老人優遇社会だから
就職せずに起業することは、精神的自由で直接やりがいを感じることができる素晴らしく理想的な選択肢だと5人はとても満足していたが、
実際はまだまだ小説の筋を考えている途中のような気楽なものだった。
4月下旬になった5人は学生でもないのに収入が無いため、皆それぞれ毎日を生きるための出費に関して住まいをルームシェアにすることや外食を避けることなどで出費を抑えるための工夫をしなければならないわけだが、
今のところは少しずつとはいえ分かりやすく減らすことが出来ている様子でノリとしては楽しかった。
ケントは、細かなビジネスプランが決まれば起業用の新規補助金や特別融資を使えるはずなので、もしすぐに営業収入が入らなくても一人あたり1ヶ月15万円の給与で1年は過ごせるはずだとみていた。
「営業収入が無いうちはバイトするのもありね」
「時間とられないバイトなら賛成!」
「事業に役立つバイト先が良いかもね」
「高齢者関連?」
「介護はやったこと無いわ」
「老人は、病院通い以外に何してるんだろ?」
「無料バスや電車で遠くまで行ってるよね?」
「本人の医療費負担は現役世代が窓口で払う1/3だけだ」
「たしか美術館とか映画も安いな」
「充分優遇されてる高齢者をさらに幸せにする必要なんて、あるの?」
「そうだよね、子どもにこそ、社会のお金を使って欲しいよな」
「なら、塾やるのはどう?」
「孫はシックスポケットだから、月額15万円くらいは教育学習費がある家庭も少なくないみたいね」
「でもさ、進学塾は結果ありきで、合格率命じゃない」
「それも毎年毎年、延々と続く…」
「手を抜いたら、ハイ、終わり」
「いくら同じ学年とはいえ生徒はいろんな子がいそうだよね…」
「進学塾は、うちらは、ちょっと無いかな…」
「ハウスキーピングとかハウスクリーニングなんかも、マジ無いなぁ」
「夜中までとかの飲食店も無理かな」
「あ、昼だけなら、飲食もありじゃね?」
「飲食店やるのに調理師免許とか要らないの知ってた?」
「衛生の講習受けるだけでオッケなんだ、ありかも!」
「仕入れは?」
「テナントは?」
「内装工事!」
「フードトラックでも良くない?」
「機動性あるねぇ」
「テナント開業の業種は避けよう」
「売り上げなくてもテナント費と内装工事費用のローンとか、固定される返済抱えるのはヤバイさ」
「高齢者ってさ、何にお金遣ってるの?」
「データによると…、子どもと住む住宅の購入や増改築、旅行、食事交際趣味費用、健康維持、医療費…などなど…みたいね」
「老人が住宅費用とか、ほとんど生前贈与じゃん」
「高齢者夫婦世帯の場合は旅行に趣味に食べるもの…」
「一人900万円の豪華客船世界一周クルージングの客って、高齢者だらけだな」
「僕らより裕福な高齢者、優遇され過ぎだな」
「老人達は選挙にいくからね、自分達の目先の利益や現金にシビアそうだ」
「80歳超え高齢者の年金は今60歳の人が65歳から受けとる額の2倍近い額だな…」
「70歳から上の世代が逃げ切りお得世代か!くそ…」
「戦争でひもじい思いをしてない世代なんだな、70歳あたりは」
「同調圧力社会を作り上げた世代さ」
「軍隊風?」
「みんなと同じことをしないと駄目~って感じか」
「65歳から先は死ぬだけ、元気か病弱かは自分次第…?」
「厳しいな、死ぬだけとか、愉しくないじゃん…」
「100歳人生時代だから、65歳からまだまだある?」
「何して生きるの?」
「データからは、今75歳の年金は夫婦公務員ではひと月50万円なんてのもあるけど今60歳の夫婦は65歳から受け取っても夫婦で15万円?!」
「え?」
「こわ」
「うちらは、いくらに?」
「日本て、ヤバくない?!」
「私、老人になりたくない…」
「老人からお小遣いもらいたい…」
「ビジネスの話になんないじゃん」
「老人達を幸せにする事業のアイデアは!?」
「話、それてるもんね」
「世代間差別は無くなるのかね…」
「働いて税金払う気がしない~」
「なんだろね、この感じ…」
「具体的な事業のアイデアは明日、次回、ひとり2個ずつ提案で!」
「はーい」
さっさと帰宅の途についたリョウマは、前から少し気になっていた事業をスマホにさらっとメモした。