悪役令嬢は困惑する
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「………アレクシオス様……?」
思わず名前を呼んでしまったけど……。
なんで私、抱きしめられてるの?
おかしくない?
てか名前ひっさしぶりに呼んだな…。
名前なんて…10年ぶりくらい?
7歳の頃から愛称で呼ぶように…って言われたからなぁ。
まぁ、今の私に彼の愛称を呼ぶ資格なんてないんだけどね。
……なんて思ってたわけだけど……。
私、いつまで抱きしめられてるの?
最後の抱擁…的な?
いや、嫌いな人は抱きしめないな…。
じゃあ、この状況は……?
……彼が何を考えているのかわからない。
久しぶりに物事を考えたからかな。
あの日。なにもかもどうでもよくなった日から、ただ、そこにいるだけだった。
何にも考えないで。笑顔も作らないで。
家では心配かけないように笑っていたつもりだったけど、そんな私を見るたびに両親は悲しそうな顔をしていたな。
作り笑いってバレてたかな。
それとも、なんにも頑張らなくなった私を見て、悲しくなったのかな。
「アリー……」
私のことを、そんなに愛おしそうに呼ばないでください。
だって、もう、今更でしょう?
今更私の前に現れて、名前を呼んで。
なんのつもり?
「アレクシオス様。離していただけませんか」
私の声を聞いてアレクシオス様は渋々私を離した。でも、私の肩に手を置いたまま。
今更何を言われても、私の気持ちは戻ってきませんもん。
もう、頑張って、期待して、でもどうしようもなくて、諦めて、悲しくなるのは嫌なの。
頑張っても絶望するだけだとわかったから。
もう終わらせてほしいの。
貴方の手で。
私は肩に置かれたアレクシオス様の手を自分の首元に運んだ。
「アレクシオス様。どうぞ、私を殺してください。死ぬのなら、貴方の手で死にたいのです。私の最期の願いです。聞いていただけるでしょう?」
アレクシオス様はそう言った私の顔を見てぐっと詰まったような顔をして手に力を込めた。
そう、そのままーー。
「………んっ?」
首元にあった手は外されて。
私は唇を奪われていた。
………いや、なんで?
「アリー……?なんでそんな事を言うんだい?なんで、俺に君を殺させようとするんだい?なんで、愛していると、好きだと、伝わらない?」
愛している?好き?
アレクシオス様が?
誰を?
……私を?
…………うそだ。嘘。そんなはずない。
だって、彼は笑ってた。ヒロインと笑ってた。
私に笑いかけなんてくれないのに。
もう、ずっと私に好きも、愛しているも言わなかったくせに。
「………愛している?そんなの、信じれるわけないじゃ無い。今更…、私の前に現れて。私のことを愛してくれていたのならば、なんで一年もの間、手紙すらなかったのよ。どうでもよかったからでしょう?私なんて。所詮親が決めた婚約よ。私なんて好きじゃなかったんでしょう?そして、本当に好きな子に会えたんでしょう?だから、私のことなんて忘れていたんでしょう?」
置いてきた感情が、戻ってくる。
忘れて、閉じ込めていた感情が溢れてくる。
頑張っても、彼に届かなかった気持ち。
「だから!なんで、伝わらない?確かに、俺がいけなかった。一年間、連絡しなかったのも、ずっと好きだと言わなかったのも、俺が悪かった。ずっと、言わなくても伝わる。伝わってるって勝手に思い込んでたから…。
それに、君の言う彼女とは、誰の事だ。もし、もしもあの庶民上がりの男爵令嬢の事を言っているのだとしたら……。それは、アリー。君の勘違いだ。あれは、王太子殿下から下された仕事だ。仕事でなければあんな少女と話などしない。俺だって、俺だってずっとアリーと居たかった。一緒に学園生活を送りたかった!」
「………え?」
いや、え?待って。私の、勘違いって、何?
王太子殿下からの仕事って、何?
一緒に学園生活を送りたかったって、何?
「でも…あの男爵令嬢目を離すと何をしでかすのかわかったもんじゃなかった。俺が何度『アリーが好きだ。アリーだけを愛している』と言っても、『いいえ。貴方は私を好きになるのです。私は貴方に愛される運命なのです。私は貴方が好きって言ってくれるまで諦めません』って。あれは頭がおかしい。
まぁ……半年前くらいからだんだん落ち着いてきては居たが」
「………………」
なんだこれ。
え。本当にアレクシオスはヒロインを好きじゃないの?なんで?
だって、結局はシナリオ通りに進むんでしょ?悪役の努力は、報われないんでしょ?
でも、これは………。
これは、ただ、私への愛の告白を聞いているみたいではないか………。
お読み頂きありがとうございました!
次話も宜しくお願い致します。
アレクシオス様超喋った…。
アリシアさんはにぶちんです。
中々思いが通じ合わないやつですね。




