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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第五章 忙しい冬休み
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馬糞雲丹とケイレブ海老と鮑

 ハープシャー館の視察を終えて、馬車でグレンジャーに向かう。

「弟達は、マッドクラブを討伐できたかしら?」

 パーシバルは、冬の魔物討伐で風属性のビッグバードも討伐していたから大丈夫だとは思うけど、ヘンリーは身体強化だから、無理かも知れない。

「そろそろ着きますわ」

 まぁ、心配しても仕方ないんだけどさ。


 料理屋の前で馬車が止まる。馬が前に止まっているから、もう中にいるのだろう。

馬の王(メアラス)、寒くない?」

 小雪の降る中で待っている馬の王(メアラス)に声を掛けるけど、デーン王国の方が寒いよね。

「ブヒヒヒン!」

 『寒くはないけど、もっと走りたい!』だってさ。モラン伯爵領で走らせてあげなきゃいけないな。


「お姉様! マッドクラブを討伐したのです!」

 中に入ると、ヘンリーがそう言って抱きついてきた。

「ヘンリー! 凄いわね」

 でも、どうやってだろう?

「ゲイツ様がマッドクラブを海岸まで運んで下さったのです」

 なるほど! 魔法が使えないヘンリーは遠浅の海にいるマッドクラブには攻撃できないからね。


「ペイシェンス様、今日は蟹だけではありませんよ。馬糞雲丹とケイレブ海老も獲りました。私も海がある領地が欲しくなってきましたよ」

 まぁ、それは陛下にお願いしたら良いんじゃないかな?

「馬糞雲丹やケイレブ海老をどうやって獲ったのですか?」

 マッドクラブは、遠浅の海にいても目立つから討伐できるのはわかるけど、雲丹とか海老とかは海の中にいるんじゃない?


「ペイシェンス様も、明日は一緒に討伐しましょう。近頃、魔法の訓練をサボっていますからね」

 いや、どうやってやったかを知りたかっただけだよ。

「船を雇って、海に出たのです」

 パーシバルが教えてくれた。

「船ですか? それって漁師が獲ったのでは?」

 チッチッチッとゲイツ様が指を立てて振りながら違うと主張する。

「船を漕いだのは漁師ですが、雲丹と海老を獲ったのは、私達ですよ」

 ふうん? どうやったかな?

「それより、雲丹と海老の料理をお願いします!」

 それは、任せて欲しい! ただ、こちらの雲丹って生は駄目なのかな? 夏の離宮やサティスフォード子爵の館で食べた雲丹は火が通っていた。


「この食堂でも料理して貰いますが、ペイシェンス様のも期待しています」

 頑張ってみよう! 

「雲丹って冷凍できるのかしら? 海老はできそうだけど……」

 雲丹の冷凍、あったような? 前世では買った事がなかったけどさ。いや、スーパーの雲丹とか冷凍を解凍してあったのかも? 技術が凄すぎて分からなかっただけ? 雲丹の瓶詰め、あれ父親の酒のアテだったけど美味しかったなぁ。


 なんて、思い出に浸っている間に、女将さんの料理が運ばれてきた。

 蟹と雲丹のスープ、これ贅沢すぎるよね!

「美味しいです!」

 ヘンリー、そんなに急いで食べなくてもスープは逃げないよ。

「美味しいですね!」 

 パーシバルも食べるの早い!

「お代わりをしたいですが、他のも食べたいし……いいえ、やはりお代わりをします!」

 ゲイツ様は、相変わらず欲望に忠実だ。


 蟹は、焼いたのと茹でたのが出た。もう、満腹だよ!

 でも、鮑のステーキも出たんだ。

「パーシー様、半分食べて下さい」

 お腹いっぱいだけど、鮑は食べたい。

「良いですよ!」

 弟達は蟹もおかわりしていたけど、成長期ってどれだけ食べるんだろう。食費が心配になってきた。


「ゲイツ様は鮑は獲られなかったのですよね?」

 雲丹と鮑のいちご煮、美味しいのになぁ。それに、鮑のステーキ! 最高に美味しい。

「ええ、鮑は岩場にいるみたいで、明日は獲りましょう!」

 今日は女将さんに分けて貰うことにする。


「女将さん、雲丹は生では食べないのですか?」

 これ聞いておきたい。

「サッとお湯に潜らせて、半生では食べますけど、生は怖いです。他の魚介類も、一瞬でも火を通さないとお腹を壊しますよ」

 ふう、刺身は無理みたいだね。でも、表面に火を通せば良いのなら、色々とやれそう。

「なるべく生っぽい料理はありますか?」

 女将さんは、少し考えて出してくれる。


「魚介類のマリネです」

 魚は、塊のままサッと表面に火を通して、薄く削ぎ切り。鮑も、海老も、サッと湯掻いてある。

 それをビネガーとオリーブオイルで和えてある。

「お腹いっぱいなのに、まだ食べられますね!」

 私は、どの程度火を通さないと駄目なのか、一個ずつ食べて確認する。

 

