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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第一章 王立学園初等科
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自己紹介は苦手

 退屈な入学式が終わると「クラス担任について教室に行きなさい」と指示された。

 Aクラスの担任は、背の高い男の先生だ。何だか厳しそう。ちょっと体罰とかないでしょうね。英国みたいに鉄は熱いうちに打て! とか。ちょっと怯えながら、列の後ろからついていく。

 教室はごく普通だった。机とか椅子とか木製なのは、ここでは普通だよね。窓側の前にキース王子が座る。その後は自然と順番に座っていく。私は廊下側の一番後ろ。なかなか良い席。本音を言うと、窓際の後ろが一番好きだけど、教壇の前とかじゃなくてラッキー。

「全員、座ったな。私は担任のドナルド・ヘイガンだ。数学の担当をしている」

 良かった。数学は得意だ。だって10歳程度、つまり小学校の高学年の算数なんだもん。でも、クラスはざわついている。苦手な子もいるんだろうな。

「先ずは自己紹介して貰おう」

 やっぱり、そうなるんだね。これ、大嫌いだった。それに異世界ではどんなことを言うのかわからないし……最後で良かったよ。

「私はキース。第二王子だ。火の魔法が得意だ。剣の鍛錬もしている。稽古相手を募集中だ。騎士コースに進むつもりだから、騎士クラブに入る」

 おお、見事に傲慢さを発揮した自己紹介だ。皆んな拍手しているから、私もしておこう。

「私はラルフ・マッケンジー。マッケンジー侯爵家の次男です。風の魔法を賜っています。私も騎士クラブに入るつもりです。キース王子、剣の稽古をつけて下さい」

 やはり身分順なのね。このラルフじゃなかった。横入りしたの。

「ヒューゴ・アンガスです。アンガス伯爵家の嫡男です。火の魔法を賜りました。私も騎士クラブに入りたいです」

 おっ、横入り男見つけた。ヒューゴ、嫡男なのに騎士クラブ? 騎士って次男以下がなるんじゃない? これはキース王子の腰巾着だね。このクラスの男の子はやたらと騎士コース希望とか、騎士クラブに入る子が多い。キース王子と仲良くする様に親に言い聞かされているんだろう。大変だね。10歳なのに親の欲望の手段にされて。横入りには怒ったけど、ヒューゴが気の毒になった。だってあの怖いリチャード王子の威圧を受けたんだよ。大人気ないね。

 30人クラスのうち20人が男子。でも女子もいる。

「私はルイーズ・フェンディ。フェンディ伯爵家の長女です。光の魔法を賜りました。歌が好きなので、コーラスクラブに入ろうと考えています」

 金髪の綺麗な女の子、それに光の魔法! クラスの男の子達がどよめいた。多分、ルイーズがこのクラスの女ボスだね。男はキース王子。二人には近づかないでおこう。

 何人もの自己紹介が終わり、殆どの人が聞いてない頃になって私の番。こりゃ手を抜いてもわかんないよね。

「ペイシェンス・グレンジャーです。グレンジャー子爵家の長女です。生活魔法を賜りました」

 クラスの3人の女子が生活魔法だった。最初の子は、生活魔法かぁ、と少し馬鹿にした視線を集めたけど、私はスルーされた。良かった。

「自己紹介は終わったな。ではスケジュール表と教科書を配る。あと、年間行事表もな」

 やったぁ! 月曜は数学、国語、歴史……うっ、魔法実技、これは飛び級は無理かも。生活魔法で飛び級ってあるのかな?

 金曜に期待しよう。どれどれ、古典、数学、音楽、魔法学……音楽はペイシェンスはピアノに似た楽器を弾いていた記憶があるし、私もピアノはそこそこ弾いていた。音大に行く程じゃないけど、自分の好きな曲は弾けたから大丈夫だろう。でも、魔法学……これは自信ないな。魔法なんてない世界だったもん。

 飛び級の事は後にして、スケジュール表全体をみる。数学、国語、歴史、古典、魔法学が座学。音楽、美術、ダンス、魔法実技、体育が実技。あっ、女の子は体育を家政に変更可能みたい。音楽、美術、ダンスは必修なんだね。流石、お貴族様だよ。

 私は運動は好きだったけど、ペイシェンスはあまりした事無いんだよね。それに、今更、10歳の子どもと体育なんかしたくない。生活魔法のお陰で裁縫なんてプロ級だし、ここは家政にしとこう。

 毎朝ホームルームもあるんだね。高校以来だよ。ヘイガン先生、話が短いと良いな。

「最後にクラブのパンフレットを配ろう。クラブは必須では無いが、有意義な学園生活を送る為になる。是非、前向きに検討してくれ」

 分厚いパンフレット。教科書より分厚いかも。私は週末は家に帰りたいし、できたら内職もしたい。なので、クラブに入る気なんてさらさらない。

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