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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第四章 中等科一年の秋学期
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初デートはキャンパスで

 指輪のサイズを調整して貰う間、初デートをする。

「どこか行きたい場所はありませんか?」

 そんな事聞かれたら、いっぱいあるんだよ!

「私は、学園と王宮とバーンズ商会しか行った事が無いのです。あっ、この前カルディナ街にも行きましたけどね。だから、他の所なら何処でも!」

 パーシバルとはカルディナ街に行ったし、何処が良いかな?

「そうだ! ロマノ大学に行きましょう!」

 あっ、行ってみたいと思っていたんだ。

「ええ、一度見てみたかったのです」

 大体の位置は知っていたけど、南門までの大通りからは1つ外れているから、行った事は無かったんだ。

「お父上が学長なのに、ペイシェンス様は行かれた事もないのですね」

 パーシバルに呆れられたよ。


 土日は授業はない筈なのに、キャンパスには学生が何人も歩いている。

「大学はお休みでしょう?」

 私が不思議に思っていると、パーシバルが笑う。

「寮生もいますし、研究室で学んだりしているのでは? さぁ、図書館に行ってみましょう」

 パーシバルにエスコートされて、ザッとロマノ大学を見学する。

 図書館は、王立学園よりも広くて立派だったけど、ここでは話せないので、カフェテリアでお茶をする。

「パーシバル様はよくご存知なのですね」

 ああ、従兄弟のミッシェル・オーエンがロマノ大学に通っていると言っていた。

「ええ、ミッシェルに案内して貰ったのです」

 ここまでは甘いデートだったけど、話し合わないといけない事があったんだ。

「冬の魔物討伐についてですが、攻撃魔法を実地訓練すると言うのはあまりに無茶です」

 そうだよね!

「私もそう思いますわ。でも……」

 パーシバルも困っている。

「陛下は、ペイシェンス様を王宮魔法師になさりたいのでしょうか?」

 私は、なりたくないんだけど……。

「一度、お父様と相談してみます。私は王宮魔法師にはなりたくありませんし、冬の魔物討伐も御免ですから」

 うちの父親が断ってくれたら、行かなくて良いんじゃないかな?

「もし、参加を強制される様な事があれば、私も反対しますから」

 それは、パーシバルの立場が悪くならないかしら?

「あまり無理はなさらないで下さい。魔物の肉には魅力を感じているのですから」

 深刻な話なのに、パーシバルはプッと吹き出した。

「ペイシェンス様は、楽天的ですね! それと、少し食いしん坊さんです」

 意地汚いのは、転生した時に飢えたトラウマだよ。いや、前世から美味しいものは好きだったかも?

「お恥ずかしいですわ。でも、弟達も食べ盛りですから、冬中、魔物の肉が食べられるのはありがたいです」

「ええっ? そんなに配分されませんでしたが……ああ、ゲイツ様ならそのくらいは倒しているのかもしれませんね」

 討伐した数に応じて、肉も配分されるのかしら? ちょっとやる気になってしまう自分に驚くよ。

「これから攻撃魔法を習いますから、習得できたらの話です。できなかったら、不参加だとキッパリ断りますわ」

 パーシバルに呆れられたよ。

「ペイシェンス様は、私の考えの斜め上をいかれますね。それは、陛下に目をつけられる筈です」

 ぶー! それはないよ!

「私は、細々とした生活を豊かにする道具を作ったり、綺麗な小物を作ったりしたいのです。外交官になることができないのなら、ロマノ大学で何を学ぶべきなのかしら?」

 行く意味があるのかな? ここのキャンパスは素敵だし、こうした学生生活も魅力的だけど……。

「外交官になられないと決まった訳ではないでしょう。国内でも仕事はありますよ。でも、他に興味があるものを学ばれたら良いのかも?」

 他に興味がある物?

「植物や鉱石かしら? 薬学は上級薬師の資格を取りたいですし、錬金術はグース教授は苦手ですが、素材の勉強はしたいと思っています」

 うっ、魔法使いコースになりそう! 科学的な事は錬金術になっちゃうからね。

「ふふふ……考えが顔に出ているから、わかりやすいですね。魔法学科なんか選択したら、王宮魔法使いに決定してしまいますよ」

 それは勘弁して欲しい。

「この前、上級王宮魔法使い達に怪しいチビっ子だと睨まれましたし、ゲイツ様ほど傲慢にはなれないので絶対に嫌だと痛感しましたわ」

 女官も女の世界でややこしそうだと思ったけど、男の官僚や王宮魔法使い達の世界もややこしそう。

「ペイシェンス様は、自由にされている方が良いのかもしれません。でも、私の婚約者なのは忘れないで欲しいです」

 ああ、こういった所がパーシバルを好きな理由の一つなのかも。私を縛りつけたりしないで、でも、少しだけ捕まえていてくれる感じが丁度良いんだよね。

「パーシバル様こそ忘れないで頂きたいですわ」

 2人でいちゃいちゃ話すのも楽しい。


「月曜が怖いですわ」

 私の不安をパーシバルが笑う。

「私も睨みつけられそうな相手が何人もいますが、全く恐れてはいませんよ。だって、ペイシェンス様は私の婚約者なのですから」

 ああ、その強気が羨ましいよ。

「私は中等科1年の中でも1番の歳下ですし、他の方から嫉妬されそうで……ああ、マーガレット王女とリュミエラ王女は、喜んで下さるでしょうが……恋バナを訊かれるのは困りますわ」

