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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第一章 王立学園初等科
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青葉祭の前日

 青葉祭の前日も学園の授業は無かった。朝から音楽クラブで、3回の新曲発表の段取りを話し合う。私は2年生だし、黙って聞いているだけだ。保護者が見学に来る学生は、その時間に合わせたりと難しそうだ。

「午前中は騎士クラブの試合があるのよ。人はそっちに集まるわ」

 他のクラブの出し物まで考えていたら決まらない。音楽クラブが講堂を使える時間は学生会から通達されている。演劇クラブやコーラスクラブと同じ長さの時間だが、演劇クラブは1つに纏まって取っているのが違う。

「演劇クラブは、お昼休みの後を3時間も取っているのよ。ズルいわ」

 音楽クラブは1時間を3回、コーラスクラブも同じだ。ずっと前は3時間ずつ取っていたそうだが、3時間も連続で演奏したり、歌うのは辛いから今の方法になったのだ。午前中に騎士クラブの試合があるので、2回ある音楽クラブが今年は損をした事になった。コーラスクラブは午前中は1回なのが不満の原因だ。

「時間割は年毎に順番よ。来年はコーラスクラブが午前中に2回になるから、今年は我慢するしか無いわ」

 メリッサ部長が纏める。不満ばかり言っても始まらない。

「希望の時間に名前を書いて、多い時間は調整しましょう」

 皆が書き込むが、やはり午後が多い。

「親が騎士クラブの試合を見たいと言ってるとかで、午後にしたいとか困ったわね。5人ずつにしたいのよ」

 私はマーガレット王女と同じ午前中の1番に書いた。国王や王妃は見学に来られないし、マーガレット王女は騎士クラブに興味が無い。普段は取り巻きのキャサリン達なのに騎士クラブに気になる学生がいるみたいで、親を前面に出して午後を希望している。

「別に5人ずつにしなくても良いさ。少ない人数の時間は何曲も弾けばいいだけだ」

 アルバートも騎士クラブなんか何が面白いのかと、午前中の2番にしていたが、1番にも名前を書きこむ。メリッサ部長も1番と2番に書き込んだ。

「私も協力するよ」

 3人の男子学生も午前中に変更して、どうにか決まった。

「午後は8人になるけど、それで良いのね。文句があるなら、今言うこと。後からは受け付けないわよ」

 メリッサ部長、格好良い! 男気あるんだよね。

「あとは番号ごとに、弾く曲を決めてね。重ならないようにするのよ。自分の新曲と他の人の曲が基本だからね」

 パンと手を打って別れさせる。1番はマーガレット王女、メリッサ部長、アルバート副部長と私の4人だ。2番はメリッサ部長、アルバート副部長と男子3人の5人。

 午後の3番は女子だけで8人。

 何だか午後の3番は揉めそうだけど、私は1番を決めるのに集中しよう。

「私は自分の新曲とペイシェンスの『メヌエット』を弾こう」

 アルバートは求婚するほど気に入っていたな。

「あら、私も『メヌエット』が弾きたかったのよ」

 マーガレット王女も『メヌエット』を気に入って練習していた。

「なら、アルバートは2番の時に弾きなさい。私は自分の新曲とキャサリンの新曲を弾くわ」

 アルバートのチェックが入る。

「それはペイシェンスから貰った『エリーゼのために』かい? 仕方ないな。では、私は『アイネ・クライネ』を弾こう」

 皆が次々に新曲を取っていく。困った。マーガレット王女のを弾きたいけど、本人が弾かれるので駄目だ。

「ペイシェンスは何を弾くの? 『メヌエット』は午前中に2回も演奏されるから駄目ね。あら、2番でも貴女の曲が多いわね。被らないのを選びなさい」

 2番のは、アルバートが『メヌエット』、メリッサ部長が『トルキッシュマーチ』、ベンジャマンが『トロイメライ』、ヘルムートは『きらきら星変奏曲』だった。

「私は『きらきら星変奏曲』と『仔犬のワルツ』を弾きます」

 午前中はどうにか決まったが、午後の3番はやはり揉めていた。前世の名曲を弾きたいと願っても、キャサリン達3人が自分枠に取ってしまったのだ。なので、後は4曲。それを8人で取り合っている。

「だからもっと作曲しなさいと言っていたのに、私の言う事を聞かないからよ」

 何故か私がマーガレット王女から叱られた。納得できないよ。あげたのも含めたら7曲も提供したのに。プンプン。

「後、1曲あれば、あんなに揉めなかったのよ」

 知るかぁ! と怒鳴りたいが、ぐっと我慢する。

「メリッサ部長が何とか纏めるだろう。それより、1番は人数が少ないから、後2曲は弾かなくてはいけないな。私が『トルキッシュマーチ』を弾こう。後は、メリッサかマーガレット様が何か弾けば良い」

 勝手なアルバートにマーガレット王女も呆れる。

「私は結構ですわ。アルバートが4曲弾けば良いのでは?」

 「ふうん、何にしようかな?」なんて本気で悩んでいるが、メリッサ部長に叱られた。

「私とアルバートは1番と2番に出るのよ。ここはマーガレット王女とペイシェンスに3曲ずつ弾いて貰います」

 アルバートが外されたので「私は『トルキッシュマーチ』を弾くわ」とマーガレット王女が宣言する。

 私は少し悩んでリリーナにあげた『トロイメライ』にした。この曲好きだからね。

 結局、3番は揉めに揉めてメリッサ部長の雷が落ちた。

「先ずは自分の新曲を決めなさい。後は短い曲をくじ引きよ。文句は言わせないわ」

 他の時間は10曲程度なのに、3番は16曲も演奏するのか。短い曲が多いけど、何となく時間オーバーしてコーラスクラブと喧嘩になりそうな気がする。午後は講堂に近づかないでおこう。

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― 新着の感想 ―
[一言] この世界って著作権とかどうなってるんだろ? 無い場合は王族に散々知識絞られて終わりになっちゃうけど。
[気になる点] 魔王や四季/春は取られた曲に入っているかな
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