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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第四章 中等科一年の秋学期
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王妃様のお願い

 王妃様の部屋に案内された。

「ペイシェンス、パーシバル、婚約おめでとう」

 婚約を祝す為に呼ばれたのかな? さっき出かける前にも言われたけど、時間が無かったし、お礼を言えなかった。

「ありがとうございます。それと母の形見のティアラを下さり、感謝しております」

 深くお辞儀する。

「ペイシェンス、パーシバル、お座りなさい」

 2人で座ると、王妃様は微笑んで話し始めた。


「あれは、私の実家のモライア様が買って保管されていたのです。ユリアンヌをとても可愛がっていましたからね。私は、それを譲って貰っただけですわ。ユリアンヌのティアラは、ペイシェンスが社交界デビューの時に付けるのが相応しいと思ったから」

 モライア様って、ゲイツ様の実母だよね。母親の再従姉妹になると聞いたけど。

「モライア様にお礼状を書かなくてはいけませんね」

 王妃様は、ふふふ……と笑う。

「モライア様は、幼くして手放したゲイツ様の事を常に気にかけておられます。本当はペイシェンスに妻になって欲しかったのでしょう」

 えええ、横にパーシバルがいるのに、そんな事を言わないでよ。

「御免なさいね。私も少し嫌味を言いたい気分になってしまったの。ペイシェンスを息子の嫁に欲しいと願う方は多かったのよ」

 パーシバルは、微笑んで答える。

「ペイシェンス様を得たのですから、少しぐらいの波風は覚悟しています」

 格好いい! 惚れ直しちゃう。


「そうね、その覚悟がマーガレットには足りないのだと思うわ。それと、ペイシェンスのように相手を信じる強さもね」

 こちらが本題だね。私も、まだまだ信じる強さが足りないのだ。

「ペイシェンス、パーシバル。マーガレットの覚悟が足りないなら、私はソニア王国の次期王妃など無理だと反対するつもりです。恋愛感情だけで、王妃の座は保てるものではありませんからね」

 ひぇぇ、厳しい言葉だけど、マーガレット王女の事を愛しているからだよね。

「では、マーガレット王女の覚悟が決まれば、賛成されるのですか?」

 えっ、そういう意味なの?

「王女として生まれた義務ですからね。でも、今のままでは、駄目です。パリス王子の魅力だけを見ているのでしょう。それでは、あの複雑な親子関係も理解できませんし、嫁いでもパリス王子の役にたてませんわ」

 つまり、マーガレット王女も不幸になるし、国の為にもならないと王妃様は考えているのだ。


「あのう、パリス王子とマーガレット王女は、よく話し合う必要があるのではないでしょうか?」

 王妃様とパーシバルに苦笑された。

「パリス王子に誘惑する機会を与える事になりますよ」

 そうか、駄目なのか。パーシバルに呆れられたよ。

 王妃様は、少し考えて口を開いた。

「ペイシェンス、パーシバル、良いかもしれません。今は表面上のパリス王子の魅力だけをマーガレットは見ています。彼の複雑な生い立ちとか、影に隠れた感情を読み取った上で、好きだと言えるのかしら?」

 勿論、2人きりにはさせられない。つまり、私とパーシバルが常に付き添うのが求められる。

「あのう、パリス王子と距離を置かせたいのなら、寮を出て、王宮に戻られたら、王妃様の監視下に戻られるのでは?」

 ふっと微笑みが深くなる。

「今、距離を置かせたら、パリス王子に恋焦がれるだけになります。もっと相手を冷静な目で観察しなければならないのです」

 つまり、寮生活のままだね。私は、側仕えとして、より一緒に行動しなくてはいけないって事だよ。

「マーガレットをお願いしておきます」

 王妃様に頼まれたけど、少し荷が重い。

 

 王宮を辞したけど、気持ちが重たいまま別れたくないので、公園を散歩する。

 後ろからメアリーがついてくるけど、会話の内容は聞こえないから、マーガレット王女とパリス王子の話や、カリーナ妃について話し合う。

「カリーナ妃は、何故、自分の子供の能力を見極められなかったのかしら? 能力が無いのに、王位に就けても、苦労するだけだと思うわ」

 パーシバルは、少し驚いた顔をした。

「王の愛人なら、普通に持つ野望だと思いますが、ペイシェンス様には理解できないのでしょうね。素直な気持ちのままでいて下さい」

 あっ、少しお子様扱いされている。

「少しは理解できますわ。カリーナ妃は、シャルル陛下の気持ちを確かめたかったのでしょう。王妃様と離婚する気持ちがあるのか、本当に自分を愛しているのか? でも、私なら絶対に子供を利用しませんわ。それに、そんな優柔不断な男は捨てて、自分で子供達を厳しく教育し直します」

