01 また聖女だよ
聖女なんてほんと、ろくなものじゃない。
やることといえばお祈り。明けても暮れてもお祈り。結界水晶に祈りを捧げて国の結界を維持するやつ。
たまに結界を破るほどの、強力な魔獣が出たときなんかは最悪。破られた結界の補修と、魔獣討伐に現地へ向かう。我聖女ぞ? なんで討伐にまで駆り出されないといけないの。討伐隊にも結界付与が必要だからって。現地って最前線よ?
挙句の果てにわたしは魔獣に殺され──殺されて、死んだ。
あれ?
わたし今何考えてた?
前世らしい聖女だった記憶がどどっと脳内に蘇って。
落ち着いて。わたしはソニア。八歳。わたしはまだ聖女じゃない。ここは教会。今から魔力検査を受けるところ。
待って、これからの魔力検査でわたしは聖女に認定されてしまう。
あの水晶に触ったらダメな気がする。
「はい次の方ー」
神官様が容赦なくわたしの前の扉を開けて中へ促してくる。
「はいこの水晶に手をかざしてね」
お医者さまに『ぽんぽんだしてね』って言われるような感覚で手を出すよう求められる。まあ神官様はお医者さまも兼ねてるからね。同じ言い方になるんでしょうね。
すごくやりたくないけど、やらないと帰してもらえない。
そうしてわたしは見事に水晶を眩く聖女色の白に輝かせ、おうちに帰れなくなってしまった。
なんでこんなギリギリに思い出しちゃうのかな! お母さん、お昼わたしの分ごはんいらないみたい!