「この魚は白身だけど、赤身の魚でも良いかも?」

 鰹の叩きが食べたくなった。今日は、鮑と白身の魚と赤身の魚を買って帰る。


 応接室で、少し休憩してから、馬の王(メアラス)とモラン伯爵領を走る。

「パーシー様、森は魔物が出ませんか?」

 街道を走らせるのは危険なので、どうしても人気がない所になる。

「魔物が出たら、討伐しますよ。まぁ、パトロールはさせていますがね」

 それも領主の仕事なんだね。馬の王(メアラス)も朝からグレンジャーまで行ったから、早駆けは小一時間で満足してくれた。


 今夜のレシピはエバに渡しているけど、皆の口に合うと良いな。

「明日で、モラン領の滞在は終わりますけど、ペイシェンス様はちゃんと視察ができましたか? 王都の新年会には出席しなくてはいけないから、長くは居られないの」

 モラン伯爵夫妻は、新年会に出席するみたい。なんて、他人事のように聞いていたけど、パーシバルに笑われた。

「ペイシェンス様も来年は社交界デビューしているし、新年会には出席しないといけませんよ」

 えええ、うちの父親なんかしそうにないけど?

「グレンジャー子爵は……されていませんでしたね」

 今回はするのか? いや、多分しないだろうな。それで良いのか?

「陛下とはお友だちだし、わかっておられるのでしょう。普通の貴族は出席しますが」

 やはり、変人枠なのかも?

「私も出席しません。一度、出たら酷い目に遭いましたから」

 ゲイツ様も変人枠だから大丈夫なのかも?

「ほほほ……ベネッセ侯爵夫人が悲しまれますよ」

 モラン伯爵夫人が微笑むけど、ゲイツ様は眉を顰めている。

「地位目当ての令嬢と父親に襲撃されるのは御免です。バリアを張って近寄れなくしても良いのなら、出席しても良いと陛下に言ったら、欠席で良いと言われました」

 まぁ、そちらの方が角が立たないよね。


 夕食は、やはりこれでしょう!雲丹のいちご煮! 

 鮑を薄くスライスしたのも入れてあるし、お出汁は昆布も入れたからね。

「やはり、ペイシェンス様の料理は美味しいです!」

 いや、昼間のスープもお代わりしていたじゃん。

「これのレシピを頂けますか?」

 モラン伯爵夫人は、晩餐会とか昼食会が多いみたいで、レシピが欲しいと頼まれた。

「ええ、冷凍ので王都でも作ってみます。アンが覚えてくれますよ」

 冷凍の雲丹も試してみよう!


 蟹と雲丹と海老のテリーヌ、綺麗だし、美味しい。

 そして、パスタマシーンも持ってきたから、蟹のクリームパスタ、雲丹添えだよ! 贅沢だよね!

「これはどうやって食べるのでしょう?」

 長いパスタってないんだよな。弟達は、エバの練習で食べているけどさ。

「フォークに少し取ってクルクルして食べます」

 見本を見せて、一口! 美味しいね!

 ゲイツ様がモロハマりしちゃった。

「お代わりをしたいですが、ペイシェンス様、これから何が出てきますか?」

 用心深くなったね。

「鮑のステーキと、蟹の出汁が効いたチーズリゾットですわ」

 少し考えて、パスタのお代わりをする。パーシバルと弟達もお代わりをしていた。


「とても美味しいですが、ドレスが着れなくなったら困りますわ」

 モラン伯爵夫人は、残念そうにお代わりを断った。

 伯爵は、悩んでいる。

「鮑のステーキは好物だから、やめておこう」

 

 夕食の最後は、あっさりとした柚子風味のソースが掛かったクレープだよ。

 おなかいっぱいでも、デザートは入るのって不思議。

 明日で、モラン伯爵領の滞在は終わる。

 弟達とグレンジャー海岸であれこれ狩ろう!

 

 


 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 海、最高ですね…! 雲丹、エビ、鮑に、白身と赤身のお魚、無限にレシピが広がる〜。 せっかく新鮮な魚介が揃ってるのでお刺身食べたいけど、やっぱり難易度高いですかね? 水揚げ後すぐに捌いて目視…
[良い点] 更新お疲れ様です。 雲丹に海老に鮑に蟹···確かに贅沢なラインナップですね!しかもそれをペイシェンスが美味しく調理してくれるんですからもうね。 こういう美味しい海産物を食べたくても食べら…
[一言] 新年会に貴族らが集まるのであれば、ペイシェンスは自分は新年会に出ないとはいえ、城に関係者を集めて課題の洗い出し、解決に動けるのでは? 集める人たち ・国王、王妃、リチャード王子 ・バーンズ…
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