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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第四章 中等科一年の秋学期
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モリーとマリー!

 パーシバルが帰ったから、私は放置していたモリーとマリーの件を解決しなきゃね。

「メアリー? モリーとマリーは?」

 メアリーが眉を顰める。何かあったのかな?

「あの子達は召使い部屋のお風呂に入れていますわ。信じられませんが、半年以上もお風呂に入っていないのです!」

 あああ、それは困るね! 清潔第一だよ。

「まぁ、お湯で身体を拭いたりはしていたようですが、グレンジャー家にいる限り、不潔は許せません」

 風呂に入り、メイド服に着替えた2人が連れて来られるまで、私はパーシバル様が持って来たマントに守護魔法陣を描いておく。


 3枚目だから慣れている! サラサラと描いて、刺繍をし始めたら、メアリーが2人を連れて来た。

「まぁ、モリーもマリーもよく似合っているわ」

 ドレスメーカーの所で見た時は、髪の毛は下ろしていた。でも、キチンと結い上げて、メイド服を着た2人は、なかなか美人さんだよ。

「服まで支給して頂いて、ありがとうございます」

 やはりモリーの方がしっかりしているね。マリーは横で頷いているだけだ。

「私は、メーガン・ドレスメーカーでドレスを作っているのだけど、デザインがありきたりで不満だったの。2人は、縫うのはできるでしょうが、型紙とかは作れるの?」

 これが重要なのだ。モリーは自信なさそうに黙る。

「私はできると思います。させて下さい!」

 おお、大人しいマリーは型紙も作れるみたい。

「では、まずはこの服を作って欲しいのです」

 メアリーに私の乗馬服を持って来て貰う。アンジェラにプレゼントするつもりなのだ。ほぼ、同じ身長だからね! グッスン! 2歳下だけど、追い抜かれそうだよ。

「まぁ、素敵な乗馬服ですね!」

 マリーは、すぐにキュロットスカートの利点に気づいたみたい。

「布は、これを解いて縫い直して欲しいのだけど、大丈夫かしら?」

 何代か前の夫人の喪服だけど、新品にしているし、物は良いからね。

「ええ、勿体無い! 高級な絹ですが、宜しいのでしょうか?」

 勿論だよ!


 後の下宿の引き揚げとか、賃金とかは、メアリーとワイヤットに任せる。

 私は、パーシバルのマントと刺繍の道具をバスケットに入れて、これは私が持って寮に向かう。

 メアリーは、婚約者のマントを誰にも触らせたくないと言ったら、笑って許可してくれた。

 ここら辺の基準は、よくわからない。


 それにしても、メアリーとグレアムはこのままで良いのかな? この前、リチャード王子に聞きそびれたよ。マーガレット王女とパリス王子の件であっぷあっぷだったからさ。


 ふう、マーガレット王女は、どう考えておられるのかな? もう少し国際問題や内政問題を勉強したいと言われていたけど、縫うのが遅すぎるのだ。

 くけ台、キャメロン先生には渡したけど、運針が下手だと効果は薄いかも……。

 やはりミシンを作らなきゃ! 何故、糸が絡むのかな? 何か引っ掛かっているけど、それが何か分からない。

 ゲイツ様に暗記術を習えば、前世で見た事も思い出せるのかな? うううん? 確かミシンにはミシン糸があったと思うけど、どう違うの?


「ツルツルしていたような気がする! 巻き方が違うのかしら?」

 手縫いの糸よりも表面が硬かったような?

「ああ、喉に魚の骨が引っ掛かった気分だわ!」

 上糸調節器やボビンケースのネジで調節しても、少し縫ったら、ぐじゃっとなってしまう。

 エステナ神も転生させるなら、スマホの検索機能とかつけてくれたら良かったのに……はぁ、可愛い弟達と出会えたのは感謝しかないし、素敵なパーシバルという婚約者もいるのだ。

 これ以上を、求めるのは駄目だよね。

「ミシン糸を蝋でコーティングしてみようかしら?」 

 ツルツルな感じにはなるよね? この蝋は、動物性の安いのでも良い。


 なんて、悩んでいるうちに王立学園に着いた。

次の月曜から、冬の魔物討伐で、1週間はマーガレット王女の側にいられない。

 まぁ、パリス王子も討伐に参加だから、その点は安心なのだけど。

「メアリー、2人の教育をお願いしておくわね。お針子として、私のドレスを作って貰うつもりなのだけど、メイドとしても働けるように教育して欲しいの」

 メアリーは、引き受けてくれたから、2人については任せよう。


 本当は、家政婦と秘書も必要なのだ。家政婦は、結婚するまでに見つければ良いけど、秘書は緊急に必要だよ。

 やはり、家から通った方が自由時間が多くなるのかもね。

 メアリーを帰して、パーシバルのマントに刺繍をしていたら、マーガレット王女が寮に来られたみたい。


 特別室に行くと、おお、勉強中だった! ディスク型のオルゴールは流しているけど、家政数学の宿題と予習をしている。

「ああ、ペイシェンス! 良いところに来てくれたわ。お母様と話し合って、2年生からは文官コースも取ることにしたの。でも、それには条件があって、家政コースのかなりの単位を取らないと駄目だと言われたのよ」

 卒業できないと大問題だからね。

 一番苦手な家政数学を勉強するのは、良いけど、単位的に考えるなら得意な科目の修了証書を狙う方が良いかも?

