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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第四章 中等科一年の秋学期

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パーシバルとデート?

 織物2の授業は楽しみにしていたんだ。柄物を織るんだもの。それに渡す物があるから、少し早めに教室に行く。

「お久しぶり! 夏休みは楽しかった?」

 ああ、織物の授業は気楽で楽しいね。ハンナやソフィアやリリーと夏休みについて話す。それに私はちょっとしたお土産も用意していた。良かったよ! 他の子もお土産をくれたんだ! このノリはAクラスには無い。

「これ、親戚のサティスフォード港のバザールで半貴石が安く売っていたから、それをいっぱい買ったの。髪飾りや、衿につけても可愛いと思うわ」

 茶色の髪のソフィアには赤系、赤毛のリリーにはグリーン系、濃い茶髪のハンナには青系のスワロフスキー型に整えた半貴石を数個ずつ小さな小袋に入れて渡す。

「まぁ! とても綺麗だわ!」

 皆のお土産も、織物を履修するぐらいだから手芸関連だ。ソフィアのは綺麗な花柄レースの2ピース、リリーは可愛いボタン、ハンナのは綺麗な鳥の羽だ。前世のクジャクの羽に似ている。

 それぞれのお土産を見て、何を作ろうかワイワイ話す。やはり、全員が手芸クラブに入っているみたい。

「ペイシェンス様がくれたような物は見たことがないわ」

 やはりビーズは売っていないみたいだ。

「ええ、買って帰った半貴石を加工したの」

 これなら、ビーズも評判になるかもね!

「まぁ、加工すると言っても難しいんじゃないの?」

 そこは便利な生活魔法があるからね!

「それより、皆様、手芸クラブなのね?」

 全員が頷く。でもハンナは「料理クラブと掛け持ちよ!」と自慢する。

「料理クラブなの? 手芸クラブと料理クラブにも入りたかったけど、音楽クラブと錬金術クラブで手いっぱいなの」

 全員に呆れられた。

「音楽クラブなんて超エリートクラブじゃない。王族や上級貴族オンリーでしょ」

 まぁ、そう見えるよね。推薦制だから。

「えええ、ペイシェンス様は錬金術クラブなの? 青葉祭でアイスクリームなんか販売するから、うちの料理クラブは凄く影響を受けたのよ」

 ハンナに苦情を言われちゃったよ。

「青葉祭でアイスクリームを作る事になった時、料理クラブに協力して欲しかったけど、カエサル部長は知り合いがいなかったの。そうか、今度の青葉祭では一緒に新しいデザートを販売しない? ハンナ様、部長さんに聞いてみて!」

 ハンナが変な顔をしている。やはり、自分達だけで青葉祭はやりたいのかな? そんなに錬金術クラブは嫌われているの? ショックだなぁ!

「カエサル様ってバーンズ公爵家の嫡男ですよねぇ。ペイシェンス様は気楽に話せるの?」

 リリーに言われて、ああ、そうか! と改めて驚く。

「同じクラブだから……それに、とても気さくな方よ」

 全員が溜息をついた。

「そうか、ペイシェンス様も子爵家だから上級貴族なのね。私達は恐ろしくて公爵様の子息と気楽に話したりできないわ」

 でも、ハンナは新しいデザートに興味を持ったみたい。

「アイスクリームだけでも画期的なのに、また新しいデザートを発表するの? 料理クラブはまた閑古鳥だわ」

 そうか、それは困るね!

「私は、いっぱい本を読んで、色々なスイーツを知っているの。でも、本では味が分からないから困る事が多いわ。その上、私の侍女は古い考えで台所に入らせてくれないから、レシピを料理人に渡して作ってもらうの。時々でいいから、料理クラブで新しいスイーツを作らせて貰いたいわ!」

 ハンナは前向きに捉えてくれた。

「ルミナ部長と顧問のスペンサー先生に聞いてみるけど、きっと許可をしてくれると思うわ。新しいスイーツのレシピなんてワクワクするもの」

 やったね! スペンサー先生は優しそうなおば様だから、許可をして下さったら、台所ゲットだよ!

 色々と便利な調理器具を作りたいけど、先ずは試してみなきゃいけないんだ。エバにレシピを渡す遣り方より、簡単だよね!

 こんな話で盛り上がっていたけど、ダービー先生が来られてからは真面目に授業を受けたよ。

「先ずは、糸を染める為の設計図を描かないといけません」

 織物2になったら、大きな織機になるかな? と少し期待していたけど、最初は卓上織機のままだ。

 縦糸の長さは決めてある。そこに模様になる白い部分を計算して記していく。ここまでは簡単だったけど、横糸は難しい。

「きちんと糸を押さないと、白い部分がズレてしまいますよ。それと計算間違いしても、模様は出ませんからね」

 縦糸の白の部分に重なる横糸を計算していかないと駄目なのだ。でも、慣れてくると簡単だね。

「あら、ペイシェンスはもう設計図を描いたのね。簡単すぎたかしら? なら、もう少し複雑な模様に挑戦しますか?」

 最初のは、4ドット模様だった。縦糸2つ横糸2つが白くなるのだ。ダービー先生が見せてくれた生地は、変形星形だ。真ん中の白い部分が3つずつになり、それに縦、横に白が1ドットずつ飛び出している。

「ええ、やってみます!」

 ドット模様も可愛いけど、複雑な模様を早く織りたい。

 こちらは描くのに時間がかかった。でも、出来上がって満足だ!

