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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第四章 中等科一年の秋学期

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土曜の昼食会とお茶会

 土曜の朝は、弟達と体操から始まる。金曜の錬金術クラブにも行きたいけど、やはり私は弟達(エンジェル)と一緒が良いな。だって、そのうち弟達も自立する。この一時期だけなんだから貴重だよ。

 でも、錬金術クラブも後数年だけなんだよな。再来年にはカエサル部長とアーサーは卒業してしまうんだもん。火曜は全力で錬金術クラブだね。

 今日はプリースト侯爵家で昼食会、そしてバーンズ公爵家でお茶会の二本立てだ。

「秋物のドレスが仕立て上がって良かったですわ」

 まだ暖かいけど、確かに暦の上では秋だよね。濃いグリーンのドレスに着替えながら、エステナ神に『流行病はやめて下さい』と祈っておく。

 暗いグリーンのドレスなので、髪には細い同色のリボンを編み込む。

「お嬢様の髪は張りがあって綺麗ですね」

 確かに、転生した当時は栄養が行き届いていないからか、細くてペシャンとしていたけど、近頃はかなり艶も良くてしっかりしている。

「バーンズ公爵家にはハート型と丸型のチョコレートの箱を5箱ずつで良いのですね。それと、籠に入れたメロン。プリースト侯爵家には丸型のチョコレート一箱で宜しいのでしょうか?」

 確かに、昼食会とお茶会では負担が違うかも?

「ジョージに一番大きなメロンを採って貰いましょう」

 それに、ベンジャミンはどちらも食べたそうだったからね。魔法使いコースの授業で最初に話しかけてくれたお礼の気持ちだよ。

 今回はノースコート伯爵も一緒だ。だから2台で行くのだと思っていたけど、リリアナ伯母様は自分の侍女は置いて来ていた。

「バーンズ公爵家にも、プリースト侯爵家にも、晩餐会にお呼ばれしたから、その時に手土産をあげたの。だから、今日は侍女は連れて来ていないのよ。近くだから、一台で行きましょう」

 もう秋の社交界シーズンになっているみたい。マーガレット王女の元学友達は、社交界デビューしたのかな? なんて考えているうちにプリースト侯爵家に着いた。

「まぁ、バーンズ公爵家のすぐ横なのですね!」

 ベンジャミンがバーンズ公爵家に入り浸っているのが理解できるよ。

 よく似た豪華な屋敷だけど、少しだけ新しい気がする。そして、出迎えてくれたベンジャミンは、いつもより髪型も丁寧に整えてあり、ライオン丸ではなかった。

 とても優雅な態度で、ノースコート伯爵夫妻とサミュエルに夏休みの滞在のお礼を言い、私をエスコートして応接室に案内する。メアリーが執事にメロンの籠とチョコレートの箱を渡しているのにも騒いだりしない。錬金術クラブの態度とはかなり違うね。

 プリースト侯爵はベンジャミンにそっくりで、金髪が今は整えてあるけど、ライオン丸になりそう。侯爵夫人は、バーンズ公爵に似ているけど、意外にも可愛い系の貴婦人だった。

 応接室では、プリースト侯爵夫妻とノースコート伯爵夫妻が話をするので、私とサミュエルとベンジャミンはほとんど口を開かない。

「食事の準備が整いました」

 執事が告げると、大人達はお互いにエスコートしながら食堂へ向かう。私はベンジャミンにエスコートされながら、サミュエルと一緒に行くよ。

「チョコレートとメロンを持ってきてくれたんだな」

 小さな声でベンジャミンがお礼を言う。

「ええ、どちらとも食べたそうだったから」と私も小声で話す。

 屋敷の中には、彼方此方に花が生けてあり、ベンジャミンの家らしくない感じ。どう見ても侯爵夫人の影響だね。

 昼食会は、美味しくて、手のこんだ料理が出た。教授達を招待しての食事会の参考にしたいよ。


 ゆっくりと昼食を終えたら、全員でバーンズ公爵家に移動だ。今回、昼食会とお茶会が二本立てなのは、同じメンバーで集まるからだ。

 お隣なのに馬車で移動だよ。二軒とも広いから歩くと距離があるけどね。

 こちらは、カエサルが出迎えてくれる。本当に、ベンジャミンといい、カエサルも屋敷だと上級貴族の子息っぽさ全開だね。ナシウスとヘンリーのお手本にしたいぐらいのマナーだ。

