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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第二章 王立学園中等科春学期
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クラブ活動とは

 押しに弱いとは前世で感じた事は無かったのに、異世界では押しに弱いみたいだ。ペイシェンスの犠牲精神に感化されたのだろうか? いや、ペイシェンスは結構頑固な所もある。異世界の人が押しが強すぎるのか? なんて考えながら、音楽クラブにマーガレット王女と向かう。

「もうペイシェンスが抜けるから、今日は不味い昼食だったわ」

 今日の料理はじゃがいもを茹でたのだと言われた。何を失敗して不味かったのか、聞きたくないので、相槌だけ打っておく。

「大変でしたね」

「そう、大変だったの。それに習字も疲れたし、魔法実技も散々だったわ」

 お腹が空いているから愚痴っぽいのかも。今は錬金術クラブに入った事は言わない方が良さそうだ。

 音楽クラブで、機嫌がなおったら良いなと考えていた。私はすっかりアルバート部長とカエサルが同級生だという事を忘れていた。うん、2人とも5年Aクラスなんだよね。

「ペイシェンス、何故、あんな変人の巣の錬金術クラブに入ったのだ」

 ああ、最悪な展開だよ。

「ペイシェンス、本当なの?」

 元々、機嫌が良く無かったマーガレット王女の機嫌が急降下する。

「ええ、後でお話ししようと思っていました」

 カエサル部長め、喋ったんだね。それもアルバート部長に! お陰で冷や汗をかく羽目になったよ。ぷんぷん。もっと大人かと思っていたのに、最低!

「そんな暇があったら新曲を作るべきなのに!」

 それはアルバート部長の勝手な言い分だ。

「もう私は数曲作っていますわ。もう十分だと思います」

 つい反撃したら、マーガレット王女も参戦して言いたい放題に非難された。亀になった気分で堪える。何か反論したら、倍返し、いや10倍返しされそうだ。

「アルバート部長、それより部長会議はどうなったのだ?」

 おお、ルパート先輩、良い人だぁ! 音楽クラブの良心だよ。

「あっ、それもあったんだ。魔法クラブと乗馬クラブから、騎士クラブには二度と命令は受けないと発言があった。ハモンド部長は苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、他の部長が全員、それを支持したから受け入れたさ。それはどうでも良いのだ」

 良くないと思うが、騎士クラブの事は騎士クラブで解決するしかない。キース王子が巻き込まれ無ければ、私は騎士クラブに関心は無いよ。

「青葉祭も議題に上がったのだが、グリークラブが増えたからと、音楽クラブの発表時間を減らすなんて、阿呆のルーファス学生会長が言い出したのだ」

「まぁ、酷いわ。グリークラブはコーラスクラブが内部分裂したクラブではありませんか。コーラスクラブの時間を半分にすれば良いのですわ」

 マーガレット王女は激怒だ。クラブメンバーも怒っている。毎度の事で私は慣れているけど、サミュエルは驚いているんじゃないかな?

「でも、コーラスクラブよりグリークラブの方がまだマシですよ。私のクラスにもグリークラブに入った学生がいるけど、コーラスクラブとクラブハウスを共有している状態だし、それもコーラスクラブの使っていない時間しか使えないそうですよ。気の毒です」

 サミュエルもズッポリと音楽クラブに染まってきたね。お姉ちゃん、少し心配だよ。

「そうだ、ペイシェンス。前に良い事を言っていたな。グリークラブに新曲を提供すれば良いって」

 あっ、忘れてなかったんだ。

「グリークラブの部長とは知り合いなのだ。マークス・ランバートはペイシェンスが新曲を提供すると言ったら喜ぶぞ。音楽クラブの新曲を褒めていたからな」

 勝手に話を進めないで欲しいよ。

「いえ、それは一般的な感想として言ったまでです」

 コーラスクラブと揉めているグリークラブに新曲を提供したりしたら、揉め事に頭を突っ込む事になるよ。

「そうか、グリークラブでも新曲を発表できる事になるな。それなら時間も少なくならないか。それと演劇クラブの時間も減らしたい。ペイシェンス、グリークラブにはオペラを作ってやれ。それなら演劇と被るから、彼方からも時間を取れば良いのだ」

 えっ、オペラ? 前世でオペラなんか観たこと無いよ。ミュージカルでは駄目なのかな? あっ、私って押しに弱い!

