青葉祭の熱気球、準備だけで大変!
青葉祭の熱気球、去年の夏合宿に参加していない新メンバーは乗った事がないから、一機組み立てて試乗する事にした。
なるべく王宮から遠い運動場を借りて、熱した空気で気球を立ち上げる。これは、問題なかったんだ。
「これに乗るのですか?」
新規メンバー達がわいわい騒いでいるけど、まだ空に上げてないけど、やはり目立つね! 人を乗せないまま、少し上に上げただけなのに、あちこちから騒ぎが起こっている。
「何事なのですか!」
学園長には青葉祭の出し物は熱気球だと報告してあったと思うのに、駆けつけて来た。勿論、学生会長のパーシバルもね。
パーシバルは、去年の夏休みは途中からデーン王国にオーディン王子をお迎えに行って、カザリア帝国の遺跡や熱気球も知らなかったんだよね。
こちらにも報告しているけど、やはり実物を見て驚いたみたい。
「青葉祭の錬金術クラブの発表は熱気球なのです」
カエサル部長が、二人に説明しているけど、読んでも理解できていなかったのかも?
「これは、王宮を下に見るのでは?」
学園長の心配は、不遜ではないかって感じみたい。
「カエサル様、これは軍事活用されるのでは無いでしょうか?」
パーシバルは、そちらが心配みたい。
「確かに遠くの部隊の配置とかは偵察できるだろうが、上を飛ばすと魔法のファイアーアローとかで撃墜される。さほど、脅威だとは思わないし、王宮全体が上から見える程は高度を上げないつもりです」
今回は、乗りたい人も多いから、高度を上げる時間が足りないんだ。
でも、見ようと思えば、見えるんじゃないかな?
「ふむ、一応、陛下に許可を得ないといけないだろう。この様な物は初めてだからな」
夏休みにリチャード王子は試乗されたけどね。
「王宮魔法師のゲイツ様やリチャード王子様は試乗されています」
カエサル部長の言葉に、学園長は少し折れる。
「この気球には、他の方も試乗されたいと思われるだろう。その点を考慮しなくては!」
つまり、保護者以外の試乗希望者も増えそうだって事だね。やれやれ! まぁ、国王陛下ご夫妻は、保護者枠でも良いんだけどさ。
「もう試乗希望者が多くて、青葉祭の前日に学生を乗せようと考えているのですが……人手が足りなくて……」
学園長は、国王陛下夫妻とかを青葉祭の混雑の中に招待するよりは、前日の方が警備しやすいと提案する。
それは、確かにそうだけど、私は前日も当日も音楽クラブとグリークラブの練習と発表の時は戦力外なんだよね。
それに、料理クラブとのコラボの綿菓子の用意もあるから、あまり前日からの試乗には乗り気になれない。
でも、それは私の勝手だし、二日にしないと無理なのは明白だ。
「熱気球の操縦は、錬金術クラブのメンバーに任せますが、下の人数の整理は学生会のメンバーや協力者に手伝わせます。勿論、試乗させてやって欲しいですが」
それは、良い案だと思う。学生会も青葉祭は忙しい。だから、メンバー以外の協力者も募集する。
リチャード王子が学生会長だった二年前、私はキース王子と一緒に手伝わされたからね。
パーシバルは、騎士クラブの試合は午前中で終わるから、午後から協力して貰える様に頼んでみると約束してくれた。
騎士クラブは退部したけど、パーシバルの影響力は衰えていないみたい。
前日は、試合に出ない初等科のメンバーを人員整理に借り出してくれたんだ。
「パーシー様、ありがとうございます」
前日も当日も音楽クラブとグリークラブで、短い時間しか来られそうにないんだ。
それに、やはり料理クラブとのコラボは私がメインで連絡しなきゃいけなさそうだ。
「ペイシェンス様がいらっしゃらない時は、ハンナ様と私が協力します」
クラリッサが助けてくれるのは、とてもありがたい。エドから聞いた時は、凄く我儘な妹さんだなぁと思ったけど、気働きもできるし、夏休みは秘書のバイトとして期待している。
結局、国王陛下夫妻や他のお偉方は前日の午後から試乗されることになった。
今年も、マーガレット王女やリュミエラ王女は、裁縫のドレス作りに時間を取られているけど、ミシンで長いパーツは助手が縫ってくれるから、後は裾の始末とか、飾りぐらいだ。
それも、縫わない糊で時短している筈だけど……なかなかね。私は、青葉祭のドレス用の生地を後2枚分貰っているけど、今年で卒業なら返そうかな? でも、成長を期待して、ざっと型を取っているけど、まだ縫っていないんだ。
来年の青葉祭用と収穫祭用のドレスは要らなくなっちゃうな。
小柄な女学生なら、着られると思うけど、今年からはデザインも決まった中から選ぶし、やり難いかも?
キャメロン先生にどうしようか質問する。
「もう、ペイシェンスは修了証書を取っているから、本当は良いのだけど、できれば縫っている姿を見せた方が良いわね。布地はざっと裁断しているなら、そのまま持っていて良いわ」
そう、裁縫が苦手な女学生が多いから、私だけ楽して、綺麗なドレスを着ていると思われるのは良くない。
特に、私はパーシバルと婚約しているから、女学生の目がまだ厳しいんだ。
だから、必要は無いけど、私の空き時間、裁縫の授業に出て、綺麗なエメラルドグリーンの生地でドレスを縫った。
デザインは、今年から基本の三パターンから選ぶみたいだから、ストーンと腰までは細身で、膝下はフレアーになっているのにした。
元々、スレンダーなドレスにしようと思っていたから、少し変更するだけで良さそう。
襟ぐりや裾に少しだけ銀ビーズを刺繍して、華やかさをプラスしたよ。
「相変わらず、ペイシェンスの刺繍の腕は見事だわ」
マーガレット王女やリュミエラ王女やエリザベスに賞賛されて、少し嬉しい。
青葉祭が終わったら、一度、領地に行かなきゃね!




