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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第五章 忙しい冬休み
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入学祝い

 ナシウスとファイルを作った後、文房具を渡した。

「時計は、名前を刻んで貰ってから渡すわ。他の用意はできているかしら?」

 ナシウスの従僕はマシューだけど、家政婦のミッチャム夫人やメアリーも付いているから、大丈夫だとは思う。

「ええ、ただ(シャドー)はどうしたら良いのでしょうか?」

 それは、全く分からないから、パーシバルに任せる。

「入学式までに学園の馬房に預ければ良いのですよ。あっ、世話を頼むなら、少しお金が掛かります」

 そのくらいなら大丈夫だと思う。借金問題も解決して、過剰な金利も返還された。やっと法衣貴族としての生活が送れるようになった。

 それに父親のロマノ大学長の俸給があるから、普通の貴族並みの生活もできそうなんだ!


 ナシウスの入学準備は大丈夫そうなので、昼まで応接室でこれからのスケジュール管理をパーシバルと話し合う。

 そろそろ、新年会ラッシュが終わって、訪問先からの手紙が舞い込んでいるんだよね。

「先ずは、サティスフォード子爵、ここでアンジェラに入学祝いのファイルを渡すわ」

 もしかしたら買っているかもしれないけど、黒よりピンクの方が可愛いからね。

「サティスフォード子爵に冷凍車を貸す代わりに、領地の管理について教えて貰ってはどうでしょう?」

 同じ子爵領だからね。あちらには港があるけど、海沿いの領地の注意点とか聞きたいな。

「ええ、良い考えですわ」

 それと、ラシーヌにはドレスのデザインも見て欲しい。やっと、私のドレスの一枚は縫い終わったんだ。後の二枚も仮縫いは終わったから、楽しみ!


「ノースコート伯爵とのお茶会は、私も同席して、これから何度か館にお邪魔する許可を得ようと思っています」

 ハープシャーの館ができるまでは、ノースコート伯爵の館を使わせて貰うしかない。

「はやくハープシャーの館を改修しなくてはいけませんわね」

 でも、ハープシャーの館にはパーシバルは泊まらないのだけどね。独身の二人が同じ館に保護者なしで泊まるのは駄目なんだってさ。

 だから、パーシバルはモラン伯爵館からになるけど、ノースコートよりは近いかな?

「ノースコート伯爵は、何をペイシェンスと話したいのでしょうか?」

 まさか扉の開閉係じゃないとは思うけど?

「パーシー様は、遺跡の地下通路を見ていないのですよね。一度、見学しても良いかも?」

「それは、楽しみです。他の人から聞いて、興味深く感じていましたから」

 飛行艇の件は内緒なのかな? これは、後でゲイツ様に訊いておこう。


「本当は、シャーロッテ伯母様にも頼みたい事があるので、一度、領地に行きたいと思っていますの」

 柄物が少ないんだよ。南の大陸の派手な柄は、ローレンス王国の好みじゃないけど、小さな花柄とか、水玉模様とか、ペイズリー柄なら、型紙を作ればできそう。

「マックスウェル子爵領は、王都の東側ですから、これまで行った事がないですね」

「そうなんです。でも、モンテラシード伯爵領も東北部で湖が綺麗だと言われていましたわ」

 それに、母親の実家のケープコット伯爵領も東側なんだよね。これは、ベネッセ侯爵夫人が間に入るとかゲイツ様が言っていたけど、どうなるかは分からないよ。


「リチャード王子と王妃様は、あちらからの御沙汰があるまで保留ですが、バーンズ公爵夫人からもお茶会のお誘いがありますね。美麗様もだし、重ならないといいのですが」

 王妃様は大丈夫だと思う。何故か、いつも空いている時間を察知されているから。


「リチャード王子には、グレアムとメアリーの件を報告しなくては!」

 パーシバルが驚いている。話していなかったかも?

