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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第二章 王立学園中等科春学期
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文官コースとは

 月曜は外交学、世界史、錬金術2、薬草学だ。正式に中等科が始まる。

「ペイシェンス嬢、一緒に外交学の教室に行きましょう」

 フィリップスが誘ってくれる。

「ありがとうございます。外交学は初めてですので嬉しいですわ」

 教室も知らないので、フィリップスの親切がありがたい。それに前みたいに教室に入ってもアゲンストな風は感じない。皆、私の存在に慣れたのだろう。

 外交学の先生は少し気取った話し方だ。

「おや、初めて授業で見る顔もいますね。ではもう一度名乗っておきましょう。外交学を教えるオリバー・フォッチナーです」

 ルパート先輩のお勧めの授業だけあって、面白い。そして外国の諸事情を初めて知って楽しい。これは有りだよ。その上ディスカッションもあるそうだ。

「少し勉強したら、自国と相手国に分かれて通商条約について議論して貰います。勿論、勝ち負けは関係ありませんが、今まで勉強した事を活かせないと減点になります。おや、心配しなくても大丈夫ですよ。議論の前にチーム分けして調べる時間は与えますからね」

 なんだかワクワクするね。授業が終わっても教室移動をしなくて良かった。次の世界史も同じ教室だったのだ。

「ペイシェンス嬢、外交学はどうでしたか? 1回目のノートが必要なら写しますか?」

 フィリップスはとても親切だ。

「ありがとうございます。そうさせていただければありがたいです」

 ノートまで写させて貰ったよ。ラッキー

「写すの早いですね。それに字も綺麗だ。世界史の1回目もついでに写しますか?」

 あれっ、フィリップスって親切すぎない? まぁ、ありがたく写させて貰うけどね。

「おい、フィリップス。ペイシェンスを囲い込むつもりか?」

 外野がうるさくなったけど、急いで写す。

「ラッセル、1回目の授業を取っていなかったクラスメイトにノートを写させてあげているだけさ」

「そんなに親切とは知らなかったな。私は君にノートを見せて貰った事なんか3年間1度も無いよ」

 ラッセルも見た事のある学生だ。経営学や経済学も一緒だね。

「フィリップス様、ありがとうございます」とノートを返す。

「ペイシェンス、私と一緒のチームにならないか?」

 ラッセルから外交学のチームに誘われたよ。

「チーム分けはフォッチナー先生がされるのでは無いですか?」

「自主性を重んじられるさ。チームに入っていない学生はランダムに振り分けられるだろうけどね」

 そんなものなのかな? 知らない学生と一緒より、同じクラスの学生の方が気楽かもしれない。

「ええ、ラッセル様、お誘いありがとうございます」

「では私もラッセルと同じチームにしよう」

 フィリップスも参加したと思ったら、次々と参加する学生が増えていく。うん、積極的に質問するフィリップスは成績優秀そうだもの。同じチームは有利だよね。

「もう、ここまでで打ち切りだ。半数を超えるのは拙いからな」

 私は4年Aクラスの勢力図を知らない。1年の時はキース王子という輝けるリーダーがいて、その側近にラルフとヒューゴ。そして女子リーダーはルイーズだった。中等科になるとコースが分かれる。それでも女子リーダーはマーガレット王女だ。殆どの女学生は家政コースだしね。魔法使いコースはベンジャミンだ。そしてブライスが側にいて、アンドリューがナンバー2かな? 文官コースは2リーダーかも。授業中発言の多いフィリップスと休憩時間に仲間と楽しそうなラッセルだ。騎士コースに知り合いはいないから分からないよ。なんて考えているうちに世界史の時間だ。

「世界史のドナルド・アウストだ。この前の授業では、文明の発生について話したが、受けていない学生は教科書を読んでおくように。まぁ、原始的な生活からやっと村を作り、都市国家を作り出すところまでだから、ざっくりとした内容だ。今日から世界史が始まるといっても良い。さぁ、教科書のカザリア帝国の誕生のページを開きなさい」

 この先生の授業はわかりやすい。そして雑談も楽しい。私は家の図書室で歴史の本も何冊か読んでいる。カザリア帝国はまるで前世のローマ帝国みたいだ。その当時ローレンス王国は蛮族が支配する僻地だったみたいだね。うん、前世のバルバリだ。

 その当時の宗教は多神教で、カザリア帝国の衰退時期にエステナ教が発生し、最初は弾圧されたのも一緒だね。それなのにいつの間にかエステナ教が国教となった。

 これは魔法が大きく関係している。エステナ教会は人々に魔法を広めたのだ。前から魔法を使える人はいたけど、英雄とか大魔法使いで、普通の人で使える人は少なかったみたい。英雄物語もいっぱいあるけど、山を動かしたり、海を切り裂いたり、ドラゴンを退治したり、本当かどうか分からない。