 パーシバルが爆笑した。

「いや、全く違う考えで生きておられますね。それに、そちらの方が私は好きです!」

 2人で笑ったら、重苦しい気持ちも飛んでいった。

「ふふふ、浮気はしないと言われたのを信じていますからね!」

「分かっています。捨てられるのは嫌ですからね」

 いちゃいちゃするのって楽しいね! それに、あのまま別れるのは嫌だった。

「明日は、前に話していた屋敷を見に行きませんか? 父も、暫く空き家になっていたようだから、荒れているなら別の屋敷にした方が良いと言っていました」

 明日は、新居探しだよ! テンション上がるね。

 屋敷に着くと、頬にキスをして、パーシバルは帰っていった。


 さぁ、エバはツナを作れたかな?

「明日はサンドイッチを寮に持って行くから、少し台所でチェックをします。マーガレット王女やリュミエラ王女やパリス王子やキース王子やオーディン王子、それにアルーシュ王子も食べられるのですからね!」

 並べた王女と王子の多さに、メアリーが驚いている隙に、台所へ急ぐ。

「エバ、コンフィはできた?」

 頷いて、鍋を差し出してくる。うん、できているね。綺麗なピンクベージュのコンフィだ。

 でも、一切れが大きくない? 一体どのくらいの大きさの魚なのかな?

「これにキュウリのピクルスと玉ねぎの微塵切りをマヨネーズであえるの。それをサンドイッチの具にすると、とても美味しいのよ」

 未だ信用していないみたいだけど、コンフィを少し切って味見をする。

「まぁ、チキンの蒸した物に似ていますが、それよりも柔らかいです。魚臭さは感じませんね」

 そうなんだよね! 納得してくれて、良かったよ。これから、マーガレット王女は精神的に大変かもしれないから、せめて美味しい物を食べて元気を出して貰いたい。


 それと、食欲魔人の初等科の王子2人と学友達には、ガッツリとしたサンドイッチも考えている。

「このレシピでカツをあげて、千切りキャベツとソースを掛けたサンドイッチも作ってね。ソースのレシピも渡しておくわ。少しとろみがある方が良いの」

 カツサンドなら、満腹感があると思う。

「あのう、ハンバーグを挟んでも美味しそうですが?」

 ああ、ハンバーガーを忘れていたよ!

 

 パーシバルが届けてくれた籠をチェックする。高級な食パン、卵、ハム、野菜……バンズは無い。

 ハンバーグサンドイッチも悪くないけど、ハンバーガーが食べたい。

「エバ、小さな丸い柔らかなパンは焼ける?」

 前は、天然酵母を使っても、小麦粉の質が悪かったから、少しだけ柔らかなパンしか焼けなかった。

「ええ、もしかして、それにハンバーグを挟むのですね! 一口大のパンに小さなハンバーグ! 美味しそうです!」

 一口大で無くても良かったけど、こちらではお上品にしなくてはいけないからね。

「パンを焼いたら、半分に切って少し焼くの。それにレタスを敷いて、ハンバーグを乗せ、玉ねぎの微塵切り、ピクルスを薄く切って乗せるの。トマトソースを煮詰めたのを掛けて、上のパンで挟んで出来上がりよ」

 そうだ! バラけないようにスティックを刺した方が良い。

 カツサンドとハンバーガーは、スティックを刺した方が食べやすそう。

 卵を浄化して、工房に向かう。そういえば、卵の浄化器は未だ作ってなかったね。


 夕食まで、工房で可愛いスティックと沸くポットと金属のコップを20個作る。これは冬の討伐用だよ。

 そうだ、モラン伯爵と父親は話し合ったのかな? 後で聞かないといけない。

 それと、パーシバルのマントを作らなきゃ。

「忘れていたわ! 巨大毒蜘蛛の糸を加工しなくてはいけないのよ」

 もつれた塊の巨大毒蜘蛛の糸に「真っ直ぐになれ!」と唱えたら、綺麗な糸になった。

 銀のコーティングは、また後にしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] ラブラブですな!パーシヴァル、もし浮気したらあっという間にバレて、ペイシェンスを嫁に欲しい勢に告発され即婚約破棄なり離婚なりさせられそうです。恋愛的に強火で押してくるようなキャラは居ないけど…
[良い点] >「あのう、パリス王子とマーガレット王女は、よく話し合う必要があるのではないでしょうか?」 このあたりについて、作者様のコメントの >ペイシェンスにとって、貧乏だったグレンジャー家の事…
[気になる点] パリス王子とマーガレット王女の関係は、アルーシュ王子の入寮で変わったりするのかな? キース王子とオーディン王子みたいにパリス王子とアルーシュ王子も仲良くなればと思うけど、無理かな。 …
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