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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第五章 忙しい冬休み
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親戚との昼食会

 淑女教育は、一旦中断して、昼食にする。

「ヘンリーも一緒で良いでしょうか?」

 一番、気難しそうなアマリア伯母様に訊く。

「ええ、今日は身内だけですから、良いわよ。それにナシウスもサミュエルも一緒ですもの」

 良かった! リリアナ伯母様やシャーロッテ伯母様は、頷いている。


 今日は、少しだけ冒険したメニューだ。身内だから、厳しい意見も聞きたいからね。

火食い鳥(カセウェアリー)の芋包みでございます。キャロットの酢漬けを添えております」

 火食い鳥(カセウェアリー)、父親の好物なんだよね。ビッグバードの中の一部だ。


「あら? この火食い鳥(カセウェアリー)とても柔らかいわ」

 そう、塩麹に漬けたんだよ。

「この包み方、とても面白いわ」

 リリアナ伯母様も、芋を薄く切って肉を包むのは初めてみたい。

「ウィリアムは、火食い鳥(カセウェアリー)が好きだったから、ペイシェンスがいっぱい討伐して嬉しいでしょう」

 アマリア伯母様の所は、サリエス卿がいるから、肉は届けていないけど、リリアナ伯母様とシャーロッテ伯母様には届けたよ。

「私も火食い鳥(カセウェアリー)は好きですが、ここまで柔らかくはないわ」

 リリアナ伯母様が首を捻っている。

 ナシウスとヘンリーは言いたくてうずうずしているけど、子どもは質問されない限り、口を開かないのがマナーだ。


「これは、ペイシェンスが考えた塩麹に漬けたのだな」

 父親が珍しく姉達に口をきいたよ。

「まぁ! 分けて欲しいわ。近頃は固い肉は食べ難く感じるの」

 それは、良いよ。また作ろう!

「塩麹の香りは気にならないでしょうか?」

 これを確かめたくて、メニューに加えたのだ。私は気にならないけど、嫌う人もいるかもしれないからね。

「いえ、そういえばほんのりと香りがするけど、気にならないわ」

 シャーロッテ伯母様は、気にならないみたい。

「風味がついているとは思ったけど、嫌ではないわ」

 リリアナ伯母様も大丈夫みたい。


「トマトスープに、ショートパスタを浮かべたものです」

 本当は、長いパスタにしたかったけど、いきなりはね。

 ショートパスタは、蝶々の形にしている。

「あら、美味しいわ」

 うん、これは大丈夫そう。


「ビッグバードのホワイトシチューです」

 小さな器に、ホワイトシチューが盛ってある。人参は可愛い花型だよ。

「まぁ、とても美味しいけど、普通のホワイトシチューではないみたい」

 隠し味の白味噌が少し強かったかな? 私は美味しく感じるけど?

