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04 お茶会はこれで最後にしたい

 国王陛下と二人きりのお茶会です。

 空気がとても重いです。全く盛り上がりません。何故自分の誕生日にこんな苦行をこなさなければならないのか。半分自業自得ではあるのだけど。


 そもそも聖女だって言われていきなり王都に連れていかれた拉致被害者なわたしは、年に一度の長期休暇にしか実家に帰れていないのよ。もうちょい何か頑張ればこう、ご褒美的なアレで往復の交通費とかも出たらしいんだけどね。わたしは頑張らない決意をしているので。年に一回しか帰らせてもらえないのよね。基本プランしか適用されなくてね。何せ国費から色々出してもらっているので。


 毎年誕生日にお家に帰れないのを憐れんで、国王陛下がお茶会を開いてくださってるんですよね。今。

 貴族の令嬢は誕生日にパーティを開いたりするそうなので、そのかわりにって。

 そんなのいらぬ心遣いですって言えたらわたし今頃田舎でのんびり暮らしてるよねえ。

 わたしが王都で学んでいる間、地元のお母さんにもお手当が少し出ているようで、我儘言って強引に帰るのも気が引けるし。お母さんはパン屋さんで頑張って働いてわたしを育ててくれたから、お手当大事だし。だからってそんな貧乏していないのよ。お母さんのお勤め先がパン屋さんなので、売れ残りのパンとか貰ってたし。


「先日の試験、また全教科平均点だったそうだな」


 国王陛下がこの重たい空気の中、さらに重くなる話題を振ってきた。和ませようとしたのかしら。話題のチョイス間違ってますが。


「まだ結果は出ていなかったはずですが」

「先に聞いた」


 なんで?

 いくら国王陛下でも、なんちゃって聖女ごときの成績を先に知ってるわけ? 暇なの?


「平凡で申し訳ありません」

「平凡とは」


 国王陛下の切れ長の目をすっと細めてわたしを睨む。

 美形の怒った顔はほんと怖い。絵になりすぎて逆に現実味がないわ。


「試験ごとに何年もずっと全教科平均点を取るのは、もはや非凡ではないだろうか」

「偶然ですね」


 しれっとお茶を飲みながらわたしは返事をする。

 このお茶美味しいわ。さすが国王陛下の出してくれるお茶は違う。お菓子も美味しいんだけど、上品すぎて物足りない。もっと歯が溶けそうなくらい甘いお菓子とか、とんでもない色のお菓子とか、どれか一つゲロマズいのが混ざってるとか、遊び心が欲しいわ。


 国王陛下の指摘通り、成績は操作している。目立たず、落ちこぼれず。真ん中がいい。試験問題を見たら、大体の平均点ってわかるじゃない。そこを狙っているの。

 でも国王陛下に目をつけられているなら、もう少しどっちかに寄せた方がいいのかしら。良い方に寄せると王都に残れとか言われたら困るし、悪い点を取って年に一回の帰省もなくなったら嫌だし。やっぱり平均点でいいんじゃないかしら。


 そんな事を考えていたら、国王陛下の方が目を逸らされた。勝ったわ。


「……贈り物を、使ってくれているのだな」

「はい。ありがとうございます」


 やっぱりリボンを使って正解だった。

 国王陛下の瞳と同じ藍色のリボン。

 よく見ると国王陛下の髪をまとめているリボンも同じ模様の刺繍が入っている。王室御用達のリボンなんて、軽々しく使うとまた学校で何か言われるかもしれないから、これは今日限りしまっておこう。

 国王陛下の髪はツヤツヤの黒で、肩の下まである髪をひとつに結った黒いリボンには、黒い刺繍が入っている。


「あと一年で十八歳だな」

「そうですね」


 国王陛下に言われて、なんだか面倒な事を思い出してしまった。

 十八歳になると、結婚できてしまう。

 呑気にお茶会をするのも今年が最後。


 わたしは来年には国王陛下との婚約を解消して、卒業したら田舎に帰るんだから。

 聖女の上に王妃とか、絶対無理だからね。

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