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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第二章 王立学園中等科春学期
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ワイヤットに相談しよう!

 勉強会で精神的に疲れたまま馬車で送って貰う。エバときたら、お茶のお菓子を作ったらさっさと家に歩いて帰っているんだよ。私も気候が良ければ歩いて帰りたいな。でも、リリアナ伯母様は許してくれそうにない。それどころか夕食を食べていきなさいと言い出したのを、頑張って断ったんだ。

 疲れていたけど、弟達に会ったら復活したよ。

「お姉様、勉強会は上手くいきましたか?」

 ナシウスは興味津々だ。

「ええ、でも来週の土曜も勉強会をする事になりましたの」

 ヘンリーが少し悲しそうな顔をする。それはお姉様がいなくなるのを悲しんでいるんだよね。苺を手土産にしたのを悲しんでいるんじゃ無いと信じるよ。

「お姉様、私達にもデーン語を教えて下さい」

 可愛い弟達の頼みを断る訳が無いよ。応接室でハノンを弾いてデーン語の歌を歌わせる。めっちゃ可愛い!

 夕食は父親と2人だ。6月にナシウスが10歳になれば3人になるけど、ヘンリーが1人で子供部屋で食べるのは可哀想だよ。でも、異世界では普通の事みたい。メアリーが給仕をしながら付いていてくれるみたいだけど、寂しいよね。それとも気楽なのかな? 

 夕食の後は子供部屋に向かう。2人共ベッドに入っている。湯たんぽを蹴らないように注意しなくちゃ。

「お姉様、この湯たんぽ温かいです」

 そうなんだよ! 前世の中世の絵で見た金属の箱の中に炭を入れてシーツを温める道具があったけど、湯たんぽの方が良いよね。あれは火事にならないか不安だよ。

「2人共、それに足を直接つけないようにしてね。ずっと触れていたら低温火傷するかもしれないからね」

 ナシウスが低温火傷? と分からない顔をする。

「火に触れば火傷するでしょ。でも、温かい物に長い間触っていたら、低温でも火傷する事もあるのよ」

 2人にキスをして、サイドテーブルの上に置いた魔法灯を薄暗くする。

「お姉様、この魔法灯を作ってくれてありがとう」

 ヘンリー、可愛いから2度目のキスをするよ。

 湯たんぽは、やっぱり良いよね。ぬくぬくだよ。

 朝までぐっすり眠って、昨日の疲れは癒えた。やはり若い身体の回復は早いね。

 湯たんぽの中のお湯も顔を洗うのに丁度良い温かさだ。

 午前中は弟達と勉強したり、温室で苺を採って過ごした。午後は馬術教師が来るけど、私はワイヤットと話さなきゃいけないんだ。別に乗馬が嫌いだから、来る時間に合わせた訳じゃないよ。ホントダヨ

「ワイヤット、湯たんぽを使ってくれましたか?」

 ワイヤットも湯たんぽでぬくぬくだったみたい。笑顔で分かるよ。

「ええ、子爵様も朝までぐっすり眠られたようです」

 さて、どう話そうかな?

「あれは錬金術クラブで私が作ったのです。でも、湯たんぽには魔石は必要ありません。カエサル部長はバーンズ公爵の嫡男なのですが、この湯たんぽをバーンズ商会で売り出してはどうかと言われたのです」

 ワイヤットはバーンズ商会と聞いて真剣な顔になる。

「それは良いお話ですが、湯たんぽを作る権利を譲り渡しても宜しいとお嬢様はお考えなのですか?」

 それを聞きたくて相談しているのだ。

「私が錬金術で作れる量はしれているわ。これは大量に作って安価に販売する方が良い道具だと思うの」

 ワイヤットは微笑んで頷く。

「では、バーンズ商会に任せるのは良い案だと思います。契約書に署名される前にお見せ頂ければ、不利にならないか相談に乗ります」

 うん、異世界の契約書なんか知らないからね。これから勉強しなくてはいけないな。後は、部屋で内職しておこう! 土曜は疲れてて内職してないからね。

 内職もグレードアップしているよ。ティーセットの細密画描きもしているけど、魔法灯の魔法陣を描く内職が儲かるんだ。それに刺繍の内職も寮でちょこちょこ空き時間にしている。