「あら、とてもコクがあって美味しいわ。ペイシェンス? また何か入れたの?」

 ははは、バレているな。

「ええ、白味噌を隠し味に入れましたの」

 リリアナ伯母様の目が光る! 気に入ったみたい。

「これから、新年会が増えるから、調味料を分けて頂きたいわ」

 了解です。リリアナ伯母様には夏休み世話になったからね。


 口直しに、りんごのシャーベットを出す。


 そして、一番心配なメニューだ。

「野菜しゃぶしゃぶです。野菜を先に入れて、肉で包んでお召し上がり下さい」

 父親にはジョージが世話をするけど、伯母様方はワイヤットやメアリーに訊きながら、自分でやる。


「サミュエル、先に千切りの野菜を入れて、肉をトングで1枚とってしゃぶしゃぶして、巻いて食べるんだ」

 ナシウスがサミュエルの世話をしているから任せるよ。


「濃い茶色のは、さっぱりした柚子風味のソースです。薄い茶色のは、コクがある胡桃ソースですわ」

 私は、にんじん、ロマノ菜、ポロネギの千切りをビッグボアの肉に包んで、ポン酢で食べる。


「まぁ、さっぱりして美味しいわ!」

 伯母様方は、ポン酢派が多いが、サミュエルとヘンリーは胡桃タレ派だね。

「どちらも美味しいな」

 父親は、前はすき焼きの後だったから、ポン酢派だったけど、野菜包みしゃぶしゃぶは、両方みたい。ナシウスもだね。


「お肉と野菜のお代わりもございます」

 私や伯母様達は、お代わりはいらないけど、父親と弟達とサミュエルはお代わりしている。


「これは、教授会には向かないでしょうか?」

 伯母様方にこれを訊きたかったのだ。

「ご婦人方は大丈夫でしょうが、不器用な殿方は従僕が必要かも?」

 うちの父親も必要だからね。なら、却下だね。

「でも、とても美味しいし、変わっているから、出さないのは勿体無いわ。5組を招待するなら、夫婦に1人付ければ良いのよ」


 リリアナ伯母様、ジョージは父親の世話だし、マシューとルーツとメアリーとキャリーしかいないよ。

「ウィリアムが1人で食べたら良いのでは?」

 そうだけど……ワイヤットが頷いている。

「ワイヤットが、この時だけお世話したら良いかも?」

 姉達、全員が溜息をついた。


「ただ、この料理は美味しいけど、あのゲームパイの華やかさは無いわ」

 アマリア伯母様の言う事も一理ある。

「ロマノ大学を模したゲームパイは見事だった」

 父親も賛成する。

「毎回、あれでも良いのかしら?」

 どうかな?

「一周するぐらいは良いのでは? 招待する教授は変わるのだし」

 そうかもね?

「でも、デザートを派手にしてみたのですけど……」


 ワイヤットがワゴンを押してくる。

「わぁ!」

 思わずヘンリーが叫んだけど、それは皆も咎めない。

「これは見事だよ!」

 ケーキでロマノ大学を作ってみたんだ。

 下のスポンジは、ゲームパイの時の型を使ったよ。その上にレンガ模様を、生クリームにチョコを混ぜたので表している。

 ロマノ大学の紋章は、小さなミニチョコで作られていて、その1つずつも紋章の形なんだ。

「エバの傑作ですわ」

 

 ワイヤットが切り分けると、歓声が起こる。綺麗な切り口には、生クリームが何段も挟んであり、そこにはスライスしたいちごが見えている。

 切り分けたケーキの上にロマノ大学の紋章を型どったミニチョコを飾る。


「まぁ! 綺麗な上に美味しいわ! それに紋章のミニチョコ! 作って欲しいわ」

 リリアナ伯母様、ぐぃぐぃ押してくるね。型を作れば簡単だけどさ。

 甘いから、コーヒーを出す。弟達とサミュエルには紅茶だけどね。


「ペイシェンスは、良い奥様になるわ! この昼食会なら王族でも招けますわよ」

 アマリア伯母様にも高評価だ。

「そうね! 食事会やお茶会は、私達の指導は必要なさそうね」

 そうだと良いな。

「明後日、マーガレット王女がお茶会に来られるのですが、注意するべき点は?」

 伯母様方から、女官は侍女と同じだけど、少し丁寧に扱う必要がある。馬丁と護衛にも何か出した方が良いとアドバイスもらった。

「エリザベス様とアビゲイル様の馬丁と一緒で良いでしょうか?」

 それは、一緒で良いみたい。出迎えも、お忍びだから要らないと聞いてホッとする。寒い中、召使い総出の出迎えはちょっとね。


 食後、また応接室で淑女教育だ。

「秋の社交界デビューのドレスを作らなくてはいけないわ」

 それについて、知りたかったんだ。

「王妃様がドレスを下さると仰ってくださっているのですが……」

 ふぅと、アマリア伯母様が溜息をつく。

「ペイシェンスは、マーガレット王女の側仕えですし、王妃様が目を掛けて下さっているから、とても有り難い事ですよ」

 ええっと、その有り難い具体例が分からないから、教えて欲しい。


「どう有り難いのか、理解できていないのです」

 3人の伯母様たちに睨まれた。

「ペイシェンス! そんな不敬な事は言っては駄目よ。ウィリアムは何も教えていないのね」

 リリアナ伯母様の怒りが怖い。

「王妃様が目を掛けて下さるデビュタントは、王宮での舞踏会には絶対に招待されるし、控室も与えられるわ。そうなったら、他の上級貴族も親切な態度で接してくれるし、良縁を……まぁ、これはペイシェンスは必要ないけど……兎に角、社交界で一目置かれるのよ」


 ふうん、よく理解できない。

「ペイシェンスは、あれほど賢いのに、やはりウィリアムは何も教えていないのね」

 シャーロッテ伯母様にとっては最大の悪口かも?


