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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第六章 中等科二年春学期
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クラブ紹介と三回目体験コーナー

「コーラスクラブですか……」

 あまり良いイメージはないけど、パーシバルから少し改善策を考えて欲しいと頼まれた。

 メンバーは去年の初等科三人が中等科になっただけみたい。本当なら、春学期は中等科二年が部長なのにね。

「マーガレット様、コーラスクラブだった学生ってご存知ですか?」

 私は飛び級して中等科二年生になったから、あまり知らないんだ。

「知っているけど、退部したそうよ」

 まぁ、そうだよね。退部するかグリークラブに移ったと思うもの。


「何? もしかしてコーラスクラブの立て直しに手を貸すの?」

「いいえ、もう手一杯ですから」

 マーガレット王女も古臭い歌や貴族至上主義っぽい独唱者の選び方とか気に入らなかったけど、コーラスクラブが潰れるのは、少しだけ気に掛かっているみたい。

「お母様も、昔のコーラスクラブは素敵だったと仰るのよ。周りの貴婦人達も出身者が多いみたいだし、このところ少女歌劇団の話し合いをするメンバーと被っているの」

 モラン伯爵夫人だけでなく、バーンズ公爵夫人もコーラスクラブだったみたい。


 ふぅ、じんわりと圧を感じるよ。

「春らしい曲を提供するぐらいなら、手助けしたいですわ」

 マーガレット王女は、そのくらいなら音楽クラブの新曲かリュートを練習しなさいと言ったけど、こちらも王妃様からやんわりとした圧を受けたみたいだ。

「ペイシェンスは関わらない方が良いから、曲ができたら私が渡すわ」


 それと、カレン王女は作曲は無理だから、グリークラブに参加してみたのだけど、ダンスしながらっていうのも苦手っぽいんだ。

 確かにダンスしながら歌うのって体力要りそう。

「カレン様は、本当はコーラスクラブが良い感じなのよね。彼女が入るなら、従姉妹だからリュミエラ様も付き合うと言われていたわ」

 二人が入れば五人以上になるし、廃部の危機は免れるよね。それに二人も王女様が入るなら、他の女学生もふえそう。


「リュミエラ様なら実力主義で、新しい歌も選曲しそうだわ」

「ただ、男子学生がいないと、声の幅が……」

 パンと手を叩いてマーガレット王女が笑う。

「お母様が考えておられる少女歌劇団よ! コーラスクラブで、その歌を歌えば良いのよ」

 ふぅ、それは面白そうだけど、近づかないようにしよう。

「私は、今回限りにしますわ。領地の治水工事をしないと洪水になりそうですから」

 マーガレット王女も、アルバートに丸投げにしようと笑う。

「少女歌劇団もアルバートが言い出したのですもの!」

 ははは、そうして欲しい。見には行きたいけど、強烈な個性のカルメン・シーターとはあまり関わりたくないんだ。


 春の歌と言えば思い出すのは「野薔薇」と「早春賦」かな? 春は名のみの〜って歌だよ。歌詞も簡単につけて、マーガレット王女に渡す。

 カレン王女は、グリークラブに仮入部しているけど、コーラスクラブが持ち直すようなら、そちらに移るか掛け持ちしたいそうだ。

 まぁ、クラブ紹介を見て決めても良いよね。


 ナシウスは、読書クラブと歴史クラブと錬金術クラブの掛け持ちだ。

 読書クラブは、月2しかないから、歴史クラブとの掛け持ちとも言えるね。歴史クラブは火曜と木曜だから、他の日は錬金術クラブに来ている。

 クラブ紹介の日も、読書クラブ、歴史クラブは中等科の学生が発表をするので、錬金術クラブの体験コーナーの準備を手伝ってくれていた。


「ナシウスはクラブ紹介を見なくて良いの?」

 一年生の殆どが講堂に集まっている。

「私は、もう三個もクラブに所属していますから」

 まぁ、そうだよね! 今回も事前申し込みだけで百人を超えているから、大教室で体験コーナーをする。

 

 予定では三回目の体験コーナーは、魔導灯を作って、ご褒美をファイルにするはずだったけど、色とりどりのファイルを作って、ご褒美には綿菓子を出すことになった。

「ご褒美なんかいらないんじゃないか?」

 ベンジャミンは、そう言うけどさ。

「綿菓子の香料を作って貰ったのです。だから色と香料を変えて、少し味が違う感じがするのを試したくて」

 シロップの味は一緒だ。香りが違うだけと、前世のかき氷シロップのメーカーさんが言っていたけど、香りが違うと別な味に感じるよね。

 今回は、エバ達に協力して貰って、赤はいちご、黄色は柚子、緑はミント。この3色だけだけど、良い感じなんだよね。


「あっ、父上が強力な助っ人に感謝していたぞ」

 植物学のリンネル教授の助手達がバーンズ公爵領とプリースト侯爵領でトレントの討伐と調査をしてくれているみたい。行動が速いね!

「見た目では分かり難いのだが、片っ端から討伐して、ゆっくりと調査しているようだ」

 寒い中、ご苦労様だよ。

「甘味料が取れたら、嬉しいですよね!」

 麦芽糖も色々な穀物で試してみよう! 米は南部しか作ってないし、グレンジャーで作るのは数年後になりそうだもの。お粥、つまり澱粉になる物なら、とうもろこしや芋でも良いんじゃないかな?


