最終話 B
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僕は解凍して温めた坦々麺を食べながら先生の話を聞いていた。
相槌は口が忙しかったので適当なアイコンタクトで済ました。
先生はカップヌードルを頬張っていた。
カップヌードルの色んな味を備蓄したい。
選ぶ楽しさこそが豊かさである。
どうやらそういうことを言いたいらしい。
冷凍庫に冷凍麺シリーズが揃えてあるのが羨ましいようだ。
ブランドは日清が良いようだ。
僕は冷凍麺こそ至高であると思う。
しかし先生は中途半端な怠惰を嫌う。
お湯を注ぐだけで出来るカタルシスの中毒になっているようだ。
僕は最近日清のアメリケーヌソースの中毒になっているようだ。
海老がね。
僕が言う。
海老かね。
先生がおはしの先に赤い海老を挟んで見せた。
僕もフォークの先に赤い海老を刺して見せた。
海老だ。
海老を食うたる報いという言葉がある。
海老は旨い。
しかしいつまでも食べられるとは限らない。
転じて良いこともあれば悪いこともあるという意味だ。
海老の赤色はアスタキサンチンの赤色だ。
生の状態の時は本来の鮮やかな赤色は隠されている。
加熱でアスタキサンチンの赤色が現れるようになる。
隠された報い。
現われた旨い。
今回のタイトルはこの辺を適当に料理すれば出来るだろう。