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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第三章 中等科1年の夏休み

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浜辺の女子会?

 ジェーン王女は天馬(ペガサス)、アンジェラはお花のフロートに乗って楽しそうに話している。キース王子やマーカス王子はビッグボアやイルカ(ドルフィン)のフロートに乗ったり、ボディボードで遊んだりしているけど、やはりフロートに二人乗りは無理だったみたい。ひっくり返って盛大な水飛沫が上がっているよ。

 私は、弟達やサミュエルが海水浴を楽しんでいるのを眺めながら、マーガレット王女と日除けの下で冷たいジュースを飲んでいる。

「この履物もじめじめしなくて良いわね。ペイシェンスったら夏休みなのに錬金術ばかりしているの?」

 ビーチサンダルも好評だね。あっ、錬金術で思い出したよ。

「あのう、夏休みにマギウスのマントを作ろうと思っているのです。弟達の剣術指南をして下さっている従兄弟のサリエス卿にお礼にあげようかと……」

 マーガレット王女がジュースを咽せる。

「失礼! ペイシェンス、それはもしかして伝説のマギウス(ドラゴンスレイヤー)のマントのことかしら? 貴女って賢いのにどうして常識がころっと抜け落ちているの? そんな国宝級のマントを剣術指南であげたりしたら、受け取る方も困るんじゃないかしら?」

 えっ、そうなの? 

「でも、試作品なのですよ? 下の弟のヘンリーは騎士志望ですから、それまでには完璧な守護魔法のマントを作りたいと考えているのです」

 マーガレット王女は、少し考えているみたいに麦藁(ストロー)をクルクルと回した。

「試作品とはいえ、守護魔法のマントなら国宝級だと思うわ。もしかして、お父様に献上すべきだと誰かに言われたの?」

 うん、それを王妃様に尋ねようかと思ったのだけど、陛下がまだいらっしゃるから、ちょっと困っている。だって、横にいらっしゃるのに「この試作品のマントを献上して、より良いマントを弟の為に作ります」なんて言えないよね。

「完成品ができたら、献上したいと思っているのですが……」

 マーガレット王女は手をパンと叩いた。

「先ずは試作品を献上して、完成品ができたら、それも献上すれば良いのよ! 女準男爵(バロネテス)じゃなくて女男爵バロネスに陞爵されるかもよ!」

 これ以上、目立ちたくないよ。でも、そうする方がサリエス卿に迷惑を掛けないのかもしれないね。折角のお礼の気持ちなのに上司より良いマントだとか嫌味を言われたりしたら悪いもの。

「王妃様に相談して下さいますか?」

 今日の離宮行きで尋ねようと思っていたけど、陛下がいらっしゃるので断念する。先ずはサリエス卿のマントを作ってからだから、陛下が王都に帰られてからで良いよね!

「まぁ、それくらいは良いけど……ペイシェンス、新曲もお願いね!」

 まだまだ王妃様の音楽偏愛をやめさせるのは成功していない気がするよ。

「ええ、何曲かは口ずさめるような曲は作っているのです」

 扉の開閉係の間、世界史の勉強ばかりでは飽きるから、前世の歌を思い出しながら口ずさんでいたら、メアリーがとっても喜んだ。アニソンとか歌詞は変えなきゃいけないけど、こちらの庶民受けは良いみたい。

「まぁ、歌ってみてよ!」

 やはり無茶振りが来たけど、こうして気持ちの良い風に吹かれていると、鼻歌を歌いたくなるよね!

「歌詞はまだですのよ」

 私が大好きだったアニソンをハミングする。あっ、でもこのくらいならこちらの言葉でもいけそうだね。

「とても元気が出る歌だわ! もう少し夏休みらしいのはないの?」

 夏休みといえば、沖縄の歌だよね。何曲か歌っていると、アンジェラとジェーン王女も休憩しに来た。

「ペイシェンス様、その歌はとても素敵ですわ」

 アンジェラは音楽が好きだから分かるけど、ジェーン王女も一緒にハミングしている。

「私は、コーラスクラブは嫌いでしたが、グリークラブの活動を見て、少し彼女らも反省しているのではないかと思うの。もし、改革を望むのなら、手を貸してあげて」

 えっ、コーラスクラブに手を貸すの?

