あなたの隣で
愛って、何だろう。
最近そればかり考えこんでいる。ただ純粋に好き、というだけが愛って言うのだろうか。じゃあ、私が与えているのは愛じゃないのだろうか。
私が愛しているのは、ただただ平凡な同級生。ずば抜けて何かが出来るわけじゃないし、俗に言うチャラ男ってやつでもない。
何でこんなやつが好きなのかと聞かれたら、答えられない。黙り込んでしまうだろう。
欲しかった。
彼は、何のとりえも無い私を好きだと言ってくれた。
幼い頃から誰にも好かれなかった、この私のことを、好きだと。
嬉しかった。初めてだった、人に好かれることが出来たのは。だから、私もこの人を愛そうと思った。でも、愛されたことが無いから愛し方がわからない。
とりあえず、私だけのものにしたくて、監禁した。
誰にも触れられないように、私の部屋に。
鎖で手を拘束したら、ちょっと可哀想かな、と思ってそれだけはやめた。だって、愛する人には傷ついて欲しくないもの。初めてマシなこと言えたと思った。
その夜、彼が逃げ出そうとドアを叩いていた。それは五月蝿くて、不覚にも煩わしいなんて単語が出てきてしまった。……ああ、ゴメンね?
「出してくれ……琉亜」
ああ、遅くなったけれど私は琉亜で、彼は魁斗さん。
「どうして?」
笑って見せると、魁斗さんは背筋を震わせた。そんなに、怯えなくても良いのに。
「……こんなの、間違ってる」
「私が―――間違っている?」
一気に私の顔から笑顔が消えていくのがわかった。ここまで自分を拒否されて、黙っていられるわけが無い。いくら、魁斗さんでも。
「もっと普通に、愛せないのかよ……ッ! 俺は、こんなの望んでない!」
「魁斗さん」
「琉亜……俺はお前が好きだよ」
「魁斗さんっ」
「もっと、一般的に!」
「―――魁斗さん!」
嗚呼、五月蝿いな。これ以上言うと、どうなるかわからないよ?
「普通って、どんなこと? 一般的って、なに」
表情と言う表情が消え、何の意味もなさない顔で問い掛けた。
「世の中には、歪な形の愛もあるのよ。……最も、私はこれが歪んでいるとは思わないけれど」
見下すように、馬鹿にしたように笑う。薄く、本当に薄く。口元に笑いを浮かべた。
常識に囚われたこの人が可笑しくて、大声で笑いそうになる。
「あ……う、うあぁ、」
魁斗さんは頭を抱えて座り込んでしまった。……なんか、面白い。
「くく……あ、あは、あははははははははははぁ!」
もう何がなんだかわからなくなってきた。私は本当に、この人を愛してるのだろうか。
そもそも愛って何だったんだろう。私にはわからない。たとえ傷つけたとしても、愛していれば愛なのかな。でも、愛するってなに。
嗚呼、ワカラナイ。
「琉亜、別れよう? ウマが合わないだろ、愛し方も。そのほうが、二人のためにもなる」
「―――?」
魁斗が何を言っているのかわからなかった。なんで、だろう。私はこんなにも好きだったのに!
……ん? 好き、だった?
なんだ、解決じゃない! 好きなのは、過去のあなた。今の、私に反抗的な魁斗さんじゃない。だから、愛する必要はもう無い。
「ゴメンね、自分の気持ちに気づいた。でもね、私を愛してくれたのは初めてだった。すごく、嬉しかった。ありがとう。だからね」
そこで一旦言葉を切った。決心がつかなかったから。
「この、幸せな状態のまま殺してもらいたいの」
一瞬、時が止まった気がした。
この、魁斗さんの驚いた顔。たまらない。
「ど、どういうことだよ、琉亜! 俺、は―――」
「あなたの意見なんて聞いていない。私を、殺して?」
本当は、一緒に死にたかったけれど。
口からはみ出しそうな言葉を押さえて、必死に笑った顔を作った。ううん、作ったはずだった。
「泣くなよ、琉亜」
魁斗さんの震えた、でも優しい声。私が今言った言葉を、撤回してしまいそうだった。
「ねえ、魁斗さん。私、泣いているの?」
「ああ、泣いてるよ。さっきから、お前が私を殺してって言ったときからだ」
「ごめ、なさい。嫌い、になった?」
「―――ああ、なった。だからさ、もう一回好きになってやるよ」
優しいね、温かいね魁斗さん。
手も、心も、ぬくもりも。
今だけ。泣いて、甘えてもいいですか―――?
「っく、ぅ……あぁぁぁああ!」
今日は泣きます。思い切り、心の底から。
明日、あなたの隣で笑っていられるように―――。
ありがとうございました。
復帰作として作りました。でも・・・う〜ん・・・って感じですよね? お恥ずかしいです。
本当に狂わせることは出来ませんでした。限界が・・・なので! せっかくなので心をこめて書けばいいと思いました。
ま、まあとにかく。御一読ありがとうございました!