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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第五章 忙しい冬休み
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締めは雑炊だよね

冷凍車にマッドクラブを積んで、館に戻る。

「さて、今夜はどんなご馳走が頂けるのでしょう」

 もう、食い意地が張っているのだから。


 今夜は、蟹クリームコロッケ、内子の入ったポテトサラダ、魚のソテー、蟹しゃぶだ。

 今夜は、蟹しゃぶがメインだから、他のは少しずつにして貰う予定。


 寒かったので、温かいお湯に入ってから着替える。

 今夜は、裁縫の授業で縫った濃いグリーンのドレスだ。銀ビーズの刺繍が施してあるので、授業で縫ったドレスだとは思われないだろう。


「ペイシェンス、そのドレスは収穫祭の時のですね」

 パーシバルは気づいたみたい。

「ええ、駄目でしょうか?」

 意味がわかっていない。裁縫の時間に縫ったドレスを晩餐の席で着ても良いのか聞いたのだけど?

「いえ、とてもお似合いだと思いますよ」

 良かった! メアリーもこのドレスなら問題ないと言ってくれたのだ。


 モラン伯爵夫人に銀ビーズの刺繍を褒められた。

「ペイシェンス様、この刺繍は素晴らしいですわ。どこのドレスメーカーに作らせたのでしょう」

 ええっと、困ったな。

「母上、これはペイシェンスが作ったドレスなのです。裁縫も修了証書を貰ったのですよ」

 モラン伯爵夫妻が驚いている。特に伯爵夫人がね。

「私の通っていた頃は、裁縫の時間でこんなドレスを縫う学生はいませんでしたわ。今だったら、私は卒業できなかったかも」

 パーシバルが笑って説明する。

「今年から、中等科の女学生は、青葉祭と収穫祭のダンスパーティで、裁縫の時間に縫ったドレスを着る事になったのです。でも、ペイシェンス様のようなドレスを縫えた方はいませんね」

 少し褒めすぎだよ! 恥ずかしい。

「ただ、裁縫が負担になり過ぎている方も多くて、来年からは少し考えないといけませんわ」

 ミシンは作ったけど、その使い方も慣れないといけないからね。パターンを何個か決めて、基礎縫いは助手にミシンで縫って貰うと良いのかも? 

「まぁ、ペイシェンス様は手先も器用なのね。羨ましいわ」

 モラン伯爵は、裁縫はあまり理解できていないが、貴族の令嬢がこのようなドレスを縫うのは大変だろうと言う顔をしていた。

 これは、新学期になるまでに、キャメロン先生と要相談だ。ミシンを二台購入して貰うから、使い方の説明をする予定だからね。

 その時に、提案してみるつもり。だって、裁縫は修了証書を貰っちゃったから、マーガレット王女が心配なんだもの!


 食堂で、モラン伯爵夫人に褒められた。

「ペイシェンス様とパーシバルが婚約してくれて、美味しい料理も頂けるし、雪狼(ニックスルプス)の毛皮も! 本当に嬉しいわ!」

 モラン伯爵夫人もエバの作る食事に満足してくれているみたい。

「後は、冷凍したマッドクラブを王都に運んでも美味しく食べられるかですね!」

 ゲイツ様、もう蟹目当てなのを隠しもしなくなったな。

 まぁ、それも今回の旅行の目的の一つではあるけどさ。


 蟹の内子入りポテトサラダ、絶品で、ゲイツ様は泣きながら食べた。

「お代わりをしたいけど、蟹鍋があるのですよね!」

 昨夜の失敗で我慢したけど、蟹クリームコロッケでお代わりしていた。

「これは、美味し過ぎます!」

 モラン伯爵夫妻も、蟹クリームコロッケは、晩餐会に出したいと喜んでいる。

「王都でこれを出したら、絶賛されるだろう」

 外交官って、やはりパーティとか多いのかもね。

 魚のソテー! 私はグレンジャーの食堂のも美味しかったけど、やはりエバの火の通し具合は良いな。

 皮はパリパリなのに、身はジューシーなんだ。

 レモンバターならぬ、柚子風味ポン酢バター! 美味しい!