「私も少し大人になったのよ。それにコーラスクラブも音楽を好きな学生の集まりなのですもの。あんな古臭い歌や上級貴族ばかりソロを歌うシステムは良くないと思うわ。これから入る新入生の為にもコーラスクラブも変わっていくべきだと思ったの」

 マーガレット王女の意見には賛成なんだけど、苦手なルイーズとは関わりたく無いんだよね。

「私は、秋学期は世界史と地理の修了証書と魔法陣の勉強をする予定なのです。だから、コーラスクラブまでは……」

 にっこりとマーガレット王女は笑う。

「私も秋学期には、魔法実技とマナーと美容の修了証書、そしてデーン語や刺繍やカリグラフィーも合格を取るつもりなのよ」

 それは御立派ですが、だからと言って私がコーラスクラブに協力する理由にはならない。何故、こんな事を言われるのか?

「もう! ペイシェンスったら、お母様にリュミエラ王女の面倒を見るようにと言われたのを忘れたの? リュミエラ王女は歌がお好きなんですって!」

 そんなの初耳だよ。グリークラブじゃ駄目なのかな?

「ペイシェンスはもう少し顔に考えを出さないようにしなくては駄目よ。普通の女学生ならグリークラブで良いのよ。でも、リュミエラ王女はお兄様の婚約者なの。他の男子学生と踊ったり、演技とはいえ恋人同士みたいにデュエットはまずいでしょ。コーラスクラブなら女学生ばかりだし、お母様も適切だと思っておられるの」

 それって、凄く窮屈だよ! クラブ活動ぐらい自由にしても良いんじゃない?

「このくらい当たり前よ。ローレンス王国の王妃となるのだから、全員の目がリュミエラ王女の一挙一動に向けられるわ。そして、何か一つでも過ちが有れば外交問題になるの」

「なら、マーガレット様もコーラスクラブに入られたら如何ですか?」

 良い案だと思ったのだけど、凄い笑顔で返されたよ。

「側仕えのペイシェンスがコーラスクラブに一緒に入るなら、考えてみますわ」

 げげげ……それだけは御免だよ!

「それにしても、リュミエラ王女の留学に側仕えとかは一緒に来られないのでしょうか?」

 マーガレット王女の顔が曇る。

「リュミエラ王女はローレンス王国の王妃になるのよ。本当なら側仕えも連れてきたいと思っている筈だけど、それを許可したらコルドバ王国の貴族に将来のローレンス王国の王宮は乗っ取られてしまうわ。だから侍女や外交官は許されても、側仕えや学友は許可されないの」

 という事は、マーガレット王女が外国と縁談があったら……私はマーガレット王女の側仕えに選ばれた時は、はっきり言って迷惑だと思ったけど、一人で外国に嫁ぐなんて孤独で可哀想だよ。横で聞いていたジェーン王女の顔も曇っている。

「リュミエラ王女様とマーガレット様はお友達になれば良いのです。歌がお好きなリュミエラ王女様ですからきっと喜ばれますよ」

 あっ、しまった! 墓穴を掘ったかも?

「そうよね! ペイシェンスにも手伝って貰うわ」

 ジェーン王女も自分が一人で他国に嫁がされる可能性に気づいて暗い表情だったが、パッと顔を綻ばす。

「私もリュミエラ王女とお友達になりますわ!」

 リュミエラ王女の歓迎ムードになったのは良いけど、やはりコーラスクラブには関わりたくない。

「ペイシェンスらしくないわ。グリークラブの時も協力を惜しまなかったのに。歌詞は私も協力するから、お願いしたいの……それともルイーズとやらがネックなの?」

 えっ、何故、マーガレット王女がルイーズの名前を知っているの? 学年は二年も下なのに!

