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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第五章 忙しい冬休み
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チョコレートキス

 オルゴール体操をして、朝食の後は、パーシバルと話す。

 今日は、初めから工房で話すよ。

「これを作りましたの」

 パッと見たら、円柱の金属に蓋が付いているだけだよね。

「もしかして、錆びない金属ですか?」

 蓋を開けて、中のゆず茶を蓋のコップに注ぐ。

「これは、昨夜入れたものなのです。少し冷めていますが、温かいですわ」

 飲んだら、ちょうど良い程度の温かさだ。

「こちらはお茶です」

 パーシバルにはお茶を蓋コップに入れて出す。

「昨夜に入れたのに、温かいのですね!」

 そう、まだ改良点はありそうだけどね。

「これを世に出しても良いものかどうか、少し相談したくて」

 パーシバルは、私が心配していることがわかったみたい。

「戦争の時に使用できそうだと案じておられるのですね」

 そうなんだよね。

「私的には、冬の寒さ、夏の暑さを快適にできると思うのですが、自重する必要があるのか? そこの判断が難しくて」

 それを言うなら熱気球もだけど、こちらの世界には魔法があるから、敵対している上空は飛べないと思う。


「これこそ、バーンズ公爵に相談されては如何でしょう。確かに騎士団でも採用されるでしょうが、行商人や冒険者、そして旅をする人にはとても便利だと思います」

 どうだろう?

「バーンズ公爵は、ローレンス王国に有利なことを優先されるかも?」

 パーシバルが呆れたみたい。

「それは、当たり前です。私もそうしますよ。ペイシェンスも女子爵(ヴァイカウンテス)なのですよ!」

 あっ、そうなんだ! 女子爵(ヴァイカウンテス)だから、ローレンス王国の防衛とかも考えなきゃいけないんだ。

「どうも私は女子爵(ヴァイカウンテス)としての自覚がなさそうですわ。昨日も伯母様方に色々と説明して頂いたのに」

 パーシバルが肩を抱き寄せて、慰めてくれる。

「ペイシェンスはまだ12歳なのだから、これから学んでいけば良いのです」


 学ぶで思い出した。

「お父様に私がロマノ大学で学びたい薬学や植物はどの学部になるか尋ねたら、やはり魔法学部になりそうなのです。薬学と植物学のどちらを優先するかによって指導教授が決まるそうですわ」

 パーシバルは、魔法学部と聞いて、少し笑う。

「パーシー様、笑うなんて酷いわ」

「失礼致しました。でも、あれほどゲイツ様に魔法使いコースに転科しろと言われたのを嫌がられていたから」

 うっ、サティスフォードからの帰りの馬車の中でゲイツ様とサリンジャーさんの2人掛かりで説得されたのを思い出す。

「あの時は、パーシー様も馬車を代わって下さらなかったわ」

 恨みも思い出したよ。

「それは、当たり前です。王宮魔法師のゲイツ様がペイシェンスと一緒じゃないと王都に戻らないと言われていたのだから」

 ああ、流行病という緊急事態なのに、我儘を言っていたね。


「薬師には興味があるのです。でも、ローレンス王国で栽培できる植物も増やしたいとも思うし……悩みますわ。お父様は、教授会で話してみたら良いと言われたけど……」

 パーシバルも賛成する。

「指導教授は重要ですからね。そうか、グレンジャー子爵が教授会を開かれるなら、直接話す事も可能ですね」

 まぁ、少しは役得かな? 昼食会を開くのは、少し面倒だからね。特にグース教授もいつかは来るだろうし。


「ああ、そうだわ! これも作りましたのよ」

 瓶に煮詰めた麦芽糖を入れてある。パーシバルにスプーンで一口味見させる。

「甘いですね……ペイシェンスが作ったのですか? もしかして、麦と米で?」

 そう、話したのを覚えていた。

「麦芽糖ができたのです。それに、生活魔法は使っていません。つまり、誰でも作れるのです」

 パーシバルは笑う。

「これを領地で作らせるのですね! 庶民に甘味を与えられます」

 まだ米は領地で作られるかわからないけどね。


「これは、バーンズ公爵に教えるべきかしら?」

 領地の特産品にするべき?

