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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第六章 中等科二年春学期

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餌付け禁止!

 ラドリー様との顔合わせを兼ねた昼食会。これってゲイツ様がエバの料理を食べたいだけでは? と疑問だったけど、如何やらラドリー様も食に拘りがある人だったみたい。


 あれこれ迷惑も掛けられているけど、面倒も見て貰っているから、リヴァイアサンの討伐遠征に行く前のゲイツ様の好物を中心にエバに作って貰ったんだけど、失敗だったな。


「前菜はツナと冬野菜のテリーヌです」

 エバが切り口が綺麗に見えるように配置したテリーヌ。見た目も素晴らしいけど、味も抜群。

「なかなか良い料理人を雇っておられるようですね」

 父親は、穏やかに頷いていたけど、何となく嫌な予感。ゲイツ様が料金を心配している私に食事で大丈夫とか言っていたような?

 もしかして、ゲイツ様の好物を集めたメニューは拙かったのかも?


 なんて考えているうちに、メニューは進み、2種類目の前菜は雲丹の瓶詰めを使ったミニパスタ。

「これをお代わりするべきか悩みます」

 毎回、何が出るのか騒ぐので、お品書きを書いてテーブルに置いてある。

「ふむ、今回は私の好物が多いので、これはお代わりしないでおきましょう」

 

 ラドリー様はパスタは初めてだったみたいだけど、凄く気に入ったようだ。

「生の雲丹とはまた違った風味です」

 生より濃い味がする気がするよ。

「スープは、ゲイツ様がお好きなキャベツスープにしました」

 ラドリー様は、キャベツスープと書いてあるのを見て、少し眉を顰めている。

「ゲイツ様がキャベツスープが好きだとは知りませんでした」

 私は好きだけど、冬の討伐の時も聞くだけで嫌がる人も多かったね。

「ははは、ペイシェンス様のキャベツスープだけが好きなのですよ。まぁ、食べてみなさい」


 パーシバルや私の家族は何回もキャベツスープを食べた事があるので、普通にしていたが、ゲイツ様とラドリー様は、少しうるさかったね。

「私の知っているキャベツスープとは違う! だが、キャベツだよな」

 スプーンでキャベツを掬って確認している。

「ペイシェンス様の料理は、キャベツスープでも美味しいのです」

 ゲイツ様がすごく自慢しているけど、自分が作ったわけでも無いのにね。

 まぁ、激励会になって良かったのかな?


 魚のメインはマッドクラブのグラタンだよ。これもゲイツ様の好物で、表面のチーズの焦げたところがカリッとしているし、ベシャメルソースのとろりとしたのと蟹がすごく美味しい。

「うん? このベシャメルソース、何かこくがあるのだが……マッドクラブの味だけではないな」

 ラドリー様は、ゲイツ様のように一気に食べたりしないで、一口ずつ確認しながら食べている。白味噌が隠し味なのがわかるかな?


 口直しのいちごのシャーベットの後は、すき焼きかしゃぶしゃぶか迷ったけど、今日はしゃぶしゃぶ。

 すき焼きにするなら、他の物を少しずつにしなきゃ、お腹いっぱいになっちゃうからね。


「このところ蟹鍋が多かったから、しゃぶしゃぶも嬉しいですが……雑炊も食べたかったですね」

 肉をしゃぶしゃぶしながら、ゲイツ様が文句を言う。

 ラドリー様と父親にはジョージとワイヤットが給仕しているけど、弟達やパーシバルやゲイツ様は慣れたもので自分でトングを持ってしゃぶしゃぶしているよ。


「濃厚なソースとあっさりソース、どちらも美味しいです」

 ゲイツ様の食べる勢いが止まらない。あっという間に一皿食べたよ。

 まぁ、弟達も二皿目なんだけどさ。


 ラドリー様は、ジョージに給仕して貰いながら、濃厚胡桃のソースで一枚。そして、あっさりの柚子ポン酢で一枚。

「ふむ、濃厚なソースも良いが、あっさりのソースの風味も良い」

 ゲイツ様よりは落ち着いている。なんて思ったのだけど、間違いだった。

「あああ、今度はどちらにするべきなのか! 悩む!」

 一枚ごとに大騒ぎし始めたのだ。


「ラドリー殿、そんなに悩む時間が勿体ないですよ。次々と食べていかなくては!」

 ゲイツ様は三皿目だからね。お腹壊さないかな? 私は一皿で十分だから、締めのうどんを少し茹でて貰っている。

 