「社交シーズンの初めに、デビュタントは王宮に招かれて、陛下と王妃様に挨拶をします。これをしない人は社交界の正式なメンバーではありません。裕福な商人の娘さんがパーティに招かれたりするけど、違うのよ」

 アマリア伯母様の説明を聞く。

「その時に、王妃様のお気に入りは、早く挨拶できるのです」

 意味がよく理解できない。


「もう! 身分順に挨拶するけれど、先になるのよ。凄く名誉な事だわ」

 なるほどね! 名誉なのだ。

「あら? でも、ペイシェンスは、自身が女子爵(ヴァイカウンテス)でしょう? 他に爵位持ちの令嬢はいないから、マーガレット王女やリュミエラ王女の次になるのでは?」

 シャーロッテ伯母様の言葉で、全員が黙って考え込んじゃった。


「そうね! でも、まぁ、良いじゃない。王女様方は挨拶されないから、一番先よ!」

 ふう、大変そうな予感。

「後見人は、誰にしましょう?」

 リリアナ伯母様が姉の2人にお伺いを立てるけど、アマリア伯母様は首を横に振る。

「私は、もう引退間近だから、後見人はやめておくわ」

 少しホッとしちゃった。

「リリアナがした方が良いわ。子爵夫人より伯爵夫人の方が箔がつくのもあるし、モラン伯爵夫人と仲が良いもの」

 シャーロッテ伯母様がリリアナ伯母様に譲って、私の後見人が決まった。

 王妃様も後見人になると言われたけど、世話をするわけじゃないみたい。当たり前だね。

 

 それから諸々の注意を受けた。侍女を常に連れて歩くとか、婚約者とはいえ親密になりすぎるなとか。

 疲れたので銀の鈴を鳴らしてお茶にする。

「まぁ、ペイシェンス! これは何かしら?」

 アフタヌーンティースタンドはとても好評だった。


 お茶を飲みながら、シャーロッテ伯母様に私の新しいドレスのデザインの改良点を指摘して貰った。

「この薄いカルディナ帝国の生地は、ギャザーを寄せても良いと思うわ」

 伯母様は、サラサラとデザインを描いてくれた。何だかとても軽やかで、春に着るのに良さそう。

「もう少し、華やかな方が良いと思うわ」

 アマリア伯母様の趣味ではないみたいだけどね。

「若々しくて良いと思うわ」

 リリアナ伯母様のセンスは良いね。


 家政婦と管理人と騎士については、各自探してくれるそうなので、それはとても有り難い。

「それと新居のインテリアコーディネーターを探して欲しいのです」

 リリアナ伯母様が「ヒューバート・グリーンが良いわ!」と即答した。

「ああ、近頃、よく聞く名前ですわ」

 人気のコーディネーターみたい。

「そういえば、ユージーヌ卿もその方に新居の改築を任せるとか。一度、見学しても良いかも?」

 アマリア伯母様、良い情報ありがとう!


 お土産のチョコレートの箱をあげて、お見送りしたら、ドッと疲れた。



 

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― 新着の感想 ―
[一言] ケーキでロマノ大学を型を使って作る。  これペイシャイスの領地の屋敷や遺跡の形の型を作っても面白そう。 特に遺跡の型とかお土産にも欲しい。ような。ケーキは無理でもゼリーかプリンの型になりそう…
[一言] 読み返してみると明日はバーンズ公爵と面会で 明後日がマーガレット王女とお茶会
[良い点] ああ、なぜか自分の中にできてた、リリアナおば様成分が満たされます(笑) シャーロットおばさまも父に厳しくていい感じ。 マーガレット王女も結構待望のお呼ばれなのかも!楽しみ。
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