「これも美味しいですが、蟹鍋の前ですから我慢します」


 はい、はい! メインの蟹鍋だよ。

 ここでは、全員にお世話係がついた。

 個人鍋に身だけにした蟹の脚を入れて、トングでしゃぶしゃぶと火を通す。

「まぁ! 身が花のように開いたわ」

 前世でも、蟹のしゃぶしゃぶはご馳走だった。

「この柚子風味のあっさりソースに付けて食べて下さい」

 白い花のような蟹の身をポン酢に付けて食べる。

「美味しい!」

 全員が口の中の蟹にうっとりしちゃう。

「次のをしゃぶしゃぶして下さい! いえ、私が自分でします」

 ゲイツ様は、トングでしゃぶしゃぶしている。

 他の人も、しゃぶしゃぶするのが面白いみたい。

 野菜も美味しいのに、ゲイツ様は蟹ばっかりだね。


「私はもういいですわ。エバに雑炊にして貰って下さい」

 大きいから、マッドクラブの脚を何個かに切ったのを二切れぐらいで満腹だ。

 本当は、殻も一緒に炊いた汁の方が出汁が出ているのだけど、エバならなんとでもしてくれそう。

「ペイシェンス様? もう良いのですか?」

 パーシバルは、両親の前では様付けだよ。私もパーシー様とは呼ばないけどさ。何となく結婚までは、お行儀よくしておこうって感じ。

「ええ、締めの雑炊を食べられなくなりますから」

 ナシウスにも少しお腹がいっぱいになる前に、雑炊にするようにと注意しておく。

 伯爵夫人も、それならとしゃぶしゃぶをやめる。


 雑炊、やはりエバは殻の出汁も入れているし、内子も上に乗せていた。

「美味しい!」

 これだよ! これ! 鍋物のシメはこれじゃなくちゃ。

「まぁ、まぁ、まぁ! とても美味しいわ」

 伯爵夫人も気に入ったみたい。


 伯爵やパーシバルやナシウスも、雑炊にして貰う。

「ゲイツ様、雑炊が入らなくなりますよ」

 一応、注意しておく。

「えっ、雑炊ですか? 病人じゃあるまいし……でも、ペイシェンス様のお粥は美味しかったし、今日はここまでにします」

 良かったよ! 食べられなかったら、鍋のシメにならないからね。


「お姉様、とても美味しいです」

 ナシウス、しゃぶしゃぶも三皿も食べたのに、雑炊も完食だね。

 成長期の食欲、凄すぎる!


「ペイシェンス様! もっと早く止めて下されば、雑炊をお代わりできたのに!」

 そんなの知らないよ!

「確かに、これは蟹しゃぶよりも美味しいかもしれませんな」

 モラン伯爵も食べ過ぎたとお腹を摩りながら完食だ。

「ペイシェンス様、これは美味し過ぎます」

 何故か、パーシバルにも文句を言われちゃった。


「ふふふ、明日はまた違う料理を考えています」

 蟹のクリームパスタ、食べたかったんだよね。パスタマシーン作って正解だな。それと、エバには腕の見せ所の蟹の身を使ったパテとか、綺麗な切り口にして欲しい。

「ペイシェンス様、今夜食べましょう!」

 それ、全員無理だから!

 デザートはあっさりとシャーベットだけになった。


 食後は応接室で歓談する。ナシウスとハノンを連弾して遊んだりもしたけどね。

 ナシウスもかなりハノンが上達している。

「ペイシェンス様は、音楽クラブに所属されているだけはありますわね」

 伯爵夫人が在籍していた頃から、音楽クラブはあったみたい。

 そこから、クラブ活動についての話になった。

 

「私は、魔法クラブでしたが、王立学園には数年しか通いませんでしたからね」

 ゲイツ様は、飛び級しまくったみたいだね。

「私は、乗馬クラブだったのだ。馬の王(メアラス)は本当に素晴らしいな」

 へぇ、伯爵が乗馬クラブ? まぁ、文官も多いのかも?

「私は、コーラスクラブでしたの。廃部になりそうだと聞いて、驚いていますの」

 ああ、それは嫌だろうな。自分の所属していたクラブが廃部になるのって寂しいよね。

「グリークラブができましたからね。コーラスクラブは、実力より家柄重視で、メンバーはグリークラブに移ってしまったのです」

 伯爵夫人が驚いて怒る。

「まぁ! なんて事でしょう。それはいけませんわ。私たちの頃も、少しは忖度される事もありました。同じ程度なら、学年が上の人がソロを歌うとか……でも、実力が無い方がソロなんて事は有り得ませんでしたわ」

 まぁ、貴族社会だから、ある程度の忖度はあるだろうけど、やり過ぎは駄目だよ。

「コーラスクラブは、もう廃部になったのかしら?」

 学生会長のパーシバルは苦笑する。

「来年度、新入部員が集まらなくて五人以下になったら、廃部になる規則です」

 この規則には、錬金術クラブも冷や冷やしたんだよね。

「何だか寂しいわ……でも、規則なら仕方ないのかも」

 コーラスクラブには関わりたくないので、スルーしておく。

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[気になる点] 「ペイシェンス、そのドレスは収穫祭の時のですね」  パーシバルは気づいたみたい。 「ええ、駄目でしょうか?」  意味がわかっていない。 「いえ、とてもお似合いだと思いますよ」  良かっ…
[気になる点] 「えっ、雑炊ですか? 病人じゃあるまいし 労働者には腹持ちがいいと好まれてるけどリリアナですら知らない米なのに 超上流階級のゲイツが雑炊を病人が食べるものって認識持ってるのに違和感
[良い点] ドレスの腕前をお姑様に認めて貰って良かったですね。外交官夫人として華やかな社交もされる方、今すぐは無理でもそのうちペイシェンスのドレスメーカーでドレスを誂えて貰えるかも。そうなれば若い女性…
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