「グレアムは、リチャード王子が派遣してくれた護衛なのです。だから、護衛の任を解いてもらって、グレンジャー家の使用人にと思っています」

「知りませんでした」とがっくりするパーシバル。

「ごめんなさい。話したとばかり思っていましたわ」

「ああ、だからグレアムはいつでもペイシェンスの側にいたのですね。サティスフォード領に行った時も付いて来ていたし!」

 割とあからさまだったけど、言われないと気づかないよね。


「メアリーはペイシェンスの侍女なのに手放すのですか?」

「まさか! 結婚しても侍女を続けて貰いますわ」

 パーシバルは、くすくす笑う。

「ペイシェンスらしいです」

 そうなのかな?

「普通は、侍女は結婚したら辞めますよ。でも、本人同士がそれで良いのなら、良いのでしょう」

 メアリー以外の侍女なんて考えた事がなかったけど、赤ちゃんができたら少しの間は無理になるかも?

「産休の間の侍女も育てておかないといけないのね」

 キャリーは、良い子だけど、まだ少し頼りない。

「そういうことは、家政婦のミッチャム夫人に任せたら良いのですよ」

 その通りだね。何もかも自分でしていたら、大変だもの。


「今日の昼からはサティスフォード子爵のお屋敷に行きますけど、パーシー様はどうされます?」

 にっこりと笑って「一緒に行きますよ」と答えてくれる。

 冬休みでも、馬の王(メアラス)の運動で早朝から来てくれるし、こうして外出にも同行してくれる。嬉しいな!


 昼食後、私もパーシバルも着替える。パーシバルは屋敷に帰って着替えてくる。私は、出来上がったばかりの、赤色に黒の格子模様のドレスだよ。

 ただ、これにアイスブルーのコートが似合わないんだよね。と悩んでいたら、黒のコートをメアリーが差し出す。

「えっ、黒のコートなんか頼んでいないけど?」

「大人の女性は、常に黒のドレスとコートは用意しておく物なのです」

 つまり、お葬式用だね。でも、丈も長くて良かった。

 赤の格子柄のドレスは、少し丈を長くしたんだ。コートの裾からドレスがちょっと出ているのって格好悪いからね。

 靴は黒かな? と思っていたけど、鮮やかな赤で作ってある。

「これは?」と尋ねたら「皮を持ち込んでバーンズ商会で作って貰いました」とメアリーが少し得意そうな顔で答えた。

「ヒールが少しあるのね!」

 いつもは三センチヒールだけど、五センチヒールにしてくれている。こういう所が、メアリーはしっかりと私の意図を汲んでくれているんだよ!


「パーシバル様がいらっしゃいました」

 キャリーが呼びに来てくれたので、唇にリップクリームをつけて、準備完了!

「ペイシェンス、とても綺麗だよ」

 パーシバルに褒めて貰えたって事は、このドレスで変じゃないんだよね。

 黒のコートを着て、馬車に乗る。手土産とアンジェラの入学祝いは、メアリーが持っている。私は、小さな赤のバッグだけだよ。これもカルディナ街で買った赤の生地に、今回は透明なビーズで花を刺繍している。一見、キラキラしているだけだけど、よく見たら、花だとわかる感じ。


「ペイシェンス様、パーシバル様、ようこそ」

 サティスフォード子爵とラシーヌに出迎えられた。

「お招きありがとうございます」

 パーシバルも私も挨拶して、応接室に向かう。アンジェラも一緒だと良かったけど、初めはいないみたい。

「ペイシェンス様、子爵に陞爵おめでとうございます」

 サティスフォード子爵にお祝いを言われた。あれ、あれから会ってなかったんだね。伯母様たちとは会っていたから、忘れていたよ。

「ありがとうございます。でも、何も知らないのでご指導ご鞭撻お願いします」

 これ、本音だよ。全く知らない事ばかりだからね。

「それで、どこの領地に……冷凍されたマッドクラブを頂きましたから、海岸沿いだとは考えていましたが」

「グレンジャーとハープシャーですわ」

 サティスフォード子爵の目がキラリと光る。

「グレンジャー海岸のマッドクラブを冷凍にして運ばれたのですね」

「ええ、冷凍車を作りましたの。でも、学園が始まったら、領地には行けませんから、サティスフォード子爵にお貸ししようかと考えています」

 わっ、凄く嬉しそう!

