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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第二章 王立学園中等科春学期
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やっと家に帰れるよ

 錬金術クラブのメンバーが何時まで残っていたのかは知らないけど、今度からは自分で注意して遅くなり過ぎない様にしようと決めた。毎回、ブライスに寮まで送って貰うのは悪いからだ。

 土曜は朝食後にメアリーが迎えに来るけど、私は少し忙しい。温室で育てている下級薬草に水をやってから帰りたいからだ。

 うん、順調に育って葉っぱもギザギザして蓬みたいだ。水をやって温室を後にする。家の温室で下級薬草を育てたらお金になるかな? 下級回復薬を売る事は可能なのだろうか? マキアス先生の「薬学クラブに入りな」との誘惑に負けそうだ。薬師になれたら、1人でも生活できるのかな?

 今は弟達の為に頑張っているけど、いずれは大人になる。そしたら私はどうすれば良いのだろう。前はペイシェンスの女官になりたいとの願いに沿う形を発展させて文官コースを選択したけど、官僚にさほど魅力は感じなくなった。だって完全な男社会だもの。女官も女社会は怖くて嫌だ。

 好きなのは織物や染色や刺繍。縫い物も嫌いじゃ無いけど、お針子さんは金になりそうに無いからパスだな。靴下のかけつぎの内職で工賃の安さに眩暈がしたよ。でも、きっと織物も大量にしないと食べていけないのかも。私がしたいのは趣味の一環なのかもしれない。カリグラフィーの内職も安そうだよね。一応、ワイヤットに探して貰うけど。

 異世界の賃金は安すぎると思う。ぷんぷん! だから、男の人が一家を養える賃金が貰える官僚を選択するのが正しいのだとは思うんだけど……悩み深き11歳なのだ。

 女性で官僚になれるのかも不安だしね。

 錬金術クラブに入って、物を作るのは楽しいと思った。でも、魔法陣の勉強がもっともっと必要だとも分かったんだ。秋学期は絶対に魔法陣2を取らなきゃね。今のところはカエサル部長頼みだもの。

「まだメアリー来ないな。今年の抱負でも考えよう」

 今年の目標は、先ずは食べ物の確保! これは外せない。二度と飢えさせないと誓ったからね。

 二つ目は薪だよ。これも外せない。今年は暖冬だなんてベンジャミンは言うけど、私には十分寒いよ。それに一度点いた暖炉の火を消したりしないぞ。転生した時、寒くて死にそうだったもの。あれだけは嫌だ。

 三つ目は衣服だよ。特にナシウスは来年は王立学園に入学するからね。男子の制服はズボン、シャツ、上着なんだ。つまりシャツは何枚もいるってこと。ヨレヨレのシャツなんか着させられないもの。それに運動服や乗馬服、そして防具も必要になる。でも、ナシウスだけじゃない。ヘンリーや父親にも新しい服が必要だ。生活魔法で何とかやりくりしているけど、もう1着は欲しい。そして使用人にも新しい服が必要だ。

 四つ目は魔石だ。異世界の文化的生活には魔石が必須アイテムなんだよ。錬金術クラブで弟達の部屋の魔法灯を作ったり、父親の書斎にも読書灯を作ったりしても、魔石が無くては無駄になる。

「つまり、お金が必要なのよ!」

 メアリーを待っている間に、あれこれ考えたけど、結論はお金に戻る。そりゃ、お金が全てでは無い事ぐらい知っているよ。でも、お金が無いと出来ない事も多いんだ。今年の抱負が「金が必要だ!」で良いのかな?

 カインズ先生の蚤の市プラン、本気で考えてみようかな? ワイヤットが数点ずつしているけど、それは本物の壊れた骨董品が少ししか売られていないからかも。

「こんな時、異世界転生ものにつきものの鑑定とかアイテムボックスとかの能力があればなぁ」

 色々とぼろ儲けするのを夢想しても、虚しいだけだ。私には少し変な生活魔法しかないのだから。

「それにしてもメアリー、遅くない? レンタル馬が出払っていたのかしら?」

 朝食を食べ、温室に水やりに行き、帰って来てから妄想に耽り、それでもメアリーは来ない。

「まさか、メアリーが病気にでも?」

 下級回復薬を置いてきているが、メアリーは節約が身に付いている。(グレンジャー家の全員だけどね。あっ、父親はちょっと違うかもしれない。)勿体無いとか言って飲まないで風邪を拗らせたりしてないでしょうね。なんて心配していたら、メアリーが迎えに来た。

「遅くなりまして、申し訳ありません。急な訪問の予定が入りましたので、応接室を整えてから来たのです」

 免職中の我家に来る客はサリエス卿か伯母様達ぐらいだ。それにメアリーが謝る必要はない。メイドが1人しかいないのが悪いのだ。せめて下女がもう1人欲しいよ。

「いえ、良いのよ。教科書を読んでいたから」なんて格好を付ける。金儲けを考えていたなんて令嬢らしくないから、メアリーをがっかりさせちゃうもんね。言えないよ。

 馬車はすぐに家に着いた。やっと弟達(エンジェル)に会えるよ。この1週間は長かったね。中等科になって色々あったから、疲れたよ。早く抱きしめてエネルギーを充填しなくては!

「お姉様、おかえりなさい」

 1週間振りに会うナシウスとヘンリーの可愛さに、鼻血が出そうだよ。マジで

「風邪などひかずに元気にしていましたか?」

 抱きしめてキスをする。このままでいたいよ。

「お姉様、お疲れですか?」

 抱きしめたまま動かなかったので、ナシウスに心配されたよ。いや、少しエネルギー充填に時間を掛けていただけです。スゥハァ。

「いえ、とっても元気ですよ」

「なら良かったです」ヘンリーの心配そうな顔、キスしちゃおう。

「子供部屋で話しましょう」

 玄関にまで薔薇が飾ってある。つまり来客の為にメアリーが飾ったのだ。サリエス卿では無いな。サリエス卿が弟達に剣の指南をしてくれているのには感謝しているが、薔薇を飾っても気づかない相手にそんな無駄はしない。お礼にお茶とかサンドイッチなどでもてなす程度しかできない。うん、これも何かお礼がしたいな。ワイヤットと要相談だ。

 3人の伯母様のうちの誰かだろう。父親の機嫌が悪くならないと良いなと呑気な事を考えていた。メアリーが玄関にまで薔薇を飾った意味を汲み取れていなかった。伯母様達が来られる時は応接室にしか薔薇を飾らないのに。やはり、弟達の魅力で頭が回って無かったんだね。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ようやくペイシェンスが将来のことを真面目に考えられるようになって……とホロリとしていたら「つまり、お金が必要なのよ!」でちょっぴり笑ってしまいました。それはそう。
[良い点] ペイシェンスがいなくても親族間の交流が進んでいるんですね。善き哉 コネクションを太くしておくのは、弟たちの今後にとっても大事だし [一言] 父親に新しい服はいらないと思います。むしろ今ある…
[一言] ペイシェンスの性癖(ショタ好き)と生活魔法の便利さを考えたら将来は王都に何軒もあるっていう孤児院の運営するのがいいんじゃないかなー 運営費とかどうなってるかわかんないけど、王族の伝手がある…
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