 こんな時は初めから生活魔法を使うよ。ティーセットに指定の細密画をチャチャと描いて、魔法陣もパラパラと描いていく。

 うん、これで刺繍糸が買えると思う。ナシウスのだけじゃなく、私の制服の見返しにも刺繍しよう。ナシウスのはグレンジャー家の家紋で良いとして、私はちょっと変えようかな? 前世の女紋みたいな感じで、本とペンでは愛想が無いから本に薔薇でも良いかもね。メアリーと相談してみよう。

「ユリアンヌ様のお印は白百合でしたわ。お嬢様もお印を決められたら良いのです」

 そうか女の人は家紋でなくても草花とかでも良いんだね。さて、何にしようかな?

「少し考えてみるわ」

 ペイシェンスが選ぶなら薔薇かもしれない。それに薔薇には稼がせて貰っているからね。でも、私はもっと庶民的な草花の方が似合う。苺の花って可愛いよね。それに苺は食べられるし! 5枚の白い花弁に黄色の雄しべ。それに葉っぱをあしらった。良い感じ! 子供のうちはこれに苺を少し覗かせても良いかもしれない。

 後は糸通しの図を描く。うん、難しい箱型の糸通しではなく、薄い金属板にダイヤ型の細い針金が付いている安い方だ。前世では箱型のを母は使っていたが、私が一人暮らしのアパートに持って行ったのは生活科で買って貰った裁縫セットに入っていた簡易版の方だ。これも売れるかも?

 アイロンは魔道具で作って欲しい。特に母親がパッチワークに使っていた細かい所をアイロン掛けする小さなアイロンが欲しいな。スティームアイロンも良いかも?

 アイロン繋がりでヘアアイロンも思いつく。巻き髪が流行っている。炭で熱くしたコテでしているが、火傷や髪の毛も痛んでいるみたいだ。これは魔石が必要だね!

 そうだ前世ではマイナスイオンが出るドライヤーとかヘアアイロンが高価だったんだよね。これはカエサル部長に要相談だ!

「やっぱり自分で魔法陣を描けなきゃ、とても不便だわ。秋学期は他の科目は犠牲にしてでも魔法陣2を取らなくては!」

 自分の部屋であれこれ作る物リストを書いていた。前のは欲しい物リスト。今度は自分で作れそうな物リストだよ。だから、なるべく魔石を使わない物を中心に考えていたんだ。

「足踏みミシンならいけそう? お婆ちゃんが使っていたミシンだけど、構造がよく分からないや。でも、できたら良いよね!」

 ボビンや上糸や下糸が交差して縫っていく仕組みなんかを思い出す度に図に描いていく。大まかな図も描く。

「これでミシンが出来るとは思えないけど、要相談だわ。なんだか要相談ばかりね」

 ミシンが出来たら儲かるかも! なんて考えていたら、ヘンリーが呼びに来た。

「お姉様、サミュエルと馬術教師が来ましたよ!」

 ああ、ヘンリーの目が眩しいよ。

「分かりましたわ」と答えたけど、気は重たい。苦手な乗馬より稼げそうなミシンについて考えたい。

「ペイシェンス、遅いぞ!」

 サミュエル、元気だね。そんなに元気が余っているなら、古典とか数学とか勉強すれば? なんて意地悪を言いたくなるよ。私は大人だから言わないけどね。

「寮に行かなくてはいけないから、少ししか時間はありませんの」

「なら、さっさと乗れ!」

 ああ、サミュエル、来週の土曜は覚悟しといてよ。ビシバシしごいてやるからね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 手作り生産では、大量生産は無理かなあ
[一言] ペイシェンスは精神年齢は大人だろうけど実年齢は子供なんだからもっと言っていかないと駄目でしょ。 子供の期間を利用してある程度の線引を作っていかなきゃここからどういいもの作っても良いようにされ…
[良い点] 弟君たち(天使)好き!ナシウス君は、寂しそうなヘンリー君や彼女を、兄や弟としてフォローしつつ、彼女に歌を教わるのを心底楽しんでいるように見えます。ヘンリー君は、素直に寂しがったり楽しみにし…
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