 ああ、プリースト侯爵夫人は自分の実家だし、今度はホステス役では無いから、少し気軽な感じに話しているね。それにバーンズ公爵夫人は、堂々たるホステス振りだよ。

 ロマノ大学の教授を招く時は、伯母様方の誰かにホステス役をして貰うのだけど、なかなか難しいのかも。話題をさらりと提供したり、ノースコート伯爵夫妻を退屈させないように気を使っている。

 今回は大人組と子供組でテーブルも分けてあったので、私とサミュエルも少しだけリラックスして話せる。それに、両親と離れたベンジャミンは、少しいつもの調子になっているからね。

 お茶と一緒にプチケーキとチョコレートが出た。私が持ってきた新作のアーモンドチョコレートも銀のお皿の上に乗っている。

「これがチョコレートなのだな!」

 ベンジャミンは、前のを食べたことがないのに、新作のアーモンドチョコレートを一粒口にして「うむむむ……美味い!」と少し獅子丸になって騒ぐ。

 大人達のテーブルでも、新作のアーモンドチョコレートやチョコレートバーが好評みたい。

「この口溶けが再現できないのだ」

 カエサルは、味見というより、製造方法を考えているみたい。子供組のホスト役を忘れて、ブツブツ呟いている。

「ペイシェンスは、次々と新しいチョコレートをよく考えつくな?」

 サミュエルに呆れられたよ。

「このオレンジのも美味しい!」

 ベンジャミン、次々と食べているけど、他所のお宅だよ。まぁ、いつも来ているようだから遠慮が無いのかも?

 子供組のテーブルでは、チョコレートの新作の感想や錬金術クラブのワークショップについて話す。ここにはサミュエルがいるから、どんなイベントなら参加したいか参考になるからね。

「錬金術クラブのイベントですか? 自分が錬金術ができるとは思えないから、参加する学生も少ないかもしれませんね」

 カエサルは、がっかりしたみたいだけど、これが普通の学生の意見だよ。

「では、自転車の試乗と、新しい乗り物を作るならどうかしら? その作った乗り物は持って帰れるのよ」

 サミュエルが少しだけ興味を持った。

「青葉祭で自転車に少しだけ乗ったのです。上手くは進めなかったですが、面白いと思いました。自転車の試乗はやってみたいです」

 おお、好感触だね! 餌への食いつきは良さそう。それにキックボードも男子学生は楽しんで遊びそうだよ。

「どの程度の錬金術をさせるかが問題だと思う」

 カエサルは、ある程度は材料を用意しておくべきというアーサー達の案よりも、自分で錬金術で作る楽しさを覚えて欲しいと願っているみたい。

「いきなり錬金術は難しいだろう。物を作る楽しさを体感して欲しいから、組み立て作業だけで良いのではないか?」

 あれっ? ベンジャミンは慎重派なんだね。

「サミュエルは、錬金術には興味は無いの? とても楽しいと思うのだけど?」

 私は、錬金術に興味があったけど、自分ができるかどうか不安だった。だから、一度試してみれば良いと思うのだけど?

