悪役令嬢は諦める
周期的にくる真面目な?話が書きたいなーってやつです。
一話一話は短め。
五話くらいで終わる予定です。
よろしくお願いします。
私が、この世界がある乙女ゲームに似てるなと思ったのは5歳の頃。
自分が綺麗すぎると思ったのがきっかけ。
完璧に思い出したのは6歳の誕生日。
その日に私は婚約者を紹介された。
私の一つ上の伯爵嫡男の男の子。
私も伯爵の一人娘。
丁度釣り合いが取れてるなと思って婚約者になった彼の顔を見て思い出したのだ。
思い出した時にありきたりかよ。と、そんな馬鹿な。と令嬢らしからぬ言葉を呟いて倒れた。
私が転生したのはよりにもよって悪役令嬢。
断罪されて死ぬ、悪役令嬢。
断罪されるきっかけは婚約者をヒロインに取られたことによる嫉妬から。
なら、今のうちから婚約を無かったことにすればいいと思って目を覚ましたらもう既に婚約が結ばれた後だった。
なら、非の打ち所がない完璧な令嬢になって、婚約者と仲良くなって、ヒロインと仲良くなるきっかけになった婚約者のトラウマをぶっ潰そうと、頑張った。
婚約者に会って12年間。
ずっとずっと頑張った。
どんなに辛くても笑って、どんなに忙しくなっても2日に1回は婚約者とお茶会して。
ゲームの舞台である学園が始まってからも、ヒロインと関わりを持たないように頑張ったし、婚約者に見捨てられないように、ゲームみたいな傲慢な女の子にならないように頑張ったつもりだった。
………でも、全部無駄だった。
私の頑張りは無駄だったのだ。
婚約者は花咲く中庭でヒロインと仲良く談笑していた。
私がこの中庭を通ったのは本当に偶然だった。
婚約者は今日、忙しいから、会えないって、言ったのに。
ヒロインには会っている事実と、楽しそうに笑っている事実。
最近、私には見せてくれなかった、笑顔。
なんで、どうして。という感情が渦巻くと同時に、私の今までの頑張りは無駄だったということを突き付けられたと同時に色々な事がどうでも良くなった。
あぁ。やっぱりゲームのシナリオには勝てないんだと。
ゲームの世界じゃなくて、似た世界だとしても、私は所詮悪役。主人公には勝てないんだと思い知った。
どんなに頑張っても、報われないのなら、頑張る意味なんてない。
実際に、やったこともない事を私がやったと噂されている。
ヒロインを突き落としたとか、ヒロインの持ち物を壊したとか。婚約者を取られた嫉妬によるものだとか。
私はヒロインと話した事すら無いのにね。
もし、私がヒロインを虐めていたとしても、なんでそんなに私が悪く言われるのかわからない。
だって私は伯爵。ヒロインは庶民上がりの男爵。身分差は圧倒的だ。なのに……。
私が極端に不細工ならわからなくも無い。
でも、私は綺麗なのだ。
自分で言うのもあれだけども、綺麗な高嶺の花と呼ばれていたレベルなのだ。
なのに……。
言い方は悪いけど、高嶺の花が嫉妬心から、たかが男爵令嬢を虐めると思うのか?
虐めないだろ。
でも、私がヒロインを虐めた事になっている。
なら、もうどうしようもないじゃ無いか。
だから、私はもう諦める。何もかも。
必死こいて、頑張って、実力をつけても報われないなんて馬鹿みたいじゃ無いか。
足掻きもせずに死んでやる。
私はその日から頑張る事をやめて、感情を全て消した。