「バーンズ公爵領は、北部ですから米の栽培は難しいかもしれません。でも、バーンズ商会があるので、ローレンス王国で麦芽糖を大量に作らせ、流通させることができます」

「それは、教えて麦芽糖を広める方が良いと言われているのですか?」

 やはりパーシバルは生まれながらの貴族だ。ローレンス王国の為にと考える。


「ペイシェンスは独占したいのですか?」

 一瞬、領地の繁栄を考えたのは事実だ。

「これからグレンジャーを開発する資金になるとは考えました。でも、簡単な方法ですから、いずれは作り方はわかりますわ。バーンズ公爵に任せた方が良いでしょう」

 庶民の為の甘味だもんね。

「もう、グレンジャーを領地にした後を考えておられるのですね」

 いや、あまりに荒廃していたら、やめるよ?

「やめられるかしら?」

 パーシバルが抱きしめてくれた。

「私も駄目だと思ったら、ちゃんと言いますよ」

 だよね! 一緒に管理していくんだもん。


「そうだ! 明日は、マーガレット王女がお茶会に来られますわ」

 パーシバルが笑う。

「本当に、目を少し離すと凄い展開になりますね。ドレスですか?」

 まぁね!

「あっ、それとこれもあったのです」

 リップクリームは見せてなかったかも?

 ちょっとはしたないけど、手鏡を見ながらリップクリームをつける。

「ペイシェンス! これは素晴らしいですよ」

 艶々リップになった私に軽くキスする。メアリーがいるから、本当に軽くだよ。

「ただ、これはカカオバターで作っているので、高価になりますの」

 パーシバルは自分の唇をペロリと舐めて笑う。

「チョコレートの香りがします」

 いやん! 顔が赤くなっちゃうよ。


 でも、真面目な話もするから、応接室に移動する。

「伯母様方にも家政婦と信頼できる騎士を探してもらっていますの」

 パーシバルと新たな生活について話し合う。

「そうか、騎士も必要ですね。モラン伯爵領の騎士の次男以下でも探してみます」

 それは、頼もしい!

「領地の管理人に相応しい人も探さないといけませんね」

 わぁ、いっぱい決めなきゃいけないことがあるよ。


「インテリアコーディネーターは、ヒューバート・グリーンが良いと伯母様方が言っておられたわ。サリエス卿の新宅を請け負ったそうです。見学しても良いと言われたの!」

 どんなインテリアがパーシバルの好みかな?

「それは良いですね。旅行から戻ったら、見学させて貰いましょう」

 あっ、言っておきたい事があったんだ。

「今度、グレンジャー家の使用人用の浴室を改築するのです。そこに色々と試してみるつもりですの」

 シャワーとかね!

「それは楽しみですね。ペイシェンスはどんなインテリアが好みですか? グレンジャー家は文官らしく落ち着いていますけど?」

 良い風に言えば、そうだね! 古いを言い換えればね。


「私は、シンプルなのが好きですが、ある程度は華やかさも欲しいわ」

 パーシバルも同意してくれた。

「あまり、ロマンチックなのや煌びやかなのは落ち着きませんね」

 ただ、私のシンプルとパーシバルのとは、かなり差があるかも?

「多分、サリエス卿の新居は、スッキリしているのでしょうね」

 サリエス卿とユージーヌ卿なら、飾りたてたりしないと思う。


「ああ、でもユージーヌ卿のお母様は、ロマンチストかも? レースがいっぱいのドレスがお好みだそうだから」

 パーシバルがプッと吹き出した。

「サリエス卿とユージーヌ卿が、レースのカーテンがある屋敷で生活されるのですか?」

 2人の雰囲気に合わないけど、レースのカーテンは実用品でもあるよね?

「シンプルなレースのカーテンもあると思いますわ。それに、こんな調整をするのもインテリアコーディネーターの腕の見せ所かも」

「ヒューバートの腕を見てから、決めましょう」

 そうだよね! 評判が良くても、私達の趣味と違うかもしれないもの。


 昼からバーンズ公爵家に行くので、パーシバルは弟たちに剣術の稽古をつけて、帰った。

 私は、ステンレスの特性が生かせるキッチン用品を作る。

「ボールや泡立て器、それにスプーンにフォークに鍋!」

 小物は作るのも気が楽だ。

「そろそろ、お昼を食べてください。着替えなくてはいけませんから」

 メアリーに急かされて、スライサーやミンサーはステンレス製で作れなかったけど、まぁ、見本は鉄製であるからね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 今さらですけど、チョコレートってわりと溶けやすいですよね。 このリップは冬限定とかのがいいかも。
[一言] バーンズ商会はペイシェンスの領地に支店を建てる準備をしなければ
[良い点] 更新お疲れ様です。 リップを塗ったペイシェンスに、流れるように口付けするパーシバル···あま~い!(某ハンバーグ師匠並感 [一言] (恐らくですがフリフリドレスを着たユージーヌ卿を想像し…
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