名探偵ハンサム女性の1000文字まで持たせる推理小説
これは「なろうラジオ大賞2」応募用の作品です。
「私がやりました」
犯行現場のアパートにいた20代前半の女性は、開口一番そう言うと左手に持った凶器を床に落とし、膝から崩れ落ちるとそのまま四つん這いになり、泣き始める。
「何故、親友を殺したりしたんだ?」
警部は彼女の前に片膝をつき、動機を尋ねる。
「彼女は親友なんかじゃありません! 私から彼を奪った泥棒猫ですよ!」
それを聞いた警部は深い溜め息をつき、ポケットから手錠を出す。
「××時××分、容疑者、確――」
瞬間、耳をつんざく様な叫び声が犯行現場に響き渡る。
「その逮捕、ちょっと待ったあ!」
警部や警官、容疑者の女性はそのつんざくような声に驚き、一様に同じ方を振り返ってしまう。するとそこには、茶色い帽子を被り、茶色いコートを身に纏ったハンサムな女性が、両腕をめい一杯広げて立っていた。
声の正体は、このハンサムな女性のものだった。
「……また、お前か」
呆れたように溜め息をつく警部。
「『待って下さい』って何を待つんだ? 現行犯なのに」
「それは解ってます! 一緒にいたから!!」
「じゃあ何なんだ……」
その言葉が合図かのように、ハンサムな女性は帽子のつばを握り、左腕を腰にあてると、まるで自分が主人公の様にくるりと身体を回し、左半身を警部に見せる。
「……警部。いいんですか? それで」
「……何が?」
ハンサムな女性の質問に、訝しげに答える警部。すると、ハンサムな女性は帽子のつばを握っていた左手を警部に向かって振ると、とても大袈裟にこう言った。
「開始一行目で犯人が判明してしまう事が、です!」
「判明するも何も、犯人が自白したし、裏も取れてるもんどうしろって言うんだ?」
さも、当然の様に答える警部。
「て言うか、貴女が騒ぎ立てなければ警部の『容疑者、確――』で、ぴったり200文字だったんですけど」
近くにいた警官も続く様に言葉を返す。
「あー……また、そのパターンですかぁ……」
「は?」
「は?」
まるで、何を言っているか解らないと言う感じの返事をしてしまう警部と警官。だが、ハンサムな女性はそんなふたりを無視して話を続ける。
「古いんですよぉ……今時ジャスト200文字とか」
「いや……だから一体どうすれば良いんだ?」
その警部の問いに答える様に、ハンサムな女性は、ふっ……、と笑うと、俯かせるように顔を下げ、大袈裟な動作を交えながらこう答えた。
「私が、この小説を1000文字まで持たせてみせます!」
「いや……もう1000文字だけど……」
「えええぇぇぇ!!!??? もう1000文字なんですかあああぁぁぁ!!!???」
「耳元で喚くな……と言うかお前、1000文字まで持たせるってどう考えても『33ぷ』」
「ちーがーいーまーすー!!」
「警部、俺それ知ってマスよ!! 確か主演が『堂も』」
「しゃらあああっっっぷ!!!」
……おしまい。