似合う生地選び!
私はエリザベスに勧められた鮮やかなグリーンの生地を肩に掛けた。
「まぁ、顔色がよく見えるわ」
何となくブルー系が多いけど、そう言えば収穫祭のドレスも濃い緑色だったね。
「ペイシェンス様は、こちらの薄いピンクの生地も似合いそうよ」
えええ、それは苦手なベビーピンクだよ。
「幼く見えそうですわ」
今でもお子様だけど、より幼くは見せたく無いんだ。誰に見せたく無いか? パーシバルに決まっているよ。
「肩に掛けてみなさいよ!」
渋る私の肩に、メアリーがベビーピンクの布を掛ける。
「あらら、顔が綺麗に見えるわ」
ふふふとエリザベスが笑う。
「私のセンスは、なかなかでしょう。アビゲイル様にはあの綺麗な薄いブルーも似合うと思うわ」
こちらは、アビゲイルも抵抗なく肩に布を掛けて貰っている。
「凄く似合っているわ!」
アビゲイルも嬉しそうに微笑む。
エリザベスは、あれこれ肩に掛けて悩んでいたけど、灰色に細い黄色と黒のチェック柄を選んだ。
「あっ、柄物も素敵だわ!」
アビゲイルには青色に細い白の縞模様を掛けさせる。
「なかなか良いと思うわ。デザイン次第だけど。ペイシェンス様の柄物は、これが良いと思うわ」
赤に黒の格子模様! チビなのに大丈夫かな?
メアリーがいそいそと肩から掛けてくれる。
「あっ、この生地なら、サークルスカートにしたら可愛いと思うわ」
バイヤスに生地を切って、サークルスカートにしたら、格子柄が斜めクロスになって良い感じになりそう。
白の大き目のオープンカラーをつけて、白の包みボタンをつけたら可愛いと思う。
エリザベスは、悩みに悩んで、灰色がかったトルコブルーの生地を選んだ。
「こちらの緑も捨てがたいけど、この色のドレスのイメージが浮かんだの。ペイシェンス様の銀ビーズを袖口とスタンドカラーにしたら素敵だと思うの」
えっ、私が刺繍するのですか? モリーとマリーに教えてやって貰おう!
生地を三個ずつ選んで、やっと椅子に座る。銀のベルを鳴らして、ワイヤットにお茶を運んでもらう。
「御免なさいね。お茶もお出ししないで」
エリザベスも恥ずかしそうに笑う。
「いえ、訪問したばかりの屋敷で興奮して、大騒ぎしてしまいましたわ」
アビゲイルもクスクス笑っている。
ワイヤットがワゴンにアフタヌーンティースタンドを三個乗せて運んできた。
「まぁ! 何かしら?」
「お菓子のタワーだわ!」
二人が手を叩いて喜んでいる。好評みたいで、良かったよ。
「アフタヌーンティースタンドよ。どうぞ召し上がって」
ワイヤットにお茶を注いでもらう。
メアリーは、お付きの侍女達にお茶とクッキーを出している。クッキーの皿には、二個ほどチョコレートも添えてあるよ。
普通の付き添いと違って、お嬢様のお世話と、散らかった布を片付けるのが大変だったからね。
「これはどうやって食べたら良いのかしら?」
お皿を取り出して食べても良いし、小皿に取って食べても良いのだ。
「お好きに召し上がって下さい」
下のサンドイッチや小さなキッシュから食べても良いけど、好きなように食べたら良いと思う。
「まぁ、チョコレートもあるわ!」
アビゲイルが嬉しそうに、チョコレートを一個食べる。
「これは、新作ですの」
そう、どうせお出しするなら、新作の方が良いよね。
「中はいちごなのかしら? サクサクして甘酸っぱいわ。ドライいちごは固いのに、これは食べ易いわ」
アビゲイルは、あの女学生の中では料理ができるから、興味があるみたい。
甘い物を食べたら、しょっぱい物! 一番下の一口大のサンドイッチを摘む。
「これがマーガレット様が言っておられたペイシェンス様のサンドイッチね! 美味しいわ!」
エリザベスもアビゲイルもサンドイッチを摘む。
「今度はケーキにしましょう!」
エリザベスが二段目の皿を取り出す。
小さなプチケーキが三個、並んでいる。
いちごショート、チョコケーキ、そしてプチロールケーキの周りにチョコレートスプレーを付けたの。
「どれから食べるか悩みますわ」
アビゲイルは、スイーツも好きみたい。
「ねぇ、ペイシェンス様! マーガレット様をお呼びしなくて良かったのかしら?」
えっ、それは考えてもいなかったよ。
「これを聞きつけたら、叱られる気がするわ」
そうなのかな?
「そうですわね! ペイシェンス様とマーガレット様は一番の仲良しなのに」
えええ、そうなのかな? そうかも?
「明々後日なら、空いていますけど……王女様を屋敷に招待しても良い物なのかしら?」
そう言えば、リチャード王子は押しかけて来たことがある。
「えっ、ペイシェンス様はマーガレット王女の側仕えだから……もしかして、お呼びした事がなかったのですか?」
そう言えば、前の学友達の屋敷には遊びに行ったと言われていたね。
「私は、側仕えで学友とは違いますから」
二人から睨まれたよ。
「それ、本気で言っています? 驚きますわ」
「マーガレット様は、一番ペイシェンス様を信頼なさっておられますわ。それは、この前学友に選ばれたばかりの私でもわかります」
そうかも? 貧しかった頃のお仕えするイメージが染み付いていたよ。
「では、明々後日に来られるか、お手紙を書いてみますわ」
旅行の前日だけどさ! 二人も呼んで欲しそうだから、招待するよ!
「なら、この生地も選び直した方が良いかも?」
アビゲイルが心配そうに言う。
「いえ、マーガレット様には、似合いそうな生地を考えているから、大丈夫ですわ」
これは、センスの良いエリザベスに任せよう。
「もし、私達の生地が気に入られたら、相談しましょう」
私的には普通に言っている言葉なのに、エリザベスとアビゲイルに笑われた。
「やはりペイシェンス様が一番のお友達ね!」
そうなのかな?