「先生、これ、できていますか?」

 リリーは泣きが入っている。

「これではドットにならないわ。ほら、ここがずれているのよ」

 他のメンバーも苦労している。

「こんな簡単な模様でも、こんなに難しいなら、作品発表で見たような模様なんて一生織れないわ」

 ハンナの絶望の声を聞いて、ダービー先生が笑う。

「ほほほ……本当は図面師がいるのだけど、やり方を覚えた方が良いと思ったのです。次の柄からは、図面師が描いた設計図で染めますよ」

 大きな溜息が教室に満ちた。私は何とか星形の設計図を描いたけど、複雑な花模様なんか描けそうになかったのだ。

「先生、先に言ってください!」

 リリーが抗議しているけど、ダービー先生は笑うだけだ。

「一番簡単なドット模様の遣り方だけでも頑張りましょうね」

 私は、一番手こずっているハンナの手助けをする。

「ペイシェンス様、ありがとう。数学は苦手なのです」

 うん、それは模様がずれているからわかったよ。

 何とか全員が描き終えて、織物2の最初の授業は終わった。


 私は、美容の教室に急ぐ。次は裁縫の授業だから、遅れていくとマーガレット王女は好きな生地を選べなくなるからね。

「ああ、ペイシェンス! この格好なのよ!」

 ああ、これは酷いね。一応はハーフアップにしてるけど、下手にコテを使っているから、カールした髪の毛がはねている。

「すぐになおします」

 いったん、ハーフアップにしているリボンを解いて「真っ直ぐになれ!」と変なコテの癖を取る。手早くアップしてリボンで結んでから、下に垂らした髪を「クルクルになれ!」と唱えて整える。

「まぁ、本当に1分しか、かからないのね。ペイシェンス、ありがとう! これなら裁縫の授業に遅刻しないですむわ」

 やれやれ、間に合いそうで良かった。他の女学生達はもう教室を移動していたからね。皆、出遅れたら、良い生地が手に入らないのを知っている。

「でも、今回限りですよ!」

「わかっているわ」

 釘をさして、図書館へ向かう。ああ、これって逢引というかデートのシチュエーションだけど、生憎と話の内容はパリス王子の事情の説明を受けることなんだよね。

 でも、なんだかドキドキしてくるよ。授業中だから人気のない図書館で窓辺の椅子に座って本を読んでいるパーシバル! わぁ、似合いすぎだよ!

「ああ、ペイシェンス様、いらしていたなら声を掛けて下されば良かったのに」

 本を閉じて立ち上がる姿も絵になるね!

「いえ、本を読んでおられるようでしたので……」なんて、つまらない事を言ってしまったよ。もっと気の利いたことを言えば良かった。

「では、庭に行きましょう!」

 図書館は静かにしなきゃいけないから、話はできない。パーシバルにエスコートされて庭に出る。

「秋咲のバラが綺麗ですね」

 それは、そうなんだけど歩きながら話すのかな? なんて思っていたら、東屋に案内された。

「ここに東屋があるとは知りませんでした」

 庭をよく散歩して、珍しくて高く売れそうなバラを切って持って帰ろうとチェックしていたけど、木の裏に建っている東屋は見つけていなかった。

「ペイシェンス様は、この東屋の名前もご存知なさそうですね。恋人の隠家アマレット・エルミタージュとして有名なのです」

 ひぇぇ! 凄いネーミング! 顔が真っ赤になっちゃうよ!

「それにしても、ここは他から見えないですが、学園はよくこんな場所に東屋を建てましたね」

 クスクスとパーシバルは笑う。

「あの木は、前は植えて無かったのです。好きな相手と密かに会いたいと願った学生が自分で植えたのがどんどん大きくなったと聞きましたよ」

 それもすごい努力だね。庭師はわかってて切らなかったのかな? なんてことを考えている場合では無かった。政治的な背景を聞かなきゃ!

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― 新着の感想 ―
ペイシェンスはマーガレット王女のお世話だけでなく、そのための場所移動が大変なのではないでしょうか。万歩計をつけてみてほしいです。食事に困らなくなっても消費も凄そうですね。ラジオ体操で体力アップできると…
毎話楽しく読ませていただいてます! 誤字・脱字ではないのですが少し気になった点があったので、感想に書きます。私も素人で詳しいわけではありませんが、スワロフスキー型に加工した半貴石、という描写について…
[気になる点] 子爵って下級貴族だと思っていたけれど、彼女たちからしたら十分上級なのね。
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