」

 二人でいちゃいちゃモードになったのに、メアリーの大きな咳払いで離れる。

 ここにメアリーがいるから、秘密の結婚式について話せない。何処かに行かせられないかな? キャリーなら少しぐらいの間、代われるんじゃない?


「あっ、それでは魔法合宿は無しですよね?」

 アルーシュ王子も夏の離宮に招待されているなら、合宿には来られない。

「ペイシェンス、ゲイツ様に確認したのですか?」

 パーシバルの目が厳しい。

「藪を突いて、蛇が出そうで……ええ、このままでは駄目ですよね。明日、手紙を書いて確認します」

 

 パーシバルがクビを傾げている。

「魔法授業で聞かれなかったのですが?」

「それが、青葉祭の準備で忙しいから、この二週間は休講にしてもらっているのです」


 ふぅ、とパーシバルが溜息をつく。

「怪しいですね。あのゲイツ様がそんな理由で休講? チョコレートでも要求されましたか?」


 そう言われると怪しいかも? チョコレートは、バーンズ商会で販売されているけど、相変わらず上等なチョコレートはエバが作って半分は納めている。

 その中にはゲイツ様用もあるけど、私が会う時はゲイツ様とサリンジャーさんにも持って行っているんだ。これは、授業料とご迷惑代だよ。


「私が持っていくチョコレートを要求しないゲイツ様なんて、おかしいわ!」

 休講だろうと、こちらの勝手だからと要求するのがゲイツ様だ。

「何を考えておられるのでしょう? 兎も角、魔法合宿について質問してみましょう」


 魔法合宿も、これ以上考えてもゲイツ様の意図がわからないから無駄だ。

「パーシー様、本当に歴史研究クラブの合宿をグレンジャーでしても良いのかしら?」


 これは重要だから、パーシバルの気持ちを確認しておきたい。

 濃い藍色の目を見ていると、恋する乙女の気分になるけど、気を引き締める。


「グレンジャーは、ペイシェンスの館です。そこに弟のナシウス君の友だちを招待するのは、何も問題ありません。それに、私は婚約者を信じていますからね」

 ああ、やはりパーシバルは良いな! 私の弟ラブを理解してくれている。


 ここからは、私のプランを話してみる。

「カザリア帝国の遺跡には、グレンジャーからの方が近いから、そちらを合宿所にして、私たちはハープシャーに滞在しても良いかも?」

 父親とヘンリーは、ハープシャーだよ。


「それは……二手に分かれる程の使用人がいれば名案ですが……できるのか、分かりませんね」

 そうなんだよね! 多分、歴史研究クラブのメンバーも侍従を連れてくるから、各自の面倒はみてくれると思う。ただ、その侍従達の食事なども用意しないといけないんだ。


「私達も海に近いグレンジャーに滞在しても良いのかもしれませんが、ハープシャーですることの方が多いのでは?」

 うっ、そうなんだよね。


「ええ、味噌蔵と醤油蔵を作って貰っています。春に一度、領地に戻った時に大きな樽が並んでいて驚きましたわ。管理人のモンテス氏に大豆は買い付けてもらっていますの」

 まだ、味噌も醤油も手付かずなんだ。


「それと、ソースも作るのでは?」

 ああ、忙しい夏休みになりそうな予感! パーシバルに笑われた。


 そう、仕事的にはハープシャーに滞在した方が都合が良い。でも、海の近くも魅力的なんだ。


「カザリア帝国の遺跡には、ハープシャーからも直接行く道がありますから、然程、時間的に違いはありませんよ。でも、あのグレンジャー館にも魅力は感じますよね」


 幽霊屋敷みたいだったグレンジャー館、ラドリー様のお陰でまるっきり違う館にリフォームされたんだ。

 

「まだ建築途中までしか見ていませんの。だから、一度、グレンジャーに行ってみたいですわ」


 ここから、二人でテスト前の忙しい時期だけど、なんとか領地にいけないか相談する。

 グレンジャーで滞在できるのか? 食器とかリネン類はまだ買っていないから、そちらの確認もしないといけないんだ。


「基本的にハープシャーに滞在して、海水浴する時はグレンジャーに滞在しても良いですね。使用人は、モランから借りても良さそうです。父も母も、今年は領地に行く暇はないと言っていましたから」


 それに、パーシバルはモラン伯爵領にも何日かは滞在して、管理人と話し合う必要があるみたい。伯爵が来れないなら、息子がしないとね。


「彼方の良い馬と馬の王(メアラス)を掛け合わしても良いと思っているのですが、ペイシェンスも何頭か良い雌馬を買いませんか? ハープシャーの警備体制が整うまで、モラン領で育てます」

 あっ、それは良いかも?


「宜しいのですか?」

「勿論!」

 ああ、パーシバルの騎士萌が眩しい。


 結局、この日は夏休みの計画ではなく、その前の領地行きの話し合いになった。


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― 新着の感想 ―
[一言] > 幽霊屋敷みたいだったグレンジャー館、ラドリー様のお陰でまるっきり違う館にリフォームされたんだ。 王宮専属の建築士はヘンドリック・ダドリー様だったと思います。 名前が変わっていたらすみ…
[良い点] 本日も更新ありがとうございます。 そうか、そうですよね。領地といえば劇的ビフォーアフターの楽しみが。合宿メンバーも目を回しそうないいお屋敷になっていそうですね。ああ、でも上級貴族たちだか…
[良い点] 青春ですねぇ♪
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