「そんなの無理ですわ。だってハノンの曲しか作った事ありませんもの。グリークラブは歌が必要でしょう」

 アルバート部長は、ほんの少し黙って考える。

「歌詞はまかせろ。ペイシェンスの曲に歌詞はつけてやる。それとリュートへの編曲は従兄弟のサミュエルに任せる。それとダニエルもリュートが上手いからサブにつけてやる。うん、クラウスもバルディシュもつけてやるぞ。これなら大丈夫だろう」

 うっ、ショタコン天国(パラダイス)だ! まさかアルバート部長は私の趣味を見抜いているの?

「面白そうね。私も自分の新曲はできていますから、手伝いますわ」

 マーガレット王女が手伝うと言うのに新入部員が断れる訳がない。

「マーガレット王女、私で良かったら手伝います」

 サミュエル、私の手伝いだよ。分かっている? ああ、顔が真っ赤だ。マーガレット王女に憧れているんだね。綺麗だもん。

「私も微力ながらお手伝い致します」

 ダニエルが手伝うならと、バルディシュもクラウスも手伝うと言い出す。リーダーなんだから冷静さを保って欲しいけど、ダニエルもマーガレット王女に礼を言われて頬を染めている。ショタにめっぽう強いマーガレット王女だ。

「ペイシェンス、覚悟を決めなさい。皆がグリークラブに協力しようと言っているのよ。貴女はコーラスクラブの圧政に耐えきれず立ったグリークラブに心は動かされないの? それで音楽を愛していると言えるの?」

 音楽は好きだけど、愛していると言った事は一度もありません。なんて言っても無駄なんだね。

「分かりました。できるかどうか分かりませんが、やってみます。作詞はアルバート部長にお願いしますね。それは無理ですから」

 これで錬金術クラブに入ったのを許して貰えるなら、なんとかしよう。前世のミュージカル、覚えている曲を繋げてみるしかない。ラブソングも良いかもしれない。

「では、早速作るのだ。私はマークスに話をつけておくからな」

 そこからは各自の新曲を発表して解散した。疲れたよ。

「ねぇ、ペイシェンス。引き受けたのは何か思いついたからでしょ。さぁ、弾いてみて」

「いえ、まだフレーズが浮かんだだけですから」と逃げようとしたが許して貰えなかった。

 夕食までに『ロミオとジュリエット』の映画の主題歌や『イーストサイドストーリー』のロマンチックな歌などを思い出しながら弾く。

「やはりペイシェンスは素晴らしいわ」

 褒めて貰えるのは嬉しいが、まだまだ曲は必要だ。うん、アルバート部長に歌詞は丸投げできて良かったよ。

 やっぱり私は押しに弱い女なのかもしれない。作詞は免れたって喜んでいるなんて、馬鹿だよ。今度からはNOと言える女になろう。


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― 新着の感想 ―
[一言] 断言できる!ペイシェンスはNOと言える女にはなれない<( ̄︶ ̄)>
[良い点] ウェスタンサイドストーリーじゃなくて良かったね。 ……出来なくはないのか……。 [一言] 繋ぐと言ってもシーン変更なりで無理やり2曲3曲を繋ぐのではなく途中にアニソン入っちゃうとかそういう…
[良い点] ショタを愛するペイシェンス、マーガレット王女に弱いショタ陣、ペイシェンスを駆り立てたいマーガレット王女と、ジャンケンのように三すくみですね(笑)
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