「錬金術は難しそうなイメージがあります。それと……特殊な才能が無いと駄目な感じですね」

 サミュエルは、ソフトな言い回しにしたけど、やはり変人の集まりに思われているのかも。

「カエサル様、やはりいきなり錬金術で部品を作らせるのは難しいですよ。部員を集めるのなら、物作りの楽しさをアピールしなくては! 錬金術は入部してから徐々に教えていけば良いのです」

 あっ、整えてられていた髪が段々乱れて獅子丸になりかけている。

 大人組が子供組の声を聞きつけたのか、リリアナ伯母様が少し微笑みを深くする。ちょっと声が大きくなったみたいだね。

「ペイシェンスとサミュエルは音楽クラブに入っているのです。宜しければ、何か演奏させましょう」

 錬金術クラブの熱い話題は、優雅なお茶会には向かないみたい。

 私とサミュエルは、応接室のハノンを演奏して、皆から拍手されたよ。

「ペイシェンス、本当に上手いな!」なんて、ベンジャミンにも褒めて貰う。ノースコートでも、夕食後、何回も演奏していたと思うけど、あの時はカザリア帝国の遺跡に夢中だったからかな?

「サミュエル君も素晴らしいですね」

 本当にサミュエルは音楽の天才だよ。

 後は、大人達の会話の邪魔にならないように、大人しく小声で少しだけ話した。

「サミュエル君は、錬金術クラブに興味は無いですか?」

 カエサルは、もう誰でも勧誘する気だね。廃部は避けたいから気持ちは理解できるけど、無理な相手に無駄だよ。

「申し訳ありませんが、音楽クラブと乗馬クラブに属していますから……」と丁重に断られているよ。

「薬学クラブのメンバーを勧誘したらどうだろう?」

 えええ、ベンジャミン! マキアス先生に呪われそうだよ。彼方も人数がギリギリなのか、私の顔を見ると勧誘しているのに。でも……似ている所もあるんだよね。物を作るって所は一緒だ。

「薬学クラブと合同にしたら、人数問題はクリア出来るかもしれませんわ」

 なんて言ったら「「嫌だ!」」とカエサルとベンジャミンが大声を出して、バーンズ公爵夫人に睨まれちゃった。


 帰りの馬車で、リリアナ伯母様に説教されたよ。私は大声なんか出していないのにね!

「社交の場で、錬金術クラブの話題は避けた方がいいかもしれませんわ。令嬢らしくありませんし、興奮して大声なんてマナー違反ですからね」

 サミュエルが一言余計な事を言ったよ。

「でも、招待される家は錬金術クラブのメンバーばかりですよ。フィリップス様以外はね!」

 ああ、本当の事だから、言ってはいけない事もあるんだよ! リリアナ伯母様の微笑みが深くなったじゃない。

「リリアナ、錬金術クラブは素晴らしい発明を次々としている。それにマナーを守るよりも、活発な議論がローレンス王国の発展に繋がるのかもしれない。ソニア王国のように恋愛や優雅な生活にばかり気を取られていたら、エステナ聖皇国の餌食になってしまう」

 おお、ノースコート伯爵の援護があったよ。でも、リリアナ伯母様にとっては、令嬢はお淑やかにして良い縁談を得るのが賢い選択みたい。

「ペイシェンスが変人だと噂されたら、良縁が遠のきますわ」

 心配してくれているのはわかる。異世界では、貴族の令嬢は良い嫁ぎ先を見つけるのが一番大切みたいだからね。

「ペイシェンスは、実はモテモテなんじゃ無いのか?」

 サミュエルは、口を閉じておいてね! リリアナ伯母様の目がキラリと光った。ああ、そこから家まで近くて良かったよ。異世界ではプライバシーの尊重とか無いんだもん。パーシバルとどうなのか? とかグイグイ聞いてくる。サミュエルとメアリーの目がキラキラしてて疲れ倍増!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 読み返していて気になったのですが、 『あれっ? 陛下が気を使っている?』やその後ではベンジャミンの家名は『プルースト』で、 この話から『プリースト』に変わっているけど、どっちが正しい?…
2023/03/23 10:33 退会済み
管理
[気になる点] >ロマノ大学の教授を招く時は、伯母様方の誰かに >ホステス役をして貰うのだけど、なかなか難しいのかも。 いつの間にそんなことになってた?? やっぱりペイシェンスでは無理って思われたか…
[一言] あ、もちろん熱対策は忘れずにね、ペイシェンスでなくたっても魔法でなんとかなるでしょ。
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