 ざっと世界史の流れは予習済みだよ。帝国が衰退すると、何ヵ国かに分裂して、そこから長い長い戦国時代を経て今に至るんだよね。戦国時代に転生しなくて良かったよ。生活魔法じゃ、すぐに殺されちゃいそうだもんね。

「次の授業では、カザリア帝国の初期、帝国を発展させた4賢帝について調べて来て貰うぞ。そうだな窓際に座っている学生は1賢帝のフラピオ。次の列は2賢帝のバブリス。真ん中の列と隣りは3賢帝のルキウス。廊下側の席は4賢帝のマキシムだ」

 私は2賢帝のバブリスだ。確か家に本があったはずだけど、図書館でも調べておこう。

「私は1賢帝のフラピオです。2賢帝のバブリスは資料が少ないかもしれませんよ。ラッセルの3賢帝のルキウスは有名だからラッキーだな」

 フィリップスに心配されたけど、何とかなるよ。

「調べられるだけ調べてみますわ」

 この授業の半数はAクラスの学生なので、上級食堂(サロン)に一緒に移動する。なる程ね、マーガレット王女が必須科目の授業をAクラスのにしたのが何となく理解できる。1人じゃないからだ。

 文官コースは学者肌の学生も多くて穏やかで良いな。昼からの錬金術2は少し不安だよ。まぁ、ベンジャミンが一緒なのは少しだけ心強いかな。


 昼食は普段通りだ。まだ騎士クラブは問題が表に出ていないみたい。パーシバルがメンバー達と話し合っているのだろう。あまり揉めないで欲しいな。キース王子が巻き込まれると嫌だから。なんて思っていたら、マーガレット王女が余計な事を言い出した。

「ペイシェンスはいつからフィリップスと仲良くなったの。ペイシェンス嬢なんて敬愛されているのね。普通の学生は呼び捨てか様付けよ」

 やはり嬢付けは目立つんだ。

「そうなのですか、この前の経済学で私にフィリップス様が謝罪された時から嬢付けになったのです。なんだかくすぐったい気分になるから止めて欲しいですわ」

 マーガレット王女に呆れられる。

「経済学で謝罪されるような事があったの? 何が有ったのかしら?」

「経済学の時間に経営学の課題で10ローム金貨で事業を起こすというものを出されていることが話題になりました。そこで私が家の温室を使っても良いかと先生に質問して許可を貰ったら、フィリップス様に10ロームではガラスの修繕費にもならないと指摘されたのです。でも、私は生活魔法で修繕できるから費用は要らないと言ったのに信じてもらえなくて、それで黒板のヒビを修繕したら、謝罪してくださったのです」

「まぁ、ペイシェンスの言葉を疑った謝罪なのね。それなら嬢付けも有りかもしれないわ。あのプライドの高いフィリップスが貴女にぞっこんなのね」

 横の席のキース王子達が聞き耳を立てている。変な表現はやめて欲しいよ。

「それにベンジャミンやブライスやアンドリューとも仲良くしているみたいね。ベンジャミンは変人だけど、勉強はできるのよ。貴女には敵わないでしょうが、必須科目のほとんどは修了証書を貰っている筈よ。そう、キースと同じで古典がネックで学年飛び級が無理なのよ」

「そうなのですね。午後の錬金術2で一緒なので心強いですわ。でも、あの方は錬金術クラブへの勧誘が激しいのが困りますけどね。廃部を免れたいみたいですわ」

 横で聞いていたキース王子が口を挟む。

「そうか、前にも聞いたが、錬金術を飛び級したのだな。それは魔法使いコースでも無いのに難しいと思うのだが」

「ええ、でもそれはキューブリック先生が錬金術の事をもっと知って欲しいと願われたからです。錬金術1は組み立てがメインで、材料も用意されているのです。錬金術2は材料を作る所から学べるので、不安なような楽しみのような」

 あっ、またキース王子が『お前は変な女だ』と言いそうだと失言レーダーが作動した。

「それにしても、文官コースはそのような課題があるとは面白そうですね」

 ラルフ、ナイスだ。うん、1年前の私を見ている気がするよ。リチャード王子の前でキース王子が失言しては気を逸らしていたんだ。あっ、失言を先に止めているからラルフの方が優れているね。グッジョブ!

「キース王子、本当に騎士コースと文官コースの両方を取るおつもりですか?」

 おっ、ヒューゴも話を逸らすのが上手くなったね。座布団1枚あげよう。

「当たり前だ。リチャード兄上も両方取られたのだ」

 そこからは本当に騎士コースと文官コースを取るなら修了証書を少しでも多く取らなくては! という話になった。やれやれ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 ふと考えてみたらペイシェンスの周りにいる男性(最低でも彼女に興味を抱いている男性)って、家族周りとキース王子を除いたら向学心のある男性ばかりですね。変わった人···と…
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