飛び級!
これでホームルームは終わりかと思ったが、ヘイガン先生は重大な話を始めた。もしかして、忘れていたんじゃないかな? だって、必須でもないクラブの話を先にするのって変だよね。
「皆、スケジュール表を見てくれ。このスケジュール表で最初の授業でテストをする」
教室が騒めく。そりゃ、そうだよ。テストって全員嫌いだ。
「騒ぐな! テストは皆の実力を知る為だ。既に習得している内容の授業を受ける必要はない。むしろ、時間の無駄だからな」
飛び級の説明みたい。真剣に聞こう。
「兄上は何科目も飛び級されているのだ。今年、残っておられるのは学生会長だからだ」
キース王子の兄上自慢だ。確かに出来が良さそうな王子だよ。でも、飛び級して卒業できなかったのは、何科目か残っているからじゃないのかな? なんて、不遜な考えでした。ペイシェンス、怒らないでよ。
「ヘイガン先生、学年を飛び級する事もできるのですか?」
おお、ルイーズ。なかなか野心的な女の子は、好きだよ。それに私の聞きたい事を聞いてくれてありがとう。
「学年を飛び級するのも可能だ。だが、実技のダンス、美術、音楽、体育以外の科目を全て合格しなくてはいけない。この4つの科目は指導する先生によって評価が違うし、習得は上の学年でも可能だからな」
魔法の実技以外は、そんなに重要視されていないのかも。スケジュール表でも、他の実技は週1回なのに、魔法の時は2回ある。魔法学と一緒にすると、週4回だ。20コマの授業のうち5分の1。やはり、王立学園は貴族を集めて、魔法の勉強をさせているんだなと腑に落ちた。Cクラスには貴族ではない平民階級の学生もいるけど、家よりきっと裕福そうだ。それに魔力がある子ばかりみたいだ。お金、欲しいな!
脱線したけど、スケジュール表を見直す。理科とか地理とか物理とか科学系は無いんだね。古典……魔法書とか古典なのかな? それとも文学的素養? 国語も加えると週に6回。多いな。数学と歴史が3回ずつ。古典はペイシェンス頼みだ。グレンジャー家の図書室には古典の本も沢山ある。ペイシェンスも読んでいたみたい。歴史も、あっ、そう言えば国語もそうだね。
『曜日、前世と同じだ。まぁ、覚える手間が省けた良かったよ』
なんて気楽な事を考えているうちに、ホームルームは終わりました。さぁ、教科書を持って部屋に行こう。
男子はキース王子の周りに集まっているし、女子はルイーズの周りに集まっていた。でも、私は飛び級に熱意を燃やしているので、部屋で魔法学の勉強をしなきゃね。できたら金曜は家に帰りたいんだもん。
魔法の実技はどうなのか分からないけど、魔法学の教科書は丸暗記した。やっぱり子ども向けだから、簡単なんだよね。でも、理解できたかは別問題。テストは合格できそうなので、魔法学については後で考えるよ。だって、私は呪文とか唱えて無いんだ。
『綺麗になれ!』とか『大きくなれ!』とかばかりなんだもの。
『謹みてエステナ神にお願い申し上げる。熱き火の精霊を我が元にお遣わし願いたし。ファイヤーボール』とか、何かの罰? あっ、上級者になれば『ファイヤーボール』だけでも魔法は使えるみたい。でも、大技はやはりエステナ神にお願いした方が成功率が高いみたい。
今度から人前で生活魔法を使う時『謹みてエステナ神にお願いします。文化的生活の為、乙女の恥ずかしさの為、トイレを綺麗に流して下さい』って言うの? まぁ、トイレは人前じゃないか。などと罰当たりな考えをしていると、ペイシェンスが怒るんだよ。頭痛いよ! 本当に、私は転生したの? 憑依しているだけで、ペイシェンスはもしかして仮死状態とか? 何とはなく、ペイシェンスは死んでるって悲しみと共に分かった。
「ペイシェンス、10歳で亡くなるなんて悲しいね。弟達の面倒はちゃんとみるからね。だから、もう少し怒るの控えてくれる? 頭が痛くなるから」
私がこの異世界に転生したのは、きっとペイシェンスが弟達の行末を心配したからじゃないかな? だって、魔石があるぐらいだから魔物もいるんだろうけど、生活魔法では退治できないもの。勇者とかあり得ないし、光の魔法で人々を治療する聖女もない。
あっ、ペイシェンスが父親の面倒もみてくれと騒いでる。まぁ、弟達のついでに面倒はみるよ。本当に10歳なのに自分より家族のことばかり。私は中身は大人だから、任せておいて!
スケジュール表
月曜 数学 国語 歴史 魔法実技
火曜 古典 数学 魔法学 ダンス
水曜 国語 歴史 古典 体育・家政
木曜 数学 国語 歴史 魔法実技
金曜 古典 魔法学 美術 音楽
毎朝、予鈴の後ホームルーム