サランの村という所3
投稿遅くてごめんなさい
気長に待っててくれると嬉しいな
思えば、村の人間からのこの異常な監視も、まだ母が生きていた頃はなかった気がする
昔から女らしさの欠片さえ持ちあわせていなかった私は、しょっちゅう村の男と喧嘩しては生傷をつくって帰ってくるようなやんちゃ坊主ならぬ、やんちゃガールだった
自分の背と同じくらいの村のがきんちょをちぎっては投げ、ちぎっては投げをしていたあの幼少期が懐かしい
おかげで今も握力女というあだ名が抜け切れていないのは迷惑だが、それでも今のこの監獄のような村の中よりは楽しかった
私が可愛いのは昔から自負していたし、それを否定する気はないが、母が亡くなってから私はあの家で一人で暮らし始めて、私の容姿が金になると分かった人間からの干渉が激しくなって
蜘蛛の糸のように私に絡んで、絡んで、抵抗しても払えないその呪いのようなものに動けなくなった
この村は息苦しいのだ
”私”はここにいるのに、誰もかれも私の上辺しか見ないで言葉を吐く
いっそすべて捨ててしまえたら楽なのに、昔の記憶を捨てるのが惜しいと思っている自分がいるのだ
母のいたあの頃のように、私をアリスとしてではなく私として見てくれるんじゃないかと
期待している自分にも反吐が出る
「家までお送りしますよ」
村長に挨拶をしていたヨルに声を掛けられたのは、宴が終わってから一時間程経った頃だった
大方村の年寄り連中に捕まっていたのだろうが、この時間まで旅で疲れた勇者を拘束する村の人間の勇気には少し感心するが、果たしてそれが許される行為なのかは甚だ疑問が残る
他の二人はといえば、少し離れた所でこちらを見て隣の背中をバンバン叩く魔法使いと、その衝撃に吹っ飛ぶ僧侶が、すぐさま宿屋の方へと向かっていった
「まだ片付けも残っていますから・・・
勇者様もお疲れでしょうし、お仲間と共に先にお休みになった方が良いと思いますわ」
正直これ以上この男のお守りをするのもいい加減疲れたので、なんとか帰らせようと思ったのだが、ヨルはそれでも待っていると片付けまで手伝い始めてしまった
木でできた台の上に置かれている皿を器用に積み重ねて運んでいくが、自分の為に開かれた宴の片づけを自分でする勇者が何処にいるのだろう
結局それを見ていた村人に私まで追い出されるような形で宴の会場を出されてしまった
(片付けをサボれたのは助かったが)
小さな家がぽつぽつと光を発する薄暗い道を、ヨルと二人歩いていく
家の中からは子供が騒いでいるような音が聞こえてくるが、それを会話に出しても話が広がらなそうなので止めておいた
宴が開かれた会場からそう離れていない場所に私の家はある
決して広くはないが赤い屋根が目印のなかなか可愛い家だ
「今日は本当にありがとうございました
勇者様も早くお休みになってくださいね
お休みなさい」
「あのっ・・・!」
もう用は済んだろうとばかりに足早に家に入ろうとする私をまたも引き留めるヨル
一体全体なんなんだこの男は
簡単に振りほどけそうな程私の手首をつかむ手に力がこもっていないが、これでは家に入ることすらかなわないじゃないか
これが噂の送り狼というやつなのか・・・!なんて、脳内妄想に明け暮れていると、何かを言いたそうなヨルが意を決したように口を開いた
「俺は・・・その・・あまり女性と話すこと自体慣れていなくて、勇者なんて呼ばれていてもいまだに仲間にお荷物扱いされてしまうような男です」
だから何だというのだろうか、それと今私をこの場所に留めておく意味が合致しない
ご自分の不幸自慢をしたいのか、はたまたそれで気を引こうとしているのかは分からない(まあ女慣れしていないなら後者はないだろう)が、私は朝からの準備で疲れているのだ
サランの村は王都より北部に位置するせいか夜は気温が下がる
夜も更けてきているからか煌びやかな装飾がついただけのこんなドレスでは肌寒さを感じてしまう
周りには人の声一つ聞こえず、虫たちが小さく鳴いているだけだ
「だからその・・・俺の・・・・・・・・」
「・・・・・・おっ俺の妻になってください!!」
情景描写苦手です