 パーシバルは女の子達のこんな話は知らないだろうね。

「姉のナタリアも社交界デビュー前に婚約していましたが、そんなに苦労はしていなかった様ですけど? まぁ、割と前から縁談が持ち込まれていたみたいですけどね」

 ふうん、お姉様もモラン伯爵夫人やパーシバルの顔面偏差値の高さからいって美人そうだよね。

「お会いしたいですわ」

 夏も領地に行った時も会えなかったよ。

「ナタリアは、今はモーリス様と一緒にコルドバ王国に行っています。ああ、そんな顔をしないで!」

 やはり、外交官は妻が同伴するのが普通なんだね。

「コルドバ王国は、近いですし、今回のリュミエラ王女との婚姻の件で、王妃様とも話し合う事案が多いからナタリアも同行したのです」

 慰められても、やはり気にしちゃう。

「それに、私が外国に行っている間、留守を護って欲しいです」

 ああ、でもモラン伯爵が今は王都にいるのに?

「父は外務大臣で忙しいですし、領地の方は代官に任せっきりです。この前、サティスフォード子爵を見て、もう少し領地の管理について勉強すべきだと感じたのです。それに、ペイシェンス様の領地もありますからね。そちらの管理だけでも忙しそうですよ」

 ああ、忘れていたよ!

「王都に近い方が管理は便利そうですけど……海産物も捨てがたいです」

 あっ、また食い気に走っている。

「乾物も魅力的ですよね。母にペイシェンス様から頂いた干鮑のレシピを見せたら、とても喜んでいました」

 レシピで思い出したよ!

「カルディナ街で買った調味料で、新しいレシピを考えますわ」

 流行病で忙しくて、レシピどころではなかったからね。

「ペイシェンス様は、忙しそうですが、私との時間も作って下さいね」

「勿論ですわ! パーシバル様、私にマントに守護魔法の刺繍をさせて下さい」

 冬の魔物討伐なんて、危険かもしれないもの。

「それは、ありがたいですが、無理をなさらない様に。収穫祭の準備も忙しいのでしょう?」

 ああ、音楽クラブを2回サボったよ。アルバート部長にリュートの練習をさせられそう。

「ええ、でもパーシバル様も収穫祭の準備が忙しいのでは?」

 パーシバルは肩を竦める。

「私は、演目の時間と順番を決めるだけですから、忙しくありませんよ。それに学生会のメンバーを使っていますからね」

 そういうのが上手そう。私の苦手分野だ。

「人を使うのが下手なのかも? これではいけませんね」

 本心から言ったのに、パーシバルに笑われたよ。

「王宮魔法師のゲイツ様をチョコレートで操り、カエサル様を新しいアイディアで夢中にさせ、アルバート様も新曲で熱狂させているのに?」

 ううん? 違うのだけど、そう言われると、そうなのかも?

「このところ、お父様にも報告をおざなりにして叱られてしまいましたの。これからは、少しセーブしていかないといけないのかもしれません。でも、ミシンも作りたいし、新しいレシピも考えたいのです」

 あっ、バーンズ公爵と話し合う予定も忘れていたよ。

「ペイシェンス様、これからはスケジュール表を作られた方が良いですよ」

 確かにね! ラシーヌ様からも手紙の返事が来ていたよ。

「ああ、アマリア伯母様にも挨拶に行かないといけないかも?」

「ああ、私も忘れていましたが、この縁談はモンテラシード伯爵夫人からでしたね」

 2人で顔を見合わせて笑う。

「手紙を書いて、訪問の予定を伺いましょう。一緒に挨拶に行った方が良いですね」

 こうやって、予定を決めていくのって親しい間柄みたいで嬉しい!

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ペイシェンス嬢が幸せニコニコなのが一番嬉しいです( 〃▽〃) パーシバル様。 父親がロマノ学長になったからって、学校見学にすぐ行ける娘かなぁ?ペイシェンス嬢は。 そんな図々しくも暇でも無く…
[気になる点] 婚約者になったんだから、親しいでしょうペイシェンスー [一言] うーん、あんまりデートっぽくない(^^;) 他の方の感想で「桜」という曲を上げているのを見かけて、そういや……あの曲っ…
[一言] ペイシェンスの中の人が世間知らずなのは事実ですが、そもそも大本のペイシェンスが礼儀作法は完璧でも、免職した父親の煽りを受けて相当な箱入り娘でしたからね。 その父親も再び職を得て貴族社会に復帰…
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