「ふふふ……ペイシェンスの顔を見たら考えている事なんか誰にでも分かるわ。キースから成績発表会でのルイーズの貴女に対する無礼な態度を聞いたのよ。光の魔法を賜ったから自分が偉いと勘違いしているのね。そんなエセ聖女なんか誰も相手にしないわ。彼女はコチコチの貴族至上主義者ね。伯爵令嬢だから、子爵令嬢のペイシェンスより偉いと考えている馬鹿だわ。でも、今はペイシェンスは女準男爵(バロネテス)だから、貴族至上主義者的には上位になるのね!」

 えええ、あの成績発表の事件をキース王子ときたらマーガレット王女に話していたの?

「まぁ、そんな人は私のお友達にもなって欲しくありませんわ」

 ジェーン王女も眉を顰めている。あっ、その話題はマーガレット王女には突き刺さるよね。

「ジェーン、その通りよ。私は学友選びを間違えてしまったの。家柄と美貌と音楽の才能で選んで、大失敗してしまったから、ジェーンには本人の性格を考えて学友を選んで欲しいわ。私も秋学期からは何人か学友を選びなおすつもりよ。今度は賢くて優しい人を選ぶわ」

 多分、料理の授業で一緒のアビゲイル、私がいない裁縫の授業でよく隣に居るエリザベスだと思う。私もマーガレット王女と一緒に受ける授業は少ないからホッとしたよ。私との悪関係で学友を辞めさせた感があったからね。

 二人とも前の学友ほどの美貌ではないけど、とても可愛い令嬢だ。特にアビゲイルは背が低くて、私的には親近感が湧くよ。エリザベスはファッションに興味がある令嬢だ。春学期のドレスもフリルを入れようと頑張っていたのを覚えている。マーガレット王女もファッションに関心があるから、話はあいそうだね。

「ペイシェンス、学友を選んだからといって、貴女は私の側仕えなのだから、ずっと一緒よ!」

 えっ、これで錬金術クラブに大手を振っていけるかなと考えていたのがバレたか?

「ペイシェンス様、私にもお考えが分かりましたわ」

 アンジェラにも言われちゃったよ。

「アンジェラには私の側仕えになって欲しいとお母様に頼むつもりなの。学友でもある上に、側にずっといて欲しいから。大丈夫、乗馬クラブには入らなくても良いわ。それは他の学友がいるから」

 アンジェラは私より乗馬が上手いけど、さほど好きではないからホッとしたみたい。

「ジェーン王女、私はペイシェンス様から生活魔法を習っています。もし、側仕えに選んで頂ければ、髪を整えたり、美味しいお茶を淹れますわ」

 それを聞いて、マーガレット王女が笑った。

「ジェーンには髪の毛を整えてくれる側仕えが絶対に必要ね。じゃないと馬の尻尾みたいな髪型で学園生活をおくりそうですもの」

 活発なジェーン王女ならポニーテールも似合いそうだけど、バサバサに纏めていたらダメだよね。そうだ、前世の乗馬をする女性は編み込みにしていたんだよね。後でアンジェラに教えておこう。

「そうね、こんなに気軽に話せる側仕えや学友と離れてローレンス王国に留学されるリュミエラ王女に優しくしてあげないといけないわね」

 マーガレット王女の言葉に、全員が頷いた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] やはり、なろう定番の魔力注入を姫たちに……。(自動ドア前でゲイツとやったやつ) (ま、脳内で楽しんどきます)
[良い点] 毎日更新お疲れ様です。 現代知識と魔法を組み合わせていろいろなものを作っていくところが好きです。 [気になる点] いろんな人にマギウスのマントは国宝級だと言われているのに、なぜペイシェンス…
[一言] マギウスのマントが完成したら、男爵ではなく子爵にならないと割に合わないと思います。 ドラゴンブレスを防いだといわれる性能なら軍事面で超有用ですし、改良したら貴族服などにも付けれて緊急避難手段…
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