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02 早速の拉致

 わたしの暮らす夜ノ国は、魔法使いの国だ。八歳になった子どもはみんな学校に行く。昔の王様が、国中のすべての子どもに勉強を教えるって決めたから。

 学校に行く年の子どもはみんな、魔力検査を受けて適性を調べる。持っている魔力の適性に合わせて勉強するクラスが変わるの。まあだいたいが普通科になるんだけど。普通科はその名の通り普通の魔法を使う。生活魔法っていうらしい。火をつけたり明かりをつけたり、涼しい風を吹かせたり。魔法媒体と呼ばれる宝石みたいなものに魔力を通して、生活を便利にする魔法。それと読み書きと計算とか。知っておくと大人になってからいろんなことに役立つらしい。

 勉強を頑張れば魔法媒体を作ったりする上級学校へ行けるらしいけれど、初級学校と違って授業料がかかるから、あまり行った人を聞いたことがない。

 わたしも普通科になるんだろうなって、深く考えずに教会に魔力検査を受けに来た。ここから家は商店街を通ってすぐ、教会の神官様も顔見知りの方ばかりだから、八歳の子どもが一人で歩いていても危なくない。夜ノ国には結界はないけれど、国民みんなが魔獣に対応できる。だから安全なんだって。学校が作られたのはそのため。


 もしかして聖女必要ないんじゃない?

 じゃあどうしてわたしは聖女なんだろう。

 聖女の適性を持っていると、やっぱり特別な勉強が必要になるみたい。


 転生前のわたしは光ノ国に生まれて、聖女に認定された。魔獣から国民を守るために結界が必要な国だったから、国民の中から稀に聖女があらわれる。聖女がいないと国が滅んでしまう。

 でも夜ノ国は結界がない。聖女はいらないはずなのに。


 神官様が出してくださった馬車にごとごと揺られながら、思い出しちゃったことを考える。

 普通科じゃない、特別な勉強が必要な子どもは王都の学校に行くことになるらしい。お母さんも一緒に馬車に乗せてもらえたけれど、今日のお仕事はどうしたんだろう。急にお休みなんかしたらみんなに迷惑がかかっちゃうのに。『ソニアは心配しないでいいからね』って言われたって、心配しかない。お母さんも不安そうな顔をしているもの。


 王都は、この夜ノ国の王様がいる都。

 

 ちょっと今、記憶が混乱してる。


 光ノ国は夜ノ国と同じ大陸にあって、隣り合っている。そこまでの前世の記憶と、今のわたし、ソニアが知っていることは一致する。

 でも光ノ国では、魔獣は夜ノ国からやってくると言われていた。夜ノ国の王様は魔王で、悪い人で、魔法や魔獣を使って光ノ国を乗っ取ろうとして攻めてきているって教わってきた。

 今のわたしは、夜ノ国で生まれて育ったから知っている。夜ノ国の王様は魔王じゃない。魔獣を従えてもいない。魔獣は光ノ国との境にある魔ノ森からあらわれて、人の土地を荒らして、人を襲う。

 光ノ国は結界で魔獣を弾いて、それでも入ってきた魔獣は剣で倒していた。魔法は使わなかった。夜ノ国の国民は魔法で戦う。でもどちらの国でも、魔獣は敵だ。


 何が本当なのかわからなくなってきた。

 でもやっぱりわたしは聖女みたい。なんとなく、結界の張りかたを覚えてるし、こっそり小さくやってみたら、出来ちゃった。


 馬車はきれいなお屋敷の前で停まった。途中でお昼ごはんを食べた休憩以外ずっと馬車に乗っていたから、お尻が痛くなったねってお母さんと話していたところだった。やっと着いたと思って馬車の外に出ると、花のいい匂いがした。何の花の匂いだろうかとお母さんに聞こうと振り向いたら、お母さんは神官様に何か内緒話をされていて、真っ青な顔になっていた。


 どうやらわたしは、王都の学校に通うための寮にひとりで住むことになるらしい。

 お母さんは手続きをしたら町に帰ってしまう。町までは馬車で半日かかるから、滅多に会えなくなっちゃう。お仕事もあるし、今日は急に休んじゃったし、仕方ないけど心細い。

 いきなりわたし一人で王都? 前世の記憶はあるけど八歳よ? 聖女だから王都の学校へ入学は強制だって。


 やっぱり聖女なんてろくなものじゃない!

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