「その締めは美味しそうですね!」

 パーシバルも二皿でおしまいにして、締めのうどんにする。父親もだよ。

 弟達とゲイツ様は四皿、ラドリー様は三皿食べた。


「鍋物の締めは雑炊だと思っていましたが、この麺はスープを吸って美味しいですね。それに、この調味料とも合っています!」

 今日のうどんは、少し薄くてきしめん風なんだ。だから、スープを吸いやすい。

 それと、塩胡椒、それに少しのポン酢で味付けして、浅葱を振ってある。ズルズルと啜れないのが残念だよ。


 ラドリー様は、一枚、一枚、ゆっくりと食べていたから、締めになるのも遅かったけど、満足そうで良かった。少し、猫がニヤリとした感じだ。

「ゲイツ様が、グレンジャー家の料理は美味しいと言われていたのですが、ここまでだとは思っていませんでした。カルディナ帝国風を取り入れていますが、それだけではないですね」

 カルディナ帝国風だけではなく、前世の日本風も取り入れているからね。なかなか鋭いな。


「そんな事より、デザートを食べてから驚いた方が良いですよ」

 何故、ゲイツ様が自慢するのか? まぁ、良いけどさ。

 ワイヤットがデザートをワゴンで運んでくる。ゲイツ様の好きなデザートをエバと相談しても絞れきれなかったから、二個作って貰ったんだ。


「いちごのケーキとチョコレートケーキです。チョコレートケーキには、ブランデーが入っています」

 つまり、弟達にはお勧めできないんだよね。

 ゲイツ様は、目が落ち着かない。どうせ二つとも食べるのにね。

「薄く切って貰いますわ」

 それが正解だと思うけど、父親以外は普通の1ピースだね。

 ヘンリーはいちごの方を大きめに切って貰っているけど、ナシウスはチョコレートの方も少しだけ食べたいみたい。


「ううう、いちごのケーキも美味しいですが、チョコレートケーキ、胡桃とブランデーが美味しいです!」

 肉も四皿食べたのに、よく食べるね。

「ううむ、このところ砂糖ザリザリでないケーキも少しずつ出てきていますが、これほどふんわりとして、口の中に入れたら消えてなくなるようなケーキは、初めてです!」

 あれっ、ここまでは食通の貴族っぽさをキープしていたラドリー様が崩れてきたような?


「ふふふん、チョコレートケーキを食べてから、感想を言った方が良いですよ」

 チョコレートケーキ、なかなか良い感じなんだよね。ブランデー、ナシウス大丈夫かな? なんとも無さそうだけど、まだ十歳だから気をつけた方が良いよ。


「コーヒーを貰おう」

 父親は、チョコレートケーキとコーヒーにしたみたい。私は、薄く切って貰ったから、紅茶で良いかな?


「ペイシェンス様! このチョコレートケーキのレシピをお願いします。あと、いちごのケーキのも!」

 ゲイツ様2号の予感! 勿論、レシピはあげるけどね。

「もう入りません。残りは持って帰りたいです」

 夜のデザート、そして残りは皆で食べるんだよ。


「ゲイツ様には、日持ちのするブランデーケーキ、そしてソース、戦闘の合間にも食べられる携帯食をお渡ししますわ」

 ナッツ、ドライフルーツをヌガーで固めてチョコレートコーティングしたチョコバー。携帯食に良いと思うんだ。

 

「それ、私にもいただけないでしょうか? ハープシャーでの工事中に食べたいです」

 いや、ちゃんと食事は出す予定だけど……まぁ、後で届けよう。今あるのはサリンジャーさんに持っていって貰う予定だからね。


「やはり、ハープシャー館とグレンジャー館の改修をやることになりましたね」

 ふふふん、と愉快そうに笑うゲイツ様。

「ええ、ペイシェンス様とは仲良くしたいですから、材料費以外は無料で結構ですよ。お友達価格です!」

 ゲイツ様が「そのくらいでペイシェンス様とお友達になれるだなんて、烏滸がましい!」とか騒いでいるけど、半地下の使用人のお風呂とかチェックしてくれるラドリー様に改修は任せても良さそう。


 ただ、パーシバルが耳元で「これ以上の餌付けはしないで下さい」と囁いた。それは、私も同感だよ。

 

 

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゲイツ様のノリが終始「自分が見つけたお気に入りの店を友達にオススメしつつもドヤ顔で自慢もする」ムーヴで微笑ましい だからそんなに邪険にしなくても…と思ってたけどそれ全部準備させられるのが自…
[一言] 工事関係者が、外部からきたら、宿泊や、買い物で、地域に金が入るはずなんだけどね…
[気になる点] > 「ふむ、今回は私の好物が多いので > 、これはお代わりしないでおきましょう」 ここに不要な改行が入ってしまっています
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