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禍羽根の王 〜序列0位の超級魔法士は、優雅なる潜入調査の日々を楽しむ〜  作者: supico
■第一幕■ 魔法庁附属、魔法学校・紺碧校。本科3年:編入初日
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ニイナ・ファレル②



「ニーイーナー!」

「? あれ、みんなー! どおしたのー?」


 興奮気味に走り寄ってきたのは3人の女友達だ。

 普段、良く一緒にいるメンバーである。


「ちょっとー! 特別棟から和久くんと出て来るの見てたよっ!? どーしたのよー!」

「晩御飯誘おうと思ったらいないしさー!」

「こんなの問い詰めなきゃダメなやつじゃんっ!」


 ニイナを取り囲むようにして、口々に聞いてくるのは、勿論、歓迎会のことで……。


「えへ。……実はね、会長にお呼ばれしちゃって、ご飯食べてきたの」

「えぇぇえええ!! 嘘でしょーー!? なんでなんでっ、鷺ノ宮家のお食事!? え、どんな感じだったのっ!?」

「すっごかった……。もうね、ナイフとフォークを端から使うやつ」

 

 いやーん、夢あるー! そう言ってキャッキャとはしゃぐ友達に、身振り手振りで細かく伝えれば、更に喜ぶ3人。


 それもそうだ。特別棟なんて、一般生である私たちは、誰かにお呼ばれしない限り入れないのだ。ニイナの周りでは、今まで入った者はいないのだから、質問攻めも仕方がない。


「えーっ、何でそんな事になってんのよー! 羨ましいっ!」

「ニイナと和久くんだけがお呼ばれしたの?」

「吐けっ吐くんだっ、あたしだって会長とか、あわよくば副会長とお近付きになりたぁーい!」


 矢継ぎ早の質問からの、心の奥の願望が垂れ流しで、思わず吹き出す。


「ぶはっ! 待って待って、ちゃんと答えるからさー。……えっとね、会長が累くんの歓迎会をしてくれてね、私達も誘ってくれたの。たぶん今日、累くんと同じ班だったからかな?」

「あぁ、歓迎会かー! あたし達も思いつけば良かったねー。彼、なんだか近寄り辛そうに見えてさ……」

「わかるー! 凄い余裕な感じが、なんかウチらと違ってて思わず避けちゃったんだけど、あの模擬訓練見たら親近感湧いたー!」

「きゃはははっ、あたしも。基礎科の基準ギリギリな、あたし達と同じぐらいっぽい? なーんて。……で?」

「…………?」


 ニイナの背後を探すように首を巡らせる友人。


「その編入生は?」

「え、累くんなら部屋に戻ったよ?」

「そうなの? 先に1人で帰っちゃったんだ」

「違う違う。——累くん、特別棟だから」


 あっさりと告げるニイナの言葉から数拍を置いて、えぇぇぇええぇええ!? という叫びが、木立に響き渡った。


「うっそ、本当に!?」

「やばいー。最初に声かけときゃ良かったー!」

「ニイナばっかり羨ましいぞーこらーー!」


 途端に色めき立つ友人達に、若干複雑な心境になるニイナ。


 気持ちはわかるのだ。ニイナも、模擬訓練の後に聞かされた時には非常に驚いたし、ちょっとだけ中に入れて欲しいなーなんてお願いを口にしたくもなった。

 だって、たった8人しかいなかった特別棟の中に、新たに編入生が加わると言うのだから、紺碧校生にとっては一大ニュースだ。


「ね、ね、彼、貴族なの!?」

「ううん、それは違うってー。魔法の才能が認められたんだと思うよ」

「……そーなの? ふーん、別に全然凄そうじゃなかったけどなぁー……」

「でもね、会長が累くんの探知系魔法を褒めてたんだよ? 模擬訓練の時も、累くんのアドバイスは凄い的確だったし……」


 実際、相手班の動きから、遠くのトラップ魔法まで、恐ろしい精度で助言してくれたのだ。班長経験の豊富な和久すら、後半になると累くんの助言に絶対の信頼を置いていた程だ。


「マジか。会長が褒めるなら相当だねー」

「ってことは、彼もすぐ生徒会入りするのかな? お貴族様以外の特待生は、みんな生徒会のメンバーだもんね」

「うわぁー、じゃあ生徒会だけの青いシンボルアイテム、貰えちゃうのかなー?」


 きゃっきゃと累くんの話題で盛り上がる3人と共に、一般棟へ向かって歩いていく。


 途中、チラリと振り返って見つめた特別棟には、何個もの綺麗な明かりが、窓から漏れていた。


 ——こんなに注目されてるって気付いてるのかな……累くん。結構、自分のことには無頓着そうだからなー……。


 きっとこの話は、すぐにでも一般棟の中を駆け巡る。

 明日になれば、一躍時の人になっていること、間違いないのだから。





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