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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第一章 王立学園初等科
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青葉祭 音楽クラブの新曲発表会

 青葉祭の朝もマーガレット王女を起こす。いつの日か自分で起きて着替えてくれますようにとエステナ神に祈る。そう、キース王子が1人で外出していたのをビクトリア王妃に言わないようにエステナ神に祈って叶ったからね。それからちょっと祈ったりするんだ。初詣したりするのと同じ感じかな。

 朝はルーティン化しているので早くなっている。

「青葉祭ですから、何か違う髪型にされますか?」

 自宅生の学友達は普段でも巻き髪だったり、ふわふわの髪にしたりしているのだ。青葉祭には派手な飾りを着けたりしそうだ。

「そうね、新曲の発表もあるから、少しだけ飾りを付けましょう」

 目の色と同じグリーンのリボンの髪飾りを化粧台から出して渡された。

「華やかなリボン飾りですね」

 いつもはハーフアップにするだけだが、メアリーがする様に少し編み込みを入れてみる。

「まぁ、ペイシェンスは器用ね。女官になれるわよ」

 女官も将来の職業の選択肢に入っているので、お褒めの言葉として受け止めておこう。でも、ずっとマーガレット王女のお目覚め係は御免だけれどね。


 私達の音楽クラブの発表は1番だ。その後にコーラスクラブ、そして音楽クラブの2番。昼食休憩を挟んで演劇部、コーラスクラブ、音楽クラブ3番、コーラスクラブとなっている。劇は観てみたいな。異世界にはTVもラジオもないんだもん。

「今日はどういたしましょう?」

 普段は食事や放課後は一緒に過ごすが、授業中などは別行動だ。マーガレット王女は学友達と授業を受けているからだが、青葉祭はどうなるのだろう。お伺いを立てる。

「私達は1番で演奏だから、朝食を取ったら講堂へ向かいます。キャサリン達は午前中は騎士クラブの試合の観戦をしているでしょう。コーラスを聴いても良いし、2番の音楽クラブの演奏も聴きたいわね」

 つまり、午前中は学友達はいないから、ずっと側に居ないといけなそうだ。

「お昼からは自由に他のクラブの発表とかを見て来ても良いわ」

 マーガレット王女は本当に音楽が好きなので、きっと1日中講堂から離れないだろう。私は劇は観たいが、他のクラブ発表も少しは見学したい。パンフレットに『錬金術クラブ』もあったので、どんな物か見てみたい。だって前世には錬金術はなかったんだよ。すっごく興味あるよ。


 講堂の舞台にはハノンが設置されていた。アルバートが、あれこれ学園の下男に指図している。演目台には演奏する曲が書いてある。私の時はメリッサ部長がめくってくれるが、後は下級生の私が当番だ。

「あちらは任せておきましょう」

 マーガレット王女は、メリッサ部長と一緒に後ろの方に座って騒がしいアルバートから距離を取った。私も側仕えなので、マーガレット王女の後ろの席に座ったよ。

「本当にアルバートは張り切っているわね。いつも変だけど、今日は危ないレベルだわ」

 メリッサ部長の酷い言葉に、思わず吹き出しそうになる。テンション・マックスだもん。見ているだけで疲れそう。

『カラ〜ン、カラ〜ン』

 1時間の授業の始まる鐘だ。つまり青葉祭が始まる。学生や保護者達がパラパラと講堂の席を埋めていく。

 私達も舞台裏に移動した。なんだかドキドキしてきた。2年生だから最初に弾くのだ。騎士クラブと被っているから、人が集まらないとか不満を言っていたクラブメンバーもいたが、私的には十分集まっているように思える。

「ペイシェンス、私の挨拶が終わったら、舞台に出てね」

 メリッサ部長は本当に堂々と挨拶して、舞台の下手に置いてある演目台の一枚目をめくった。

 拍手の中、舞台に出て、どうにかお淑やかにお辞儀をしてからハノンを弾く。私は『きらきら星変奏曲』が前世から好きだった。途中から本当に星がきらきらしているような音符が飛び回る感じがね。

 『仔犬のワルツ』も可愛い曲だよね。

 『トロイメライ』は幼い頃、お昼寝にかけて貰っていた曲で、ノスタルジックな気分になるよ。

 何とか弾き終えた。椅子から立ってお辞儀をする。

 「素晴らしい!」拍手の音の中でも、凄く響く声がした。保護者が1人、立ち上がって興奮しているように見えるけど、私は演目をめくって、舞台裏に下りる。

「まぁ、拍手が鳴り止まないわ。困ったわね」

 メリッサ部長は好評で嬉しそうだ。拍手だけでなく「アンコール」とかの声もする。その中でもよく響く声はさっきの保護者だろう。派手な服を着ているから上級貴族かな?

「当然だ。素晴らしい新曲ばかりなのだからね。でも、私の新曲も素晴らしいぞ」

 学年順なら3年のマーガレット王女なのだが、建前は身分に関係無いとはいえ、4年のアルバートが先に弾く。新曲は凄く技巧的な曲だった。前世の『超絶技巧ソナタ』を思い出したよ。激しい曲の後に『アイネ・クライネ』はしみじみした。

 拍手の中、舞台に出て演目をめくる。ちょっと恥ずかしいね。今度はマーガレット王女だ。新曲は青葉祭に相応しい清々しい曲だった。『トルキッシュマーチ』は勢い良く弾かれた。そして『メヌエット』の練習もしっかりとされていたので大拍手だ。

 最後に演目をめくる。やはりトリはメリッサ部長だ。部長の新曲は雄大な感じがする。心が解放されたよ。その後のキャサリンの『エリーゼのために』は意外とメリッサ部長の乙女らしさが光っていた。

「これで音楽クラブ1回目の新曲発表会は終わります。2回目の新曲発表会はコーラスクラブの後です。また違う新曲も発表しますので、是非お聴き下さい」

 講堂が揺れるような大拍手で、音楽クラブの1回目の新曲発表会は終わった。私の出番はもう無いので気が楽になったよ。青葉祭を楽しもう!


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