「それはありがたいです! バーンズ商会に冷凍庫の大きなのを注文しましたが、あまり大きくはできないみたいで、考え直していたのです。でも、それはどうやって作られたのですか?」

「私のは、ゲイツ様が作って下さいましたわ」

 サティスフォード子爵が残念そうに肩を落とす。

「それは……無理ですね」

「作り方は分かりましたから、時間が出来たら作りますわ。それまでは、私の冷凍車をレンタルします」

 馬車のレンタルがあるぐらいだから、冷凍車のレンタルだってありだよね。

「作れるのですか……それはありがたいですが……ペイシェンス様は、初代子爵に叙されるぐらいだから、規格外なのはわかっていましたが、凄すぎます」

 あらら、なんか誉め殺しかな?


「まぁ、それよりもノースコートの遺跡が発表されて、リリアナ様がペイシェンス様に相談したいと仰っていたわ」

 ラシーヌが話題を変える。

「ええ、前から一度屋敷を訪ねて欲しいと伯母様からも言われています。何かしら?」

「きっと、ペイシェンス様のアイデアが欲しいのだと思うわ。夏休みに南の大陸の派手な生地を売れるようにしてくれたのは、新しいアイデアでしたもの」

 あっ、布は私も色々とアイデアがあるんだけど、今は関係ないね。

「それか、料理のレシピの相談かもしれませんね。ノースコートは、これまでは軍の拠点的な位置で、あまり貴族のお客は訪ねて来なかったから」

 サティスフォード港は、貴族の訪問が多いから、シェフもおもてなし料理に慣れていた。

「それなら、私もちょくちょく滞在させて頂くので、お礼にレシピを渡しますわ」

 ラシーヌがそれは良いでしょうと微笑む。


「アンジェラに入学祝いの品を持ってきたのですが、渡しても宜しいでしょうか?」

 直接渡したいからね!

「ええ、アンジェラを呼びますわ」

 アンジェラは、今日も可愛い。

「ペイシェンス様、素敵なドレスですね!」

 服も褒めてくれるし、気が利くよね。

「ええ、新しく雇ったお針子に縫って貰ったのよ」

 羨ましそうな顔をする。アンジェラは、ピンクにレースのついた可愛いドレスを着ているけど、もう少し大人っぽいのにしたいのかも?

「お母様、私もペイシェンス様のようなドレスが着たいですわ」

 おねだりに、ラシーヌが厳しい顔をする。ラシーヌって、結構教育ママだし、厳しいね。

「お客様の前で何を言い出すのですか?」

 やれやれ、これ以上怒られる前に入学祝いを渡しておこう。

「アンジェラ、これはファイルといって、ノート代わりになるの。私から細やかな入学祝いよ」

 アンジェラにファイルを渡す。紙で包んであるけど、開けて貰う。

「まぁ、可愛いピンクだわ! ペイシェンス様、ありがとうございます」

 アンジェラは、ここで上に上がらされたので、領地管理についてサティスフォード子爵に訊く。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 公爵夫人や伯爵夫人が喜んだ雪狼の毛皮に ラシーヌも興奮してるかと思ったらそうでもなかった
[良い点] 更新お疲れ様です。 ペイシェンスの生活魔法の強力さ&前世知識の活用···という前提有りきではあるものの、物語開始時と比べるとこうやって様々な場所に赴いたり、様々な人と交流して繋がりが増え…
[良い点] 毎日楽しみにしています。 ほんわかして、登場人物の関係もよく安心して読んでいます。 [気になる点] 私の人間性がひねくれているせいですが、このままパーシーとうまく行ってしまうのがもったい…
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