 教室には、ファイルの材料を揃えてある。色は、ファイル一冊分の分量になるよう、絵の具を小分けして配置済みだ。

「シールは、描くより、貼るだけが多いかもな」

 新入部員と一緒に、色々なシールも作ってあるし、自分の紋章を入れたい人は描ける様に準備万端だよ。


「お姉様は、グレンジャーの紋章では無いのですね」

 ナシウスが私の見本のファイルを見て不思議そうな顔をする。

「ええ、これは私の印なのです。いちごの花なのよ」

 もう婚約者もいるし、秋には社交界デビューするから、いちごは省いてある。

「そうか! 女の子は結婚するから紋章というより、自分の印もありだよな」

 ベンジャミンは、あっけらかんと言うけど、ナシウスは少し寂しそうだ。


「私もバリー家の紋章ではなく、自分の印を決めたいです」

 ナシウスと一緒に二年生に飛び級したクラリッサは、まだ印を決めていないみたい。

「ええ、そうしたら良いわ。制服の見返しに刺繍したり、ハンカチに刺繍しても可愛いもの」

 エドが少し心配そうだ。

「歯車とかはやめておいた方が良いよ」

 えっ、そっちか! クラリッサは、何を印にするのかな?

「エド、私は錬金釜にしようと思っているの……駄目かしら?」

 知り合いとダブらなければ良いのだから、絶対にダブりそうにはないけど?

「もう少し可愛い物の方が良いかもね」


「クラリスという芯がピンクで縁が白い薔薇から名前を取ったのだから、それを印にしたらいいんじゃない?」

 エドがアドバイスするけど、クラリッサは不満そう。

「エドは古代語の富、幸せ、豊かさを意味する名前だから良いわよね。私は、たまたま出産のお祝いにもらった花だもん」

 うっ、それは確かに名前を付けるのに格差があるかも?


「それなら、ペイシェンスが一番大変そうな名前だぞ。忍耐だなんて、私なら娘につけないな」

 ベンジャミン、酷い! でも、私もそう思うよ。父親のネーミングセンスを疑うね。

「ナシウスはどういう意味なのでしょう?」

 えっ、知らなかったの?

「ナシ(癒し)とコリウス(健康)を組み合わせているとお母様に聞いたわ」

 ナシウスが嬉しそうだ! 癒しとか、健康とか良いよね! 何故、私だけ忍耐なんだろう?

「では、ヘンリーの意味は?」

「ヘンリーは『新しい家の支配者』つまり新しく家を起こす子に相応しい名前ね」


 ベンジャミンも感心している。

「ペイシェンスは流石に博学だな。なぁ、ベンジャミンの意味は?」

 ああ、ちょっと言いにくいな。

「えっ、悪い意味なのか?」

「違うわ。ベンジャミンは最も愛される末っ子の男の子につける名前なの。長男だから、ちょっと不思議に思って」

 ベンジャミンが少し意味深に照れて笑う。

「母上は何回か流産されて、私が最後のチャンスだと言われていたのだ。だから、最後の子で間違いじゃないが、最愛の子と言われると恥ずかしいな」

 サラッと言ったけど、それは大変だったんだね。

 因みに、カエサルの意味は「優れた者」だよ。こちらでは皇帝ではないからね。パーシバルは「谷を駆ける者」英雄の名前みたい。こちらには円卓の騎士はいない。

 

 そんなお喋りをしていたら、次々と体験コーナーを申し込んだ学生がやってきた。カエサル部長とアーサーは講堂だから、私達で応対するよ。

 何とはなく、女学生には私とクラリッサが説明する事が多い。手芸クラブや料理クラブの知り合いも多いからね。

 皆、絵の具で好みの色のネバネバを作って、そこからは私達が手伝ってファイルにする。

「ああ、簡単にできるのね! でも、殆どペイシェンス様がやって下さった様だわ」

「何度かすれば、自分だけでもできますよ」

 やはり女学生は、ピンクや赤やオレンジが多い。意外と、シール作りにチャレンジする学生も多かった。

「自分だけのファイル! 勉強するテンションも上がるわ!」

 

「ご褒美の綿菓子は、3色だけなの。まだ香料を作れてないのよ」

 料理クラブのメンバーは、各自違う色にして、食べ比べている。

「いちごが一番美味しいわ! ミントは好き嫌いありそう。黄色はレモンじゃないのね」

 ハンナは、鋭いね。

「ええ、今度、料理クラブで他の香料も作って欲しいわ」と頼んでおく。

 

 パリス王子やアルーシュ王子もやってきて、ファイルを作ったよ。

「なるべく自分でしたいが、少しコツを教えて欲しい」

 パリス王子は、かなり錬金術に興味があるみたい。入部したら、少しやり難いな。

「このファイル、なかなか優れ物だな。国に送ろうと思う」

 アルーシュ王子は、書類仕事に良さそうだと目をつけた。

「バーンズ商会で購入できますわ」と宣伝しておいたよ。

 

 音楽クラブとコーラスクラブの発表を見てから、マーガレット王女がリュミエラ王女やジェーン王女、カレン王女、そして学友達とやってきた。

「ペイシェンス! あの曲、コーラスクラブにあげるなんて、勿体無いわ! まぁ、アルバートが楽譜を売ると言っていたから、かなり売れそうよ」

 コーラスクラブの発表は、なかなか評判が良かったみたい。カレン王女は、入部するそうだ。なんと、リュミエラ王女が部長になりそうなんだってさ。まぁ、中等科二年生はいないから、年功序列だとそうなるよね。


 三回目の体験コーナーで、なんと初等科二年生のイアン・フレミングと、中等科一年生のジェスマイヤ・ホワイトが入部してくれたんだ。カエサル部長が本当に嬉しそうだったよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 500話 おめでとうございます♪ 1年でこのスピードでかきあげていただき ファンとしては ありがたい事です。 これからも楽しく読ませていただきます(^^)
[一言] 祝500
[一言] 500話おめでとうございます!
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