「マーガレット様、古典と歴史とマナー3と第一外国語と栄養学の修了証書を取りましょう!」

 マーガレット王女は、音感が良い。サミュエルにやったやり方の応用だけど、デーン語の歌で覚えよう。

「デーン語は、オーディン様に手伝って貰えるかも?」

 えっ? マーガレット王女からオーディン王子の名前が出てくるの珍しいよね。

「そうですね、母国語ですから上手いのは当然ですし、良いと思います」

 ネイティブスピーカーとの会話は良いと思うよ。


 古典はかなり勉強しているし、歴史はカードをリュミエラ王女と一緒にゲーム感覚で勉強したら捗ると思う。

 マナーは、修了証書を取れそう。後は、栄養学と刺繍と習字と美容……そして料理と裁縫は、秋学期は諦めよう。

 習字はいけるかも? 刺繍は……ちょっと無理かも? よし、栄養学と美容の修了証書を目指そう!


 マーガレット王女に家政数学の説明をして、宿題をやってもらっている間に、栄養学の教科書を読む。

 栄養学は、一度も授業を受けてないから内容も知らなかったからね。

「ああ、これは簡単だと思うわ。この教科書は栄養学1なのね。2と3を手に入れたら大丈夫そう!」

 少し纏めて手助けすれば、マーガレット王女はかなり暗記力もあるから大丈夫そうだ。


 美容は髪の毛を整える練習をしないと合格できない。仕方ない、私がヘアーモデルになって練習して貰おう!

 こんな時は、生活魔法があって良かったと思うよ。どんなに悲惨な髪型になっても、一瞬でセットし直せるからね。


「マーガレット様、お勉強中なのですか?」

 リュミエラ王女が少し驚いている。

「ええ、今年中に多くの単位を取って、来年からは少し政治的な事を勉強したいと思っているの」

 ハッとした顔をリュミエラ王女もした。

「それは、素晴らしい考えですわ。コルドバ王国で家庭教師に勉強を教えて貰っていましたが、下の弟には政治や経済的な事も教えているのに、私は全く習いませんでした」

 王子は、いずれは王になってコルドバ王国を治めなくてはいけないからね。

「ふふふ……リチャードお兄様のお話が理解できるようにならないと、困りますものね」

 ふんす! とリュミエラ王女も勉強する気が湧いてきたみたい。


 リュミエラ王女は、刺繍と習字は修了証書が貰えそう。

 料理と裁縫は、無理そう。ほぼ、マーガレット王女と同じだね。

 古典も修了証書を取っているし、第一外国語はあと少しみたい。

「育児は修了証書を取るつもりだし、栄養学も取りたいわ。教科書を貰ったの」

 おお、それは良いね!


「マーガレット様もリュミエラ王女も私が栄養学を纏めますから、暗記して下さい。歴史はカードをお互いに出し合って、ゲーム感覚で覚えたら楽しく勉強できますよ」

 リュミエラ王女が「私も王女ではなく様付けで呼んで欲しい」と言った。

「ええ、では他の方がいない時だけ」

 マーガレット王女がクスクス笑う。

「ペイシェンスと会った日に、私が言った言葉と返事も同じね」

 ああ、そうだったかも? 長い付き合いになったね。


「来年からは、ジェーンが寮に入るし、側仕えのアンジェラと学友達も入るみたい。それを聞いたエリザベスとアビゲイルも入ってくれるのよ」

 おお、それは賑やかになりそう。

「マーガレット様、カレン様を忘れておられるわ」

 あっ、それは……まぁ、半分決定かな?

「エリザベス様が寮に入って下さるのは嬉しいですわ。ドレスのデザインとか相談にのって貰いたいのです」

 あああ、マーガレット王女の緑の目がキラリとした。

「ペイシェンス、新しい流行を生み出そうとしているのね。今のドレスは、お母様が子供の頃に着ていたのとほぼ同じなのよ。社交界のドレスはかなり変化したのに、お嬢様ルックは同じだなんておかしいわ」

 そうなんだね。屋根裏部屋にある何代か前のドレスは、コルセットで腰を締めて、ドバァとスカートが広がったスタイルで、今のスマートなドレスとは違うとは思っていた。

「今のドレスメーカーは、母が使っていた所で、少しデザインが気に入りませんでしたの。丁度、そこのお針子を雇いましたから、新しいデザインのドレスを作って貰おうと考えているのです」

 2人の目が輝く。

「良い考えだわ。少し変化が必要ですもの」

 この件は、皆も不満に思っていたみたい。アップタウンの若い服を飾っていたドレスメーカーと協力できたら良いな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] み、ミリー? [気になる点] このままじゃ紡績にも手を出すことに! いや、やっぱり感想にあった蜘蛛糸に……?
[良い点] 孤児院コンビの次はお針子コンビ! グレンジャー家の美点ですね、こだわりのない合理的な思考は。 庶民の才能を汲み上げるのって、夢がある展開です。 [一言] ミシン、モノフィラメントも試せば…
[気になる点] 婚約者のために守護魔方陣を刺繍していますが、肝心のペイシェンス自身の分は用意しないのでしょうか。 ゲイツ様が守ってくれるでしょうが、魔法使い用のマントに刺繍して持っていってほしいな。討…
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