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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第五章 忙しい冬休み
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子爵家として

 サティスフォード子爵から、最低限しなくてはいけないことを訊く。

「ペイシェンス様もご存知だとは思いますが、領地を拝領した限り、そこの魔物を討伐するのは、最低限しなくてはいけない事です」

 それは、前にも訊いた事がある。特に街道の魔物を放置していると、陛下に報告が上がり、お取り潰しもあり得るってね。

「それは、兵士を雇わないといけないという事ですか?」

 初歩の初歩から質問する。

「いずれは、そうしなくてはいけませんが、今も冒険者ギルドで魔物討伐はされているので、急がなくても良いです。その前に、配下の騎士を雇わないといけません」

 パーシバルも横で頷いている。配下の騎士かぁ。


「モラン伯爵領の騎士の次男以下にも声を掛けます。サティスフォード子爵にもお願いします」

 それは、サティスフォード子爵も心掛けておくと言ってくれた。他の親戚も声を掛けてくれるみたい。

「何人ぐらいの騎士を雇えば良いのでしょう?」

 サティスフォード子爵は八人雇っていると言う。確か、シャーロッテ伯母様は七人と言っていたと思う。

「サティスフォードは港がありますから、そこの管理も必要なのです。普通の子爵家は、四人程度の所もあります。いざ、有事となった時、子爵家は千人の部隊を派遣しないといけませんから、それに準じて騎士が必要になります」


 ここら辺の事情が全く分からない。パーシバルは、騎士コースを修了しているから、補足説明してくれる。

「これまでの慣例では、公爵家が旅団を纏めます。その下に侯爵家が二軒付き、その下に伯爵家が四軒付きます。子爵家は八軒になりますね。男爵家以下は近くの伯爵家の寄子になります」

 それぞれの爵位によって出す人数が決まっている。

「でも、これは基本的な決め方で、実際はソニア王国との小競り合いの場合、東の貴族が主に戦いました」

 それに、侯爵家が旅団長になる事もあるみたい。先代のカッパフィールド侯爵は、東の領主を纏めたそうだ。


「千人……ちょっと無理かもしれません」

 寂れたグレンジャーとハープシャーの人口は二万ちょっとだ。その半分は女性だし、子どもと年寄りを除いたら、ほぼ働き盛りの男性を全員徴兵することになる。

「初めからは無理ですし、冒険者を雇う事もあります。傭兵も雇えば何とかなりますよ」

 ローレンス王国の上級貴族は百人ちょっと、王立学園にいる子息や令嬢は、カエサルみたいに爵位持ち以外は含まれないからだ。

 男爵家からグッと人数は増えて準男爵家を含めて三百軒、騎士爵は八百軒あるが一代限りだ。

「土地持ち騎士爵の次男以下は、文官になるか、騎士団に所属しますが、基本は土地持ちになるのを希望していますから、ペイシェンス様が土地を与えるなら、希望者は多いと思います。ただ、信頼できる騎士を選ぶのが大変なのです」

 それは、そうだと思う。日頃から、兵士の管理をしてもらわないといけないのだ。

「初めは四人ぐらいにした方が良いでしょう。それと、最初から土地を与えるのではなく、給与にしても良いのですよ。今のハープシャーとグレンジャーは管理が行き届いていませんから、貰っても困るかもしれません」

 パーシバルは「モラン伯爵家領と込み込みにして貰えます」と励ましてくれる。結婚したら、一緒にしても良いのかもしれない。

「それに、ノースコート伯爵家は兵士数が多いですから、そちらからも融通して貰えますよ」

 親戚が近くにいる利点は大きそう。


 ふぅ、領地を管理するのに、軍事力も必要だとは考えていたけど、有事に対応することまでは思っていなかった。

「領民の教育や訓練はどうしているのですか?」

 どうもハープシャーもグレンジャーも教会で少し子どもに字を教えているだけみたいなんだよね。

「サティスフォードでは、七歳から十歳までの子どもを学校に通わせています。とは言っても、領都以外は、一年も通えば御の字なのですけどね」

 へぇ、でも良いかも?

「モラン伯爵領でも、同じ感じですよ。領都の優秀な子を王都で勉強させ、その子を雇ったり、領地の先生として派遣しています。十数年前には王立学園に入学した子もいたそうですよ」

 あっ、それは良いシステムだと思う。

「文字が読めたり、計算ができないと良い職業にもつけません。最低限の教育は必要です」

 サティスフォード子爵の言葉で、今は教会任せなのだと困惑する。

「教会が教育と孤児院も兼ねているのです。王都では、そんな事はなかったので、どうしたら良いのか分からなくて」

「田舎では多いですよ。私の所でも孤児院は教会が運営しています。勿論、領主として援助はしていますが、港町なので孤児が多いのです」

 ああ、海難事故もあるだろうし、夜の街も華やかそうだった。普通の田舎の町よりも孤児は多そう。

「そうですね。領主になったのだから、教会に挨拶をしに行かなくてはいけないでしょう」

 パーシバルも教会というか、あの偽手紙事件でモンタギュー司教には悪感情を持っている。でも、仕方ないなって口調になってしまう。

「漁師は信心深いから、王都のように教会を無視しては生活できませんよ」

 サティスフォード子爵に忠告される。

「グレンジャー家は、あまり信心深くなかったから、教会とは付き合いがありません。私も母の葬式と能力判定で教会に行っただけなのです」

 少し驚かれた。ラシーヌも心配そうな顔をする。

「ペイシェンス様、田舎の暮らしでは教会は無視できません。上手く関係を築かないと困りますよ」

 それは、そうかもしれない。グレンジャー家は法衣貴族で、領民はいなかったからね。


 話が長くなったので、そろそろお暇する。

 玄関まで見送ってくれたラシーヌが封筒をそっと手渡してくれた。

「これは、子爵に陞爵されたお祝いですわ」

 貰って良いものかな? パーシバルに確認したけど、微笑んで頷いている。

「それと、雪狼(ニックスルプス)の毛皮、ありがとうございます。来年の社交界で着たいと思いますわ」

 今年は間に合わなかったのかな? もっと早く渡せば良かったのかも?

「ふふふ、今年は叔母様方に華を持たせないといけませんもの」

 ああ、ラシーヌは少し待ってからの方が良いと考えたのだ。まだ若いからね。

「ラシーヌ様、アンジェラのドレスも作っても良いですか?」

 私のドレスを見直して、ラシーヌは許可を出した。

「ええ、あの時はお客様の前で我儘を言ったから、諌めましたが、ペイシェンス様のドレスはとても素敵ですわ。今度、アンジェラにも作ってやって下さい」

 馬車に乗って、パーシバルと屋敷に帰る。

「やっていけるかしら?」

 不安になっちゃった。

「大丈夫ですよ。相談する相手もいっぱいいますし、管理人に任せる所は任せたら良いのです」

 パーシバルは、いつも私を励ましてくれるね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 有事となった時、子爵家は千人の部隊を派遣しないといけませんから 中世風だと、2桁くらい多くない?皆さん破産しない?
[一言] 庶民視点だと、王都学園のCクラスは、卒業後の仕事が内定していたらいいけど、そうじゃなければ、無駄骨になる可能性があるのではないだろうか?
[一言] ペイシェンスたちの想定する子爵領に必要十分程度の備えは、国にとっても金の鶏であるペイシェンスを勧誘、誘拐、暗殺などを狙うかもしれない仮想敵からペイシェンスを守れるのでしょうか ゲイツ様がいつ…
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