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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第六章 中等科二年春学期

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小さな村も開発しなくては!

 ラドリー様、ゲイツ様、それにライトマン教授と助手、何故かグリーン氏までハープシャー館の改修に熱中している。

 私とパーシバルは、メアリーとそれの見学だよ。


「ゲイツ様は砂防ダムを作ると言われていた気がするけど?」

「ゲイツ様は、ブロックにも熱中されていましたし、建築もお好きなのでしょう」

 お昼を作って貰う為にエバも連れてきたんだけど、ケリーを指導しながら、美味しい料理を作ってくれた。


「やはりペイシェンス様の料理人は良いですね。昼からはマッドクラブを一匹狩りましょう!」

 普通のスープ、魔物の煮物、ふんわりパン、それにアップルパイ。簡単な昼食だけど、やはりエバは腕が良いな。ケリーも料理上手だけど、エバには負けるな。田舎料理としては美味しいけど、王都の料理のように洗練されてないんだ。


「ううむ、この料理には誘惑されるが、あちらは客が面倒だ」

 ノースコートの滞在客から屋敷の改装を頼まれるのに辟易としたラドリー様は、ライトマン教授やグリーン氏と共に改修が終わった兵舎に泊まると言い出したが、モンテスが慌てて自分の屋敷を提供したのだ。


「これからもお昼は、エバにケリーと一緒に作って貰うわ。それと、晩の仕込みまで」

 エバは、そこから一足先にノースコートに戻って夕食を作る。忙しそうだけど、ケリーはなかなか鍛えがいがあると嬉しそうだ。

「エバにここの料理助手を鍛えて貰うと良いですよ」

 いずれは、ケリーや料理助手を王都に呼んで半年ぐらい修業させたいな。


 今は改修工事中だけど、大きな洗濯小屋と染場があるので、錬金室と味噌小屋と醤油小屋、そしてソース工房を作りたい。

「ここで作るのですか? 領地だから工場を作るのだとばかり思っていました」

 パーシバルが首を傾げている。

「いずれは工場を作りますが、今は人手が足りません。先ずは、作り方を覚えて貰ってから、その人を責任者にしたいのです」

 

 それと、もう一つ、春が来る前にしておきたい事があるんだ。

「メロンとスイカを作る温室と味噌と醤油の材料の豆、そして麦芽糖の材料の麦ととうもろこしを栽培させたいのです」

 パーシバルもメロンとスイカは去年食べたから、それは良いと賛成する。

「温室はハープシャー館の中に作った方が良いかもしれないな」

 高級品だから、盗難防止だね。

「いずれは農家でも作らせたいですが、初めはハープシャー館で作る事になりそうですわ」

 

「それと、あの侘しい村もなんとかしなくては!」

 パーシバルも頷いている。

「いずれは騎士爵に渡す土地になるのに、あのままでは貰っても困るだろう。普通の村は三十戸程度で住人も百人はいると思うのだが、あれでは五十人を切っているかもしれない」

「モンテスさんに調べて貰っている途中ですが、放置された土地もありそうです。普通なら、次男や三男が跡取りのいない農民の土地を貰うと思うのですが……治水管理ができていなかったからですね」

 

 味噌や醤油やソースはハープシャーで。海岸のあるグレンジャーでは干物やマッドクラブの冷凍と雲丹の瓶詰め。

 でも、領地管理の基本は農業なんだよね。

「豆は、連作にも強いが、とうもろこしは水が必要だと聞いている。植える場所は、モンテスに任せた方がいい」

 勉強しなくちゃいけない事が多い。


「それと、馬の王(メアラス)がいるのだから、こちらを馬の生産地にしても良いと私は思う」

 あっ、それは考えていなかったよ。

「それって、有りなのでしょうか?」

 パーシバルは、勿論だと笑う。

「今年は、サンダーのお勧めの馬が決まっているだろうが、ハープシャーやグレンジャーで馬の生産をする事を真剣に考えた方が良い。騎士ならスレイプニルや戦馬を絶対に欲しがるからね」

 そうか、私は騎士関係に興味が無かったから、盲点になっていたね。


「馬糞は、良い肥料になりますからね!」

 パーシバルがクスクスと笑う。

「ペイシェンスは、私とは全く違う視点で物事を考えていますね」

 これって、褒められたのかな?

「食べ物は重要ですもの!」


 モンテスに温室の件を話すと、凄く喜んでくれた。

「メロンとスイカなら王都に運んでも高価だから元が取れます!」

「温室は、私が作るつもりなので、錬金釜を用意して欲しいのです」

 そこからは、ラドリー様とゲイツ様も参加して、錬金部屋の設計になった。

「こんなに大きな釜は必要ないですわ」

「いずれは冷凍車も何台も作って販売するようになると思いますよ」

 確かにね! サティスフォード子爵にも頼まれていたんだ。

「それと、小さな錬金釜も置いておけば良いのです」

 どんどんカスタマイズされていくよ。


「それと、パーシー様から馬の生産地にしてはどうかと提案されたのですが、どうでしょう?」

 意外な事に、皆は難しい顔をした。

「素晴らしい案ですが、今のハープシャーでは難しいですね。何故なら、そんな貴重な馬を警備できる兵士がいないからです。でも、数年後なら、なんとか……いや、できるようにしたいです!」

 モンテスが握り拳を作る。

「そうですね。馬の王(メアラス)の仔馬は盗難される危険が高いです。でも、ペイシェンス様にしかできない事業になるから、いずれはした方が良いですね」

 ゲイツ様も今は無理だと言う。


「うん? そこのパーシバル様はモラン伯爵家なんだろう? そこで当分は馬を育てたら良いのではないのか?」

 ラドリー様の提案に、全員が同意する。

「それなら、馬泥棒も手出しできないでしょう。ついでに、馬丁を育てて欲しいです」

 人材がいないから、モンテスは必死だね。


「教会で教育された孤児を屋敷に雇って、その中で見込みのあるものを小さな村の先生に派遣してはどうでしょうか?」

 小さな村で、読み書き計算を教える先生。良いと思うけど?

「ううむ、その先生の給料と家を用意しなくてはいけないです。それなら、王都でもう少しマシな教育を受けた先生を募集した方が良いかも」

 モンテスは、同じ給料を支払うなら、もっと教育を受けた教師が良いと言う。どっちが良いのかよくわからないよ。


「それより、農家の働き手である子どもを学校に行かせるか? そちらも考えなくてはね」

 パーシバルの方が地方について詳しいな。

「モラン伯爵領では、どうなのでしょう?」

「うちは、長年、教育を教会に任せています。小さな村には、地方ごとに小さな学校を作って、そこに教会からの教師を派遣していますが、実は集まりが良くない地区もあるのです」

 貧しい地区や交通の不便な地区では、子どもは家の手伝いで学校には通わない事が多いみたい。


「やはり、給食を配るやり方しかないかもしれませんね」

 ゲイツ様が、ふぅと溜息をつく。

「私の領地でも、子どもを働き手と考えている農民も多いのです。商人や町の住人は、勉強の必要性を理解してくれているのですがね。だから、田舎の学校では、週三回にして、お昼を食べさせているのです」

 そっか、それなら一食浮くから、来させる親も増えるかも。


「本当は、教育の重要性を理解して通わせて欲しいですが、給食目当てでも仕方ないですわ。モンテスさん、王都で教師の募集をするのはどうしたら良いのでしょう?」

 新聞広告かな? なんて思ったけど、王都の学習塾で募集するみたい。

「それと、そこで女の子には裁縫、男の子には剣術を教えたいですわ」

「それは、難しいですね」とモンテスが反対する。


「女性教師なら、裁縫は教えられそうですが、男性教師は無理です。それに剣術は女性教師には無理です」

 ふむ、そうかもね。

「でも、裁縫や刺繍ができれば、働き口にも困りませんわ。剣術は、冒険者ギルドに依頼してはいけませんか? それか、ハープシャーの兵士達が育ったら、その人達に!」

 

 それと、料理も教えたい。農家の料理って、煮る、焼くだけだとメアリーから聞いたからね。これは、先ずは読み書きができてからだよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 剣や裁縫ができると判断するのは、誰かな?資格というか、(学校卒業したという)免状になると思うけど 糸紡ぎや、機織りをしたら、内職代を出す 剣で、魔獣討伐をしたら、報酬を出す 習うより慣れ…
[一言] 中世は、鶏の飼い方自体、違うから、確実にいつ生まれた卵か、確信して買うのが無理、なんですねえ
[良い点] ハープシャーやグレンジャーで馬の生産を考える。 ノースコートは防衛拠点で騎士も多いのでお得意様になりそう。 [気になる点] そういえば、第468部分で女将さんが魚